韓国料理「ポムナムル」
[大阪=中永裕紀子(日本)]
[写真=中永裕紀子]
寒かった冬が終わり、山ではうぐいすが鳴き、草花が芽吹く春もいよいよ本番。韓国の食卓には、「ポムナムル」を使った家庭料理が並び始めます。
「봄(ポム)」は春。「나물(ナムル)」は、日本でもなじみのある韓国料理で、主に野菜の和え物のことを言います。この時期の野菜や山菜は「ナムル」にするだけでなく、味噌汁、お餅などにして食べます。生命力にあふれる春の香りを感じ、口と心を楽しませてくれます。
新潟県三条市福祉保健部「食育メール」(令和2年3月19日号)によると、寒い冬を耐えた春野菜には、寒さで疲れた体にうれしい栄養素がギュッと詰まっています。春野菜に特徴的な苦味成分で、腎臓のろ過機能を高め、新陳代謝を高める働きがあります。腎臓は体内の血液をろ過し、老廃物や余分な水分を排出してくれます。植物性アルカロイドの働きによって腎臓の機能を上げ、体の中の老廃物や溜まった水分の排出を促します。
「植物性アルカロイド」には腎臓のろ過機能を高めたり、肝臓の解毒作用を高めたりする働きがあります。活動量が少なく代謝が低くなりがちな冬の間に体に溜まった老廃物を、体の新陳代謝を促すことで体外へ排出してくれるのです。
栄養学的に実証されるずっと昔から、「春には苦み」と知っていた先人の知恵に驚かされます。
「ポムナムル」の定番としては、ふき、ワラビ、せり、筍、などがあります。日本でも採れます。「ポムナムル」は、柔らかさと、かすかに苦みを感じるような独特の味わいが特徴です。種類も豊富で、少しずつ味が異なることも面白いです。
私は、この中で「ふき」が好きです。
下ごしらえで、筋を取る作業が楽しいのと、食べた時のシャキシャキした食感、そして、ほろ苦さが、春を感じさせてくれるところが気に入っています。
「ポムナムル」の定番を作ってみました。
<材料>
ふき、せり、人参、わらび、スナップエンドウ、タラの芽、筍
塩、白すりごま、ごま油、しょうゆ、みそ、砂糖、酢
各適量
<作り方>
① ふき
・熱湯で3分程茹で、筋をとった後、長さを揃えて切り、調味料を加えて、和える。
味付け:塩、ごま、ごま油
② せり
・熱湯で2分程茹で、食べやすい長さに切り、調味料を加えて、和える。
味付け:しょうゆ、砂糖、酢、ごま、ごま油
③ わらび
・重曹を少々入れた湯に漬けて、一晩おいた後、水洗いし、長さを揃えて切り、
調味料を加えて、和える。
味付け:しょうゆ、ごま、ごま油
④ スナップエンドウ
・塩を加えた熱湯で2,3分茹で、調味料を加えて、和える。
味付け:塩、ごま、ごま油
⑤ タラの芽
・熱湯で2分程茹で、調味料を加えて、和える。
味付け:しょうゆ、ごま、ごま油
⑥ 筍
・鍋に筍と水、ぬかを入れて1時間ほど炊いた後、そのまま半日程おく。
食べやすい大きさに切り、調味料を加えて、和える。
味付け:砂糖、味噌、しょうゆ、ごま、ごま油
それぞれ下処理や味付けは異なりますが、一番のポイントは、「手で混ぜる」こと。手でしっかりもみ込むことで、味をなじませます。
ポムナムルのもう一つの特徴は、ビビンバの具になることです。ボリューム感を出し、コチュジャンで甘辛風味に変わります。
あくの強い春野菜。下処理が大変でもありましたが、その手間も楽しみながら、作りました。香りと苦み、クセのある味。「あ~!春だなぁ。」と思いました。季節に関係なくスーパーには、色々な野菜が売っていますが、生の山菜は今だけ。
寒い冬を過ごしながら、暖かさや明るい光、芽吹き「春」の到来を待ち望んでいた気持ちが、「ポムナムル」という韓国語に表れているように思いました。皆さんも「ポムナムル」を食べて、春の喜び、楽しんでください。
*この記事は、日本のコリアネット名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。
eykim86@korea.kr