もう一つの代表作、「少年が来る」(2014)は、1980年に起きた「光州事件」を描いた小説の決定版とされている。イタリアの権威ある文学賞であるマラパルテ賞を受賞し、現在18カ国語に翻訳されている。抗争で命を落とした者がその時何を想い、生存者や家族は事件後どんな生を余儀なくされたのかについて、そのひとり一人の生を深く見つめ描き出している。
最新作の「別れを告げない」(2021)は、悲劇的な済州(チェジュ)島4・3事件の歴史を絡め女性3人の視点から描いた作品。フランスのメディシス賞(2023)とエミール・ギメ・アジア文学賞(2024)を受賞した。現在まで6カ国語に翻訳され、来年には英語版の出版を控えている。
受賞作の他にも注目すべき作品が多くある。「白いもの」の目録を書きとめ紡がれた65の物語、「すべての、白いものたちの」(2016)は、生後すぐに亡くなった姉をめぐり、ホロコースト後に再建されたワルシャワの街と、朝鮮半島の記憶が交差する。おくるみ、産着、雪、骨、灰、白く笑う、米と飯……。
2018年、『すべての、白いものたちの』で2度目のブッカー国際賞最終候補となり、 日本翻訳大賞にもノミネートされた。「すべての、白いものたちの」は現在、14カ国語に翻訳されている。
「ギリシャ語の時間」(2011)は、ある日突然言葉を話せなくなった女と少しずつ視力を失っていく男の出会いと対話を通じて、人間が失った本質とは何かを問いかける。英語版は昨年、フランス語版は2017年に出版された。フランスのメディシス賞の最終候補に選ばれ、話題になった。
韓国文学翻訳院は21日、デジタル図書館に「ハン・ガン作家のコーナー」を新しく設けたことを明らかにした。各国の言語で翻訳されたハン・ガンの作品が集められている。身分証明書を持参すれば誰でも自由に閲覧できる。また、韓国文学翻訳院のホームページ(ltikorea.or.kr )では、ハン・ガンの作品が電子書籍やオーディオブックで提供される。
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