ソンスドン=イ・ギョンミ撮影
【文=大山愛莉】
皆さんは、韓国の「聖水洞(ソンスドン、성수동)」に行ったことがありますか?
「工場地域」から「MZ世代の聖地」として変化してきたソンスドンという場所は、この数年で韓国の若者の中でトレンドの場所として浮上しました。若者をターゲットにしたポップアップストアやアパレルショップ、カフェがその例です。 私は7月中旬、ソウルに住んでいる友達と会うついでに、話題のソンスドンの人気を肌で実感するため、実際に行ってみました。
ソンスドンとは?
ソンスドンは、ソウル特別市・城東区(ソンドング、성동구)の東部に位置していて、地下鉄2号線のソンス駅のあたりにある街です。南は漢江が面していて、西側にはソウル森(ソウルスプ、서울숲)という大きな公園があります。
1970年から、ソンスドンのある路地がハンドメイドローファー職人によって栄え、ソンスドンは国内最大のハンドメイドローファー生産地として知られました。
少し詳しく見てみましょう。
韓国で都市化が加速されたのは、1950年の後半。当時ソンスドンやトゥクソムのあたりに工場がたくさん建てられました。それから20年にかけて、鉄鋼・印刷・繊維・革靴などの工場がいっせいに立ち上がり、ソンスドンは工業地域の中心地として繁栄しました。しかし、1997年の通貨危機を受け、工場は倒産され、廃工場だけがそこに淋しく残されるようになりました。
本格的にソンスドンの雰囲気ががらっと変わり始めたのは、2010年以降のこと。企業は「ローファー生産」から「ローファーを販売する店」へ焦点を変え、ソウル市は経済政策を行い「ハンドメイドローファー特化産業」地域として指定されました。さらに、廃工場や倉庫の敷地を借りた若いCEOによるスタートアップ会社が立ち入ったり、芸術家の空間として誕生しました。この影響で、ソンスドンあたりの工場やビルは、改造が進み、新たなカフェやレストランに変化しました。
ソンスドンの魅力ポイント
ソンス駅から出ると、平日にも関わらず人並みを感じました。友達あるいはカップルなど、20代から30代前半の方が多く目立ちました。ソンスドンのどの魅力がZ世代の心を奪ったのでしょうか。
① 「レトロ」x「トレンド」の複合地
古いビルと流行りのフォトブース=大山愛莉撮影
ソンスドン通りを歩くと、ソウルの人気スポット「ホンデ」や「ハンナムドン」では見られない古い建物が目に入りました。面白いことに、最近流行りのお店やフォトブースなどが、この古いビルと共存している姿でした。
世界が急変しているなか、このように時代の古い建物が混ざり合った感じが、ソンスドンのアイデンティティであるのだと思います。
赤いレンガのビルとブルーボトルコーヒー(左)、ソンスドン通りで見かけた現代風ポスター=大山愛莉撮影
② 多種多様なポップアップストア
ポップアップストアとは、短期的な期間で注目を集め、企業が伝えたいメッセージを消費者へ届ける空間です。ソンスドンでは、常に多種多様なポップアップストアがオープンしています。この日同行した友達は、「ソンスドンは、毎月違うポップアップストアが開かれるから、常に来る楽しみがある」と話しました。
初めに私たちは、「空間wadiz」へ向かいました。
wadiz小物屋(左)、ShopCIDERポップアップストアの外見=wadiz公式インスタグラム、大山愛莉撮影
공간 와디즈(空間wadiz)は、複合文化空間。インスタグラムによると、ここで小物を販売したり、以前にも他のブランドのポップアップストアを開きました。私が訪問した時は、「ShopCIDER」というグローバルSPAブランドのポップアップストアが設けられていました。
次に向かった先は、「Diorソンス(디올 성수)」です。
パリのモンテーニュ通りの「Diorフラグシップストア」を再現した外見=イ・ギョンミ撮影
高価ブランドの消費者層が低くなっている現時点、ソンスドンへ進出するブランドが多くできました。世界で有名なブランドはソンスドンで展示会やポップアップストアを開き、新たなマーケティングを行いました。 「Diorソンス」の前でスマホで写真を撮る若者だけでなく外国人も多く、その人気を実感しました。
所有するより経験を重視する傾向があるZ世代をターゲットに、体験できる空間を提供するイベントがとても魅力的だと感じました。
このように、「ソンスドンに行きたい」と思う理由は、次回の新たなブランド入店の楽しみ、店内で味わえる新鮮な体験が若者の口にあったと考えられます。
ソウルのブルックリン?
ソンスドンは、毎年数十万人の観光客が訪れるアメリカのブルックリンのようだと言われてきました。 ブルックリンを中心とする街中の古い建物や昔ながらの赤いレンガは、現在のソンスドンの雰囲気とよく似ています。その共通点は、両街とも荒廃した市街地が復興された(gentrification)ということです。以前はブルックリンあたりも産業化により工場地区でしたが、芸術家や創業者が廃工場に訪れ、街全体に活気が出て創造性溢れるようにその姿が変わりました。ソンスドンやブルックリンは、ひっそりした灰色の工場地帯から、ヒップでおしゃれな街にアップグレードし、現在はトレンドの先頭者として人々に楽しさと感動を与えています。
衰退から繁栄までの成長をして来たブルックリンの前例から、ソンスドンもこれからアクセルを踏んでどんどん発展するでしょう。数年前までは、明洞や東大門(トンデムン)が観光地として人気でしたが、この数年後には、Z世代においてソンスドンあたりが第二の観光地としてその名を知らすようになるかもしれません。
今韓国で最も熱いスポットであるソンスドン。人気のある店の前には、長蛇の列ができていた=イ・ギョンミ撮影
ソンスドンで思ったこと
アパレルから雑貨などの幅広いポップアップストアや展示会、イベントまで多様な見どころがあり、若者のデートコースとして最適でした。また、異色な体験型空間、古い建物と若者が好きなブランドが混ざり合って共存している姿が、とても魅力的なところでした。
海外のグローバル企業にまで注目を浴びていることから、ソンスドンは今後どんどん盛んな地域に成長するでしょう。しかし、ソンスドンは、外国人観光客が少なかったことから、相対的に韓国で流行っている場所でした。実際、旅行後、日本の友人にソンスドンのことを聞いてみると、半分が知らないと答えました。
もし、ソンスドンへ行く予定の方は、SNSやインターネットで、現在どのポップアップストアがあるのか事前に検索することをおすすめします。時間に余裕がある方なら、好きなブランドのポップアップストア開催期間に合わせて韓国渡航することもいいでしょう。
今の韓国のトレンドは何なのか気になる方は、ぜひソンスドンへ行ってみてください。また、ソンスドンの長い歴史が眠っている古いビルを眺めてみると、さらに魅力的な場所であることがわかるでしょう。
*この記事は、日本のKOREA.net名誉記者団が制作しました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。
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