[文・写真=田尾秀子]
「大阪・関西万博の韓国館を観覧しました。
展示会場の様子を私の感想を交えてご紹介いたします。これから訪れる方の参考になれば幸いです。」
韓国館のテーマは「心に寄り添う:いのち花開く未来へ」このテーマがどんなことを意味するのか、私は早く確かめたい気持ちでワクワクしながら、3つの展示会場で構成された韓国館を目指しました。
思わず立ち止まって見入ってしまうほどの大迫力の外観
万博会場ゲートから広大な会場をひたすら歩いて、やっとの思いで辿り着いた韓国館は、「敷地面積が約3500㎡、海外パビリオンの中で最大級」との情報を得ていたものの、実際に目の当たりにすると、本当に巨大で凄く圧倒されました。また、万博会場の象徴とされる大屋根リングの屋上から見下ろしても、その巨大さと存在感は際立っており、建物の前に立っている人が本当に小さく見えるほどです。
そしてパビリオンの正面の壁には幅27m✖️高さ10mにもおよぶ大型LEDビジョンでメディアファサードが設けられており、そこには韓国国内の観光地や未来的な映像がダイナミックに映し出され、行き交う人々が思わず立ち止まって見入るほどの迫力です。
いよいよ会場に入ると、待機スペースがあり、天井は「ハンサン(韓山)カラムシ(=モシ)」で作られた「チョロン」で装飾されていて、柔らかく光を通す質感で温かみのある空間が演出されています。また、その空間からは伝統をとても大切にする姿勢が窺えました。
「ハンサン(韓山)カラムシ(モシ)」とは?
天然素材で、通気性が良く、韓国の伝統衣装にも使用されています。ハンサンカラムシはユネスコ人類無形文化遺産に登録され、大韓民国国家無形文化財にも指定されています。
「チョロン」とは?
韓国の伝統的な提灯のことです。
第1展示場へ入る前に1人ずつモニターに向かって、自分が大切にしていることを言います。そして会場内では入場前にそれぞれが言った言葉がAIを駆使してリズミカルな音楽として完成され、その音楽に連動して鮮やかな光が演出されています。
聞こえてくる言葉は日本語だけではなく、さまざまな外国語も混じっています。その中で私が言ったのと同じ言葉が聞こえてきて、少し嬉しくなり共感を覚ました。これがまさに「こころに寄り添う」ではないかとも感じました。
第1展示会場 リズミカルな音楽と鮮やかな光の演出には躍動感がありました
第2展示場では、第1展示場の「現代」とは一転し、時間が逆戻りしたような雰囲気を感じました。しかし、私たちが日常で使っていた現代の機器が化石のようにコンクリートのがれきに埋もれているオブジェを見て、それがこれから変わりゆくことを示していることがわかりました。また、コンクリートのがれきから吐息パイプが出ており、そこに息を吹きかけると水素燃料が化学反応を起こし、シャボン玉のように生まれた水が降り注ぐという仕掛けになっています。この水はいのちを蘇らせる源泉水として機能するのだそうです。ここで体験したことが、まさに「いのち花開く未来へ」というテーマ通りになっており、韓国の技術がこれから先にどのように活用されるのかとても興味を惹かれました。
第3展示場は3面の大型スクリーンに囲まれいて、ここでは2040年の近未来の韓国を背景に、祖父が残した未完成の曲を孫娘が完成させるという音楽仕立てのショートストーリーを鑑賞します。曲を完成させる過程では、孫娘とその友人たちのやり取りが、途中で意見が合わなくてギクシャクしたかと思うと仲直りしたりする様子がK-POPの歌とダンスで映し出されます。このショートストーリーは、完成できなかったものを未来の世代が受け継ぎ、その中で「愛」や「家族」、「こころに寄り添う」ことの大切さが伝わってくるような心を揺さぶる演出がされていると感じました。私はこのストーリーを観ながら、自分自身のこれまで歩んできた人生や未来を重ね合わせてしまい、思わず涙がこぼれそうになるほど心を動かされる没入体験を味わいました。
第3展示会場 近未来に没入体験できるくらいの巨大スクリーンで三方向囲まれています
韓国館の3つの展示会場を観覧して、これまであまり知らなかった最先端の技術や、持続可能な開発目標(SDGs)を楽しみながら学ぶことができました。これからの日常生活の中でも少しずつ意識を変えて、未来に貢献したいという思いが芽生えました。
中でも強く心に残ったのは、「Connecting Hearts(こころに寄り添う)」というテーマの重みです。言葉や文化の違いを超えて、互いに心を繋ぎ寄り添うことの大切さを実感しました。2025年は日韓国交正常化60周年の節目にあたる年です。韓国館のテーマが示すように、両国が心に寄り添い、尊重し合いながら「いのち花開く未来」へと、ともに歩んでいけることを心から願います。
*この記事は、日本のKOREA.net名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。
hjkoh@korea.kr