文化

2016.12.15

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チェ・スジョン(左)、チェ・ジンシル主演のMBCドラマ『ジェラシー』は、最高視聴率56.1%の大ヒットを記録した

チェ・スジョン(左)、チェ・ジンシル主演のMBCドラマ『ジェラシー』は、最高視聴率56.1%の大ヒットを記録した



1992年、国民的な人気を集めたドラマ作品があった。

6月から7月にかけて全16話が放送されたMBCの『ジェラシー』がそれだ。同作は「果たして男女の友達の間にロマンスは生まれるのか」をテーマに若者の初々しい恋とその中から生まれる嫉妬を描き、韓国ドラマに恋愛ブームを巻き起こした。ユン・ミョンヘ作家の小説『私の愛の長い影』(1991)を脚色した同作では、20代未婚男女の恋愛を軽快に描いた。

ドラマ『ジェラシー』には同じ大学出身の親友、ハギョンとヨンホが登場する。2人は幼馴染だ。雑誌会社の編集長の母と2人で暮らすハギョンは、旅行会社に勤めている。ハギョンにとって唯一の楽しみは親友のヨンホと時間を過ごすこと。だがヨンホはピザ屋を経営する美しく知的で経済力のあるヨンエと知り合い、すぐ恋に落ちる。ヨンホの感情を知ったハギョンは友情ではなく恋の嫉妬を感じるようになる。しかし、彼女は自分の感情を隠してヨンエに「(ヨンホのことを)よろしく」と言い、ヨンホのことを諦めようとする。

ハギョンも中学時代の家庭教師で片思いの相手だったサンフンと再会するが、完璧主義者で冷静な彼に失望する。やがて自分が愛しているのは長い間自分のそばにいてくれたヨンホだと気づくハギョン。ヨンホもまた自分の真の友達で恋の相手がハギョンであったことに気づく。ドラマは2人が自分の感情を互いに告白し、熱く抱きしめるシーンで幕を下ろす。

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『ジェラシー』で幼馴染の友達に恋の感情を覚える主人公のハギョンとヨンホが互いに告白するシーン。チェ・ジンシル(上)とチェ・スジョンが主演を務めた

『ジェラシー』で幼馴染の友達に恋の感情を覚える主人公のハギョンとヨンホが互いに告白するシーン。チェ・ジンシル(上)とチェ・スジョンが主演を務めた



当時「X世代」と呼ばれた若者の都会生活と恋愛をテーマにした同作は最高視聴率56.1%を記録しドラマ界の頂点に君臨した。とくに主人公に近い年齢層の20代の女性は友達同士が恋人関係に発展する『ジェラシー』のストーリーに熱狂した。

中国市場で韓国ドラマ輸出のスタートを切ったもこのドラマである。中国のハルビンTVは1993年、『ジェラシー』とともに1991年に放送されたMBCの『黎明の瞳』を韓国ドラマとしては初めて輸入・放送した。当時はアジアで日本ドラマが高い人気を博していた。そんな中、韓国のドラマ『ジェラシー』が中国の視聴者に注目を受けたのは意義深いことだといえる。

作品の成功により主人公らもトップスターになった。とくにヒロインのハギョンを演じたチェ・ジンシルはこのドラマで大ブレイクした。可愛い外見に爽やかな演技を披露したチェ・ジンシルにはこの作品で「みんなの恋人」という修飾語がついたほどだ。ヒーローのヨンホを熱演した俳優のチェ・スジョンも「おしゃれなイメージの若者」の代名詞となった。「あなたは一体誰をみてるの?私が今ここにいるのに。待たされるのはいや」と始まるテーマ曲も知らない人がいないほどたくさん流された。

名シーンは言うまでもなくラストシーンだろう。友情と愛の間で悩み自分の感情を隠していたハギョンとヨンホだったが、ヨンホが最後に勇気を出してハギョンに向かって「行くなよ、これ以上嫉妬したくない」と叫び熱く抱きしめる場面だ。それから2人を中心にカメラが360度回って徐々に遠ざかりドラマを制作したスタッフの様子まですべて映される。当時としては画期的な撮影技法で、20年以上経つ今でも多くの視聴者の記憶に深く残っている。

『ジェラシー』のラストシーンはドラマの名シーンとして挙げられる。抱きしめている2人を囲んでいたスタッフらが撮影終了と同時に大声を上げて喜びながら抱きしめる姿もそのまま映された

『ジェラシー』のラストシーンはドラマの名シーンとして挙げられる。抱きしめている2人を囲んでいたスタッフらが撮影終了と同時に大声を上げて喜びながら抱きしめる姿もそのまま映された



文化評論家のハ・ジェグン氏は「ドラマ『ジェラシー』は単に人気の高いドラマの1つではなく、一時代の表象として理解された。本格的なトレンディドラマ時代の幕開けだった」と評価した。トレンディドラマとは、人気スターを起用して都会生活と最先端のファッション、新世代の思考などをテーマとする若者をターゲットにした映画やテレビドラマを意味する。

韓国外国語大学のキム・ヨンチャン教授は「このドラマのヒットで韓国はトレンディドラマの強い流れにもまれ、同時に伝統的なリアリズムドラマの退潮が目立つようになった」と分析する。かつて頻繁に登場していた出生の秘密、成功を手にするための愛と執念、財閥の隠された秘密、捨てられた女性の復讐劇といったメロドラマから脱却し、若者を主人公に彼らの恋愛と個性的なライフスタイルを描いた。

『ジェラシー』の主人公の2人がコンビニでカップラーメンとキンパプを食べるシーンは、当時都会に暮らす20代の様子をリアルに描き視聴者の注目を集めた

『ジェラシー』の主人公の2人がコンビニでカップラーメンとキンパプを食べるシーンは、当時都会に暮らす20代の様子をリアルに描き視聴者の注目を集めた



主人公の2人が深夜のコンビニでカップラーメンやキンパプを食べながらデートするシーンは、当時都会に暮らす20代の男女を象徴し、トレンドの頂点といえるようなものだった。当時深夜にもラーメンを食べられる「コンビニ」はおしゃれな新世界だった。またヒーローがコンビニで買ったサンドイッチをかじりながら仕事をする姿やキャリアウーマンとして成功を勝ち取ったヒロインが運転する姿など、ドラマに登場する若い男女の都会風の様子は全国民の羨望の的となった。

コリアネット ソン・ジエ記者
写真:MBC
翻訳:イム・ユジン
jiae5853@korea.kr