名誉記者団

2023.10.23

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【文・写真=田尾秀子】

みなさんは 韓国の「앙금플라워 떡 케이크」アングンフラワー トック(餅)ケーキを見たり、食べたりされたことはありますか?

韓国には四季や様々な行事によって決まったお餅や韓菓がありますが、その伝統を受け継ぎつつ、若い世代の人たちによって可愛くおしゃれに変化し続けています。韓国のカフェや餅店、韓菓店だけではなく、日本の韓国風なカフェでも工夫を凝らした若者受けするもの、フォトジェニックなものが増えてきています。昔から伝わるものを大切に守りつつ、そこへ少し手を加えて変化を愉しむという心がけがとても素晴らしく、これからが益々楽しみです。

アングンフラワー餅カップケーキ(本人作)

アングンフラワー餅カップケーキ(本人作)


私は以前、コロナ禍で大好きな韓国に行けなかった時、何となく立ち寄った書店で「関西で楽しむ韓国」というテーマが大きく書かれた雑誌を見つけました。

私はその雑誌を手に取って、どんな内容なのか確認することもなく衝動買いしました。
雑誌の内容は大阪コリアンタウンの様子はもちろんのこと、京阪神の韓国料理店や韓国風のインテリアが施されたカフェ、雑貨店、韓国コスメを扱うお店など、関西で楽しめる韓国の情報が満載でした。

そして、その中のある一枚の写真を見て、私の目は釘付けになりました。たくさんの綺麗なお花が飾られたケーキで、とても食べ物だとは思えないほどの素晴らしい写真でした。
キャプションを読んでみると驚いたことに、アングンフラワー餅ケーキと書いてありました。韓国では約20年前に餅屋が作り始めたそうです。

◆ 可愛くオシャレになったお餅

韓国のお餅と言えば、以前韓国料理を習ったときに作ったぺクソルギ(백설기)やパッシルトッ(팥시루떡)、ファジョン(화전)、ソンピョン(송편)、チョルピョン(절편)、インジョルミ(인절미)、キョンダン(경단) くらいだと思っていた上に、韓国でも実際にそのようなお花が飾られたケーキを見たことがありませんでした。それもそのはず、注文を受けてから作るというスタイルが殆どだったようです。

私が雑誌で見たお餅のケーキも、お店があって常に販売しているわけではなく、教室をされているということでした。
その雑誌を買って以来、他のページを見ても最後にはいつもお餅ケーキの写真を見てしまう毎日が続き、どうしても「実物を見てみたい」という思いが日ごとに募っていきました。

そして好奇心旺盛な私は遂に「習ってみよう」と決心したのでした。

お料理を作るのは好きですが、お菓子を作るのはどちらかと言うと苦手なので、果たして私にできるのかな?と少し不安を感じながら習い始めました。

◆ アングンフラワー餅ケーキとは?

お餅ケーキというと、柔らかくて伸びるお餅を想像しがちですが、うるち米を粉状にして少しの水とグラニュー糖を加えて蒸したソルギ(蒸しパンのようなもの)を使用したものです。

ケーキの土台となるソルギの上に、あんこ(=アングン)を絞って作ったお花を飾りつけたものをアングンフラワー餅ケーキと言います。

白いこしあんに食用色素で色付けして、様々なお花を作ります。

◆ 土台となるソルギを作る手順

まず始めに、ケーキの土台となるソルギを蒸します。

湿式米粉(水分を含んだ米粉)に少量の水を加え、それを数回こし器で漉し、グラニュー糖を混ぜます。
その後、蒸し器を用意し、その上にクッキングペーパーなどを敷き、セルクル(底のない枠)を置き、米粉と水、グラニュー糖を混ぜたものを入れ、表面を平らにします。

そして、セルクルを縦横斜めと少しずつ動かして、丸くまとまったら崩さないように注意しながらセルクルを外します。この時はまるで息を止めるような感じで、慎重に作業をします。

その後、強火でソルギを蒸します。

なお、ソルギの中に入れたり、混ぜ込むもの(例えばカボチャやさつまいもなど)によって、グラニュー糖の量や蒸し時間などが違ってきます。
アングンフラワーを作っている間に、ソルギを蒸して冷ます作業もします。

◆ アングンフラワーの作り方

初めて絞ったアングンフラワー(本人作)

初めて絞ったアングンフラワー(本人作)


まず、白いこしあんは食用の色素で色をつけます。
あんこを色付けしたら、口金を付けた絞り袋に入れます。
フラワーネイル(花絞りする時の道具)にあんこを絞ってお花を一つずつ作っていきます。
飾るときに崩れることもあるので、多めに作っておきます。

◆ 土台にお花を飾る

蒸しあがって冷めたソルギの側面に、セロハンを巻きます。
土台の上の部分にあんこを塗ります。

そこへ作っておいたお花を、はさみのような形をしたフラワーリフターで持ち、土台に押さえるような感じで飾り付けていきます。

この時、綺麗に飾るには、どこから見ても正面でなければいけない上に、立体的に飾り付けなければなりません。

ただし、置く位置を間違えても生クリームなどとは違い、やり直すことが出来ます。さすがに何回も繰り返すとお花は潰れてしまいますが、やり直しが利くのがアングンフラワーの良い点です。

◆ 初めて習ったときの感想

初めての作品(本人作)

初めての作品(本人作)


初レッスンではバラとブロッサムを習いました。お花絞りは、左手でネイルを動かしながら、右手であんこを絞るという作業なので結構握力も必要で、当たり前ですがはじめは本当に思うように絞れませんでした。

それでも一生懸命にあんこを絞ってる間は、余計なことを一切考えることがなく、凄く集中できてお花を絞り終えたときには小さな達成感を味わうことが出来ました。

何もかもが初めての経験の中、私の作品第一号が出来上がったときは凄く感激して、食べ物だということを忘れて、ずっと眺めていたい気分でした。ひとしきり眺めた後、勿体ないと思いながらも美味しく食べました。

◆ ディプロマ取得

ディプロマの写真

ディプロマの写真


様々なお花の絞り方を習い、最後のレッスンも終了して、せっかく習ったのだからディプロマも取得したいと思いました。

とは言っても、そんな簡単に取得できるはずがありません。一回目のテストは予想通りやはり不合格でした。

その後、毎日練習を重ねて分からなくなった時には先生に教えていただいて、何とかやっとの思いでテストに合格しました。

レッスンでいろいろな綺麗なお花の絞り方を、いつもワクワクした楽しい気分で習うことが出来てとても良い経験になりました。

身につけた技術を仕事にはしていませんが、忘れないためにもアングンフラワートック(餅)ケーキを作って、周りの人を喜ばせたり、癒すことが出来たらと思っています。

テストで合格した時の作品 初めての作品と全然違う

テストで合格した時の作品 初めての作品と全然違う


◆ 韓菓について

最近、韓国ではお餅に限らず伝統的なお菓子である「韓菓」も多様化しています。2019年頃から流行しているニュートロブーム(NEWとRETROを組み合わせた造語)に伴って、音楽やファッション、食べ物に至るまで、新しいものと昔風の物が合わさったものが流行しています。

例えば、伝統的な建物である韓屋をリノベーションしたカフェが作られ、そこで出されるスイーツも伝統的なお餅や韓菓を可愛く今風にアレンジしたものが多く見られます。製法や主な材料は昔とは変わらぬものの、新しいアイデアが取り入れられたりしています。

お餅ならソルギの中にクリームチーズを入れたり、生地にクッキーをまぜたり多種多様です。
特に現在流行中の薬果(약과 )はカフェや韓菓店に限らず、コンビニにまでアレンジ薬果が売られている程です。

◆ 可愛くオシャレになったヤックァ(약과 、薬果)

最近若い世代の間でアレンジした ヤックァ(약과)が流行しています。ヤックァとは、小麦粉にごま油、蜂蜜、砂糖、水あめ、焼酎を混ぜ合わせて作った生地を伸ばし、型を抜いて低温の油で煮るように揚げたあと油を切り、水あめに生姜を加えたシロップに浸し、引き上げた後に余分なシロップを切り完成したもののことです。

韓国では先祖供養の供え物としてはもちろんのこと、ハレの日のお菓子、それだけではなく日常でのおやつとしても人々に親しまれています。

◆ アレンジしたヤックァ

アレンジしたヤックァ

アレンジしたヤックァ


薬果の表面に緑茶クリームやチョコレートを流し入れたり、ケーキの上にのせたり、クリームをサンドするなど多様化しています。このように今風にアレンジしているのが人気の理由だと思います。

伝統を守りながら、新しいものを取り入れるという取り組みがとても素晴らしいと思います。私はこれらの変化によって、多くの人々が韓菓のみならず、韓国の食文化に対しても理解や関心が高まることを期待しています。

*この記事は、日本のKOREA.net名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。

hjkoh@korea.kr