韓国初のロボット指揮者「EveR6」がデビューした国立国楽管弦楽団の公演「不在」=6月30日、ソウル、国立劇場
[ソウル=イ・ギョンミ]
[映像=国立国楽管弦楽団YouTubeチャンネル]
公演の始まりを知らせる鐘の音が鳴り、周りが暗くなった。「ブウン」という音と共にステージの下から指揮者が登場すると、観客が歓呼の声を上げると同時に、拍手が沸き上がった。客席に向かって挨拶したのは、人間ではなく、韓国初のロボット指揮者「EveR6」だった。
アンドロイド・ロボット「EveR6」が先月30日、国立劇場で開かれた国立国楽管弦楽団の公演「不在」で指揮者としてデビューした。
EveR6は、韓国生産技術研究院が2006年に開発した韓国初のアンドロイド「EveR」の6番目のシリーズ。センサー30個を、実際に指揮者の体に直接貼り、そのセンサーで捕捉した動きを学習した。3番目のシリーズ「EveR3」は2009年、同楽団が子どもを対象に行った公演で「ソリクン(唄い人)」として舞台に立ったことがある。
これまでロボットが指揮者を務める試みは海外で何回もあったが、韓国では今回が初めて。1200人あまりが客席を埋め、国内外メディアも注目した。
EveR6は単独で2曲を指揮。2曲とも軽快なリズムと速いスピードが特徴の曲で、一秒の狂いもない正確な拍子が最大のメリットであるEveR6のために選ばれた。
腕と首、肩の関節を利用してスムーズに動くEveR6。強弱を振り分ける手の動きや、音楽を感じるかのように首を動かす様子は人間の指揮者と何ら変わらなかった。演奏が終わると、客席からは「おお!」「思ったより上手い」などの声が聞こえてきた。
崔銖烈(チェ・スヨル)指揮者は、本番前の先月26日に行われた記者会見で「EveR6が指揮する動きが非常に繊細で、驚いた」と話した。
指揮を練習するEveR6=6月26日、ソウル、キム・スンジュ撮影
ロボットと人間が一緒に指揮をする曲もあった。EveR6と崔指揮者が同時に観客の方を向いて一礼すると、笑い声と同時に拍手が沸き起こった。二人の指揮する姿は、ステージの両側に設置されている大型スクリーンに映し出された。曲のクライマックスでも無表情を貫くEveR6と、豊かな表情で様々なジェスチャーを活用する崔指揮者を比較しながら演奏を楽しむのも醍醐味だった。
ロボットに興味があるという小学生4年生の申智勲(シン・ジフン)君は、「ロボットの動きが思ったより自然で、びっくりしました!」と興奮気味に話した。小学校教諭の金硏周(キム・ヨンジュ)氏は「技術の発展とともに、このような公演が増えていくだろう」とし、「次回の公演では、どんな新しい技術が見られるか、細かいところまで補完されたパフォーマンスが楽しみ」と語った。
同時に観客に挨拶する崔指揮者(左)とロボット指揮者のEveR6=6月30日、ソウル、国立劇場
李東昱(イ・ドンウク)工学博士は「研究所で2、3回(EveR6の動きが)止まったことがあって心配したが、無事に終わってよかった」とほっとした様子だった。確率は非常に低いものの、本番でEveR6に問題が発生した時に備えた対応シナリオもあったという。
李博士は「ロボットの新しい試みという点からやりがいを感じる」とし、「人間の代わりにサービスを行うだけではなく、文化・芸術の方面でのロボットに何かできるということを確認する契機になって嬉しい」とコメントした。
今回の公演は団員にとっても新たなチャレンジであり、新鮮な経験だった。
国立国楽管弦楽団の誕生時からのメンバーであり、40年以上演奏活動を行っているというコムンゴ(韓国の伝統楽器)奏者の吳慶子(オ・ギョンジャ)氏は「EveR6が指揮する正確な拍子に合わせるために、一人ひとりがすごく頑張った」とし、「技術と人の配慮が合わさった舞台だった」と評価した。
その上で、「ロボット指揮者が登場したとき、観客のあまりの喜びように、少し(ロボットに)嫉妬した」と打ち明けた。
呂美順(ヨ・ミスン)楽長兼芸術監督代理は「投資を通じて実現できる価値や持続的発展の可能性があるかどうかを確認することも重要だが、芸術においては目に見える結果が出なくても、やってみることが重要だと思う」とし、「無限の想像力から無限の創造力が生まれる」と、今回の公演が持つ意味を伝えた。
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