食・旅行

2022.04.29

韓国の著名な美術史学者のユ・ホンジュン氏は、自分の著書の中で「知っている分だけ見える」と述べている。有名な場所も、いつもと同じ日常も、どれだけ知っているか、どんな視点で見るかによって、見える風景は違ってくるからだ。

Korea.netは、韓国の地域文化や旅行先を紹介するコンテンツを連載する。ネットなどですでに知られている有名な場所は、人と地域が作り出した物語を中心に、新しい視点で紹介する。韓国各地の隠れた名所を探し、その魅力をKorea.net読者の皆さんにお伝えする。


[南海=パク・ビョンギュ、イ・ギョンミ]
[映像=イ・ジュンヨン、Korea.net公式YouTubeチャンネル、錦王寺・智峰和尚]

旅行の前、気をつけなくてはならないものの一つが「天気」。旅行にとても大きな影響を与えるが、天気は人間の意志で自由に操ることができない。旅行のスケジュール、交通の便、泊まり先などを決めた後は、「旅行の日、どうか晴れますように」と祈るしかない。

青空、エメラルドグリーンの海、新緑、美しい花、広がる雪原などを期待するが、全ての条件が整った旅行なんかあり得ない。与えられた条件の下で、最高の満足を得るための努力が必要であるだけだ。

Korea.netが慶南・南海(ナメ)郡を訪れた13日の天気は、曇り。強い風が吹き、にわか雨が降っていた。透明な海は激しい波で濁り、風は寂しく感じられた。


晴れた日の南海は、ネット上などにたくさんアップされているが、曇り日の様子はあまり見られない。そう考えれば、曇りの天気はむしろ南海を楽しめる良い天気であるといえるだろう。風が作り出す波の音は、晴れた日のそれとはまた異なる。



南海は、韓国にある3300余りの島のうち、5番目に大きい島だ。韓半島の南端に位置しており、ソウルから行くには遠い。交通の便も悪いため、観光に適しているとは言い難い。としかし南海は、素朴な漁村の風情が漂い、町の至る所に物語を感じさせる場所でもあるのだ。

島と島の間の海には、伝統漁業補法の施設「竹防簾(チュッパンニョム)」と「石防簾(ソッパンニョム)」が目を引く。


古い冷凍倉庫が素敵な複合文化施設へと変わったところもある。南海郡・彌助面(ミゾミョン)にある「スペース・ミジョ」は、冷却用熱交換器をオブジェ(立体作品)に、氷を貯蔵していた倉庫を公演会場に変えて、地域の住民が文化・芸術を楽しめる空間となっている。今後、カフェやセレクトショップなども設置される予定。

複合文化施設「スペース・ミジョ」=写真作家ノ・ギョン撮影

複合文化施設「スペース・ミジョ」=写真作家ノ・ギョン撮影


1960年代、ドイツへ派遣され、看護師や鉱員として働いていた人たちが韓国に戻って作った帰郷村の「ドイツ村」、自由の女神像やメタセコイアの並木が美しいアメリカ村など、異国情緒あふれる所もある。

ドイツ村=Korea.net DB

ドイツ村=Korea.net DB


曇り日の南海の魅力は、山でも見つけられる。南海郡・二東面(イドンミョン)にある寺「錦王寺」を訪れると、足下に広がる雲を眺めながら、風情ある景色を楽しむことができる。


「錦王寺」は、奇岩怪石が一目で見渡せるお寺。見る角度によって、仏様のようにもアイアンマンのようにも見える不思議な形をした岩がある。

錦王寺から見える岩=イ・ジュニョン撮影

錦王寺から見える岩=イ・ジュニョン撮影


外国人の観光客もよく訪問するお寺だが、何時間も岩を見つめている人も多いという。お茶をしながら和尚に「岩を眺める人は、いったい何を考えているのか」と聞いてみた。その答えは「何も考えていないだろう」。

錦王寺の和尚とお茶する様子=イ・ジュニョン撮影

錦王寺の和尚とお茶する様子=イ・ジュニョン撮影


「何も考えない」。南海を旅したい人が心掛けるべきことだ。

bgpark71@korea.kr