名誉記者団

2021.12.02

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[茨城=登久美子(日本)]
[写真=Netflix]

集団心理の暴走。それがこのドラマの第一印象でした。

11月19日(金)にNetflixで解禁され、わずか公開1日目にして世界24カ国で視聴ランキング1位になった韓国ドラマ、『地獄が呼んでいる』。コリアネットの記事でも取り上げられ、イカゲームの記録を超えて話題になったのは言うまでもありません。


海外からの反応も良く、英ガーディアン紙では「長年にわたり、深く人々の記憶に残る作品だ」、米ニューズウィークによると「思ったより、没入感の高い作品だ」、また大衆文化評論家のチョン・ドクヒョン氏はMKニュースとのインタビューで「見る人によって異なる評価が出ることがおこりうる作品」だとし、「ふつうのジャンル物から怪生命体が出てくると、これの正体をあばいて戦う過程をたどるが、『地獄が呼んでいる』はこのような物語構造ではなく、その後に現れた人間の様相を取り上げており、観客によってはこれを新鮮にあるいは難しく感じることがある」と語りました。

人の生死を取り扱う作品は宗教観や文化によっても解釈が変わりますが、これだけ世界的に受け入れられたのは訴えかけるテーマがしっかりとあるからではないのでしょうか。

筆者も公開と同時に全6話をドキドキしながら一気に観ましたので、まだ観ていない方はもちろん、観終わって興奮冷めやらぬままの方にもご紹介したいと思います。



物語はソウル中心部のあるカフェから始まります。人間ではない「何か」に地獄行きを宣告されると、指定された時間に現れる地獄からの使者たち。その後、宣告された人は焼き殺され、地獄へ連れて行かれます。これは理不尽な殺人事件か、はたまた因果応報の天罰か。人々が恐怖におびえていると、これは神の裁きだと主張する新興宗教「新真理会」の若きリーダー、チョン・ジンスが現れます。チョン・ジンスは、宣告された人々は罪深い者、今起きていることはこの世を正しい方向に導くための神の意志だと主張します。そんな彼を盲信する集団である「矢じり」も、神の意志に背く者たちを自らの手で裁き始め、世の中が混乱していきます。そんな中、弁護士のミン・ヘジンは地獄に呼ばれた人たちや遺族と手を組み、新真理会が扇動する混乱に立ち向かっていきます。



このドラマを観て圧倒されたのは、なんと言っても地獄からの使者たちの不気味さ。2足歩行のゴリラのような姿で、強くて無敵。指定された時間には必ず従わないとならない。どう対抗しようか考える時間もないほどあっという間に焼かれてしまいます。この使者たちは何者なのか、実際に地獄行きを宣告している人なのか、わからないことも多いのですが人間の無力さを思い知らされるシーンでした。



俳優陣の熱演もストーリーをより立体的にしています。新真理会の議長チョン・ジンス役はユ・アイン、弁護士ミン・ヘジン役にキム・ヒョンジュ、テレビのPDペ・ヨンジェ役にパク・ジョンミン、そして新真理会ユジ執事役にリュ・ギョンス。

特に、ユ・アインは「結婚できない男」「シカゴタイプライター」など今までとは、雰囲気の全く違う役だったので、その振り幅に驚かされました。今回はカリスマ的なオーラを余すところなく出しています。

また、刑事の娘、チン・ヒジョン(イ・レ)の演技も天才的。ヒジョンの母親を殺害して服役を終えた男性を捕まえるシーンでは、怒り、悲しみ、喜び、色々な感情が交錯する中で最後に達成感が出てくるような、笑いながら涙を流すシーンがあるのですが、これが見事の一言。何の台詞も要らないほど、表情だけでストーリーを進めていました。この涙を流しながらの笑顔は本当に怖く、筆者は心の中がかゆくなるような気がしました。



『地獄が呼んでいる』の魅力は、現実にありそうでない、どちらかというと現実寄りのホラー、というところにあると思います。天使や地獄からの使者たちはもちろん架空の存在ですが、恐怖に怯える混沌とした世の中に台頭する新興宗教、コアな信者たちの暴走と見て見ぬフリをする人々、犯罪被害者が感じる社会的不平等などは、その立場に身を置いてなくても共感できることが多かったです。そんなヨン・サンホ監督ならではの描写と、その描写に対する共感の多さがこのドラマによりリアリティを持たせているのではないでしょうか。

原題は「지옥(地獄)」、そして日本語タイトルは「地獄が呼んでいる」。全6話のうち半分の3話ずつでストーリーが別れている2部構成、とても観やすい長さです。もし自分や愛する人に「死」が目前に迫っていたら抗うのか、または逃げるのか。このドラマで世の中を巣食っている闇の部分を少しだけ覗いてみませんか。


*この記事は、日本のコリアネット名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。

eykim86@korea.kr