先月30日、国立国楽院の牛眠堂「茶談」の舞台で、正楽団がAI技術で復元された世宗の創作音楽「チファピョン」と「チプンヒョン」を演奏する様子。
[ソウル=パク・チェリン]
[写真=イ・ジョンウ]
世宗(セジョン)大王の誕生日(5月15日)を控え、世宗大王が残した音楽遺産をAIで蘇らせた。
国立国楽院が先月30日、ソウル瑞草(ソチョ)区・牛眠堂(ウミョンダン)でブランチコンサート「茶談」を行った。正楽団は、世宗大王の創作音楽である「チファピョン」と「チプンヒョン」を披露した。
世宗大王が1445年に作曲したと伝えられる曲だ。楽譜しか残っておらず、長い間忘れられていたという。
国立国楽院がAIを活用して、2023年から復元作業に取り組んだ。世宗の時代の宮中音楽である「ヨミンラク」の構造と朝鮮前期の宮中音楽の様式をAIに学習させた。進化アルゴリズムとディープラーニングを活用して、音を推定し、曲の輪郭を再構成した。そして昨年5月、景福宮(キョンボックン)の修政殿(スジョンジョン)で初めて公開された。
今回の舞台は、同時に行われる講演会のテーマに沿うようにして構成された。演奏した6人の正楽団員からは、まるで15世紀の宮中を思わせる厳粛な雰囲気がただよっていた。表情を崩さず、端然とした佇まいの演奏とその旋律は、機械のような精密さを感じさせた。まるで、ヒューマノイドが演奏をしているようであった。
講演者として招待された慶熙大学校のキム・サンギュン教授と司会を務めたファン・スギョンアナウンサー
技術と伝統、その間に立つ芸術
今回のコンサートでは、音楽に触れるだけでなく、慶煕(キョンヒ)大学のキム・サンギュン教授による講演会も行われた。講演では、人間とヒューマノイド、感情と技術の境界に立った芸術の本質について語られた。キム・サンギュン教授は「芸術は、人間らしさの頂点のように思われてきた。しかし、今では芸術もAI技術に影響を受けている」と説明した。ヒューマノイドロボットが芸術の領域に影響を及ぼしている今、私たちは伝統をどのように継承していけばよいのだろうか。
もはや、AIが未来を創造し、過去を復元する時代になっている。国楽は過去と現在、未来をつなぎ、技術と人間を試す新しいジャンルとなった。
国立国楽院の民俗楽団がシナウィ合奏を披露する様子
即興と躍動のリズム、国楽のもう一つの顔
正楽団の他にも民俗楽団も舞台に上がり、講演が一層盛り上がった。宮中音楽とは違って、シナウィやサムルノリは、自由で即興的な特徴を持っている。
シナウィの合奏では、即興と感覚が特徴だ。それぞれ独立して演奏を行うが、いつの間にか自然に融合し、ひとつになっていた。「楽譜のない音楽」、それがシナウィだった。
サムルノリは、打楽器の生命力を極大化した。銅鼓(ケンガリ)、銅鑼(ジン)、チャング、太鼓が、リズミカルに演奏された。スピード感のあるリズムと演奏の途中で入るかけ声が、会場をより一層盛り上げる。
国楽の過去と現在が一つの舞台で調和を成した。
国立国楽院ブランチコンサート「茶談」公演前、観客に提供されたお茶と茶菓
AI時代、芸術はどこへ向かうのか
AIが復元した世宗大王の宮中音楽は、単なる過去の再現ではない。技術で「空白」を埋める試みだといえる。人間の感性と機械の論理の間で、芸術はどう生き残るのだろうか。問いに対する糸口を、今回、この国楽の舞台で確かめることができた。国楽の新たな可能性はここから開かれるだろう。
「茶談」はお茶と茶菓を提供するブランチコンサートだ。毎月最終週の水曜日午前11時、国立国楽院の牛眠堂で開かれる。前売りは、国立国楽院のホームページ(www.gugak.go.kr)または電話(02-580-3300)で可能だ。入場券は、A席3万ウォン、B席2万ウォン。