文化

2022.12.27


[ソウル=イ・ギョンミ、大草紀子]
[映像=CJ ENM Movie公式YouTubeチャンネル]

「コレア、ウラ!(大韓帝国、万歳!)」
1909年10月26日、韓国の独立運動家、安重根(アン・ジュングン)は、大韓帝国侵略の元凶とされる初代韓国統監を務めた伊藤博文元首相を中国・ハルビン駅で暗殺した。現場で安は、ロシア語でこう叫んだ。

ミュージカル映画「英雄」は、朝鮮時代の独立運動家である安重根が、義挙を準備していた時から、日本で死刑判決を受け、死を迎えるまでの一年あまりを描いたミュージカル映画だ。同名のミュージカルが原作で、歴史の人物を描いたストーリーと音楽の力が観客を惹きつける。

KOREA.netは名誉記者の大草紀子さんと一緒に、8日にソウル市内の映画館で開かれたメディア向け試写会・記者会見に行ってきた。

映画「英雄」のワンシーン=CJ ENM

映画「英雄」のワンシーン=CJ ENM


日本による植民地支配や独立に関する映画や舞台作品は数多くあるが、その度に日本では「抗日映画」などと言われ、公開されない作品も多い。「安重根の最後の一年を描いた作品」と聞いて、日本人はどう思うだろうか。

映画は、大韓民国の独立のために命を賭けることを誓う安重根と義士(独立運動家)たちの場面から始まる。支配された者たちの怒り、悲しみ、強い誓いが、力強い歌で表現される。

しかし、そこから一転して、安が故郷で家族と過ごすシーンに切り替わる。国のために闘う安を微笑んで見送る母と、最後まで納得できない妻。その場面で、観客は「人間・安重根」の姿に惹かれ始める。

安重根のハルビン駅での義挙は、日本による侵略を世界中に伝え、抗日運動を再び勢い付けた=独立記念館

安重根のハルビン駅での義挙は、日本による侵略を世界中に伝え、抗日運動を再び勢い付けた=独立記念館


大草さんは「韓国人が安重根のことをどれほど知っていて、どんなイメージを持っているのかはわからないが、日本人である私は、安重根のことをほとんど知らないと言ってもよい」とし、「伊藤博文を暗殺した独立運動家ということ以外はほぼ知らないし、歴史の時間にも、その人物像について学んでいないため、この映画を通じて安について少しは分かるようになった」と語った。

映画では、仲間たちと一緒に、大韓民国独立を目指して活動する安の姿が描き出される。こう書くと、真面目で重い映画だと思われるかもしれないが、日本、中国、ラトビアなどで撮影された映像は雄大で美しく、軽快にテンポよく進むストーリーは観客を飽きさせない。ユーモアで笑いを誘う場面も多い。

大草さんは「加害国の人間である私は、この歴史の事実や意味をもっと深く考えるべきである。また、過去の出来事を反省し、日本がしてきたことに思いをはせるべきなのだろう」とした。

その上で「この映画を観て、感じることはもちろん人それぞれ違うだろう。私が感じたのは、平和で自由な人生の重要さと、大切な人や物を守る勇気だ」とし、「反省をするだけでなく、今この時に起こっている戦争や暴力を止めるために、小さくとも一歩を踏み出す勇気、声を挙げる勇気が必要だ」と伝えた。

映画「英雄」のユン・ジェギュン監督(右から4番目)と俳優たち=8日、ソウル、CJ ENM

映画「英雄」のユン・ジェギュン監督(右から4番目)と俳優たち=8日、ソウル、CJ ENM


ミュージカル映画「英雄」は、撮影現場で役者が実際に歌を歌って録音する方式を採択した。2009年ミュージカル初演から今まで主人公の安重根を演じ、今回の映画でも主人公を演じた俳優チョン・ソンファは「カメラが回ってからは、(歌の)音が少しでもずれると、どうしても気になって感情を維持することが難しくなる。演技と歌のバランスをとるのがとても大変だった」と話した。

その上で「タイトルは『英雄』だが、ヒーローものに出てくるような人物に見えるのだけは避けたかったので、かなり頑張った」とし、「何よりも(安重根という)人間自体がそのまま伝わってくれたらと思う」と語った。

ユン・ジェギュン監督は「韓国のために命を捧げた多くの独立運動家、その中でも特に安重根義士の最後の一年を描いたこの映画に注目してほしい」と話した。

21日に公開された映画「英雄」は、観客動員数88万6945人(27日午前11時時点)を記録している。

km137426@korea.kr