名誉記者団

2025.08.27

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[文・写真=田尾秀子]

今回私がテンプルステイ体験をする松廣寺の門をくぐるとき、期待と緊張で少し複雑な気持ちでした

今回私がテンプルステイ体験をする松廣寺の門をくぐるとき、期待と緊張で少し複雑な気持ちでした


私がテンプルステイ体験談を周りの方に話そうとするたびに「えっ?テンプルステイって?!」という疑問を投げかけられました。意外にも知らない方が多いので、まずテンプルステイについてお話ししたいと思います。

テンプルステイとは?

2002年のサッカーW杯を機に、外国人観光客の宿泊施設の不足を解消するために、寺院を宿泊施設に開放したのが始まりです。その後の2004年には韓国伝統仏教文化を世界に広めるために「韓国仏教文化事業団」が発足されました。今では忙しい現代人が、心を休める場所として人気を集め、韓国仏教文化を代表する体験プログラムになりました。もちろん宗教に関係なく、また外国人も体験できる寺院もあります。

私が体験に選んだ寺院について

この体験には、韓国人の友人と二人で参加しました。体験先として選んだ寺院は、友人の勧めもあって全羅南道 順天市 曹渓山の麓に位置する、韓国三大寺院の一つの名刹である松廣寺に決まりました。

韓国三大寺院とは?

仏教の三宝(仏・法・僧)を、それぞれ象徴する貴重な遺物や伝統を擁する寺院のこと。

通度寺 : お釈迦様の頂骨舎を奉っている韓国最大の名刹(仏宝寺刹)

海印寺 : お釈迦様の教えのすべてをまとめた経典が保管されている寺刹(法宝寺刹)

松廣寺 : お釈迦様の教えを習って修行する寺刹(僧宝寺刹)

迷いそうなくらいに広い松廣寺の境内

迷いそうなくらいに広い松廣寺の境内


松廣寺について

松廣寺は、韓国仏教を代表する宗派・曹渓宗の発祥地。新羅時代末期に慧麟禅師(けいりんぜんじ)といわれる僧侶が吉祥寺を創建し、その後1208年には名称が「松廣寺」になりました。この寺刹は高僧に与えられる「国師」(禅宗において高位の僧侶を指す言葉)を16名輩出したことから、僧宝寺刹となりました。その他、様々な宝物を展示する「聖宝博物館」や有形文化財、宝物に指定された建物も保有しています。

宿泊棟の室内は思っていたより広くて、清潔で快適でした

宿泊棟の室内は思っていたより広くて、清潔で快適でした


初めてのテンプルステイ体験

初めての1泊2日のテンプルステイ体験は、オリエンテーションを含めて10行程からなる盛りだくさんの充実したプログラムでした。松廣寺に到着後に受付を済ませたら、宿泊する部屋へ行き、まずは用意された宗練服(チョッキとズボン)を着ます。宿泊棟は韓屋で、室内の様子は思っていたより広く、シャワーとトイレも完備されており清潔で快適でした。

プログラム表には盛りだくさんの行程が書かれています

プログラム表には盛りだくさんの行程が書かれています


15:30~ オリエンテーション プログラム説明や寺院でのマナー、注意事項とチョル(お辞儀)のやり方の説明

マナーや注意事項については、前方から僧侶が来られたら、必ず手を合わせる(合掌)すること、供養(コンヤン=食事)の時は黙食、夜遅く騒音を立ててはいけないなど、寺院内では当たり前の内容だったので安心しましたが、緊張したのは私にとって初体験のチョル(お辞儀)でした。

チョルの手順

立位で頭を下げてお辞儀をし、合掌→両膝まずき、四つん這い姿勢になる→肘から掌までを地面につける→額も地面につける→掌を上に向け、両肘をつけたまま少し上に挙げる→この動作を3回繰り返しますが、3回目は額の所で手を合わせます。

僧侶が記念撮影もしてくださいました

僧侶が記念撮影もしてくださいました


16:30~僧侶による境内の案内

境内はかなり広くて、大宝雄殿や地蔵殿、僧宝殿をはじめとする数々の素晴らしい建物があり、丁寧に説明していただきました。また、説明だけではなく写真撮影もしてくださり、親しみを感じるユニークな僧侶で、楽しい雰囲気で場が和みました。

夜供養 もう少し取ればよかったと思うくらい美味しかった

夜供養 もう少し取ればよかったと思うくらい美味しかった


17:55~ 夜供養 (20分間)

食事はバイキング形式になっていました。各自好きなものを、食べきれる量を取って席では黙食。食事は肉やニンニク、ねぎ、ニラなどを使用しない寺刹料理(精進料理)で、ナムルが中心。大豆をお肉のように作ったものや、ナンとカレーなど、工夫を凝らしたお料理の他、デザート(生の果物やバナナチップ)まであり、全部とても美味しくヘルシーな味わいでした。時間があるなら、じっくり味わってお代わりしたいくらいでした。

18:40~ 夜の礼仏(40分間)

夕食後、仏殿(大雄宝殿)において、いよいよ初めての礼仏始まります。礼仏とは、一日の始まりと終わりを告げる最も基本的な儀式です。仏殿の荘厳な雰囲気の中、僧侶の方々をはじめ、信者、テンプルステイ参加者が仏殿に安置されたお釈迦様にご挨拶をします。私はお釈迦様のお姿を仰ぎ見ていると、不思議と穏やかな気持ちになりました。僧侶の読経の声と、打ち鳴らす仏具の音が響くなか、いよいよオリエンテーションで習ったチョルをする時がやってきました。私は周りの方々がされているのを見ながら真似てみました。ドラマで時々観たことはありましたが、実際にやってみると難しく感じるうえに、結構大変に思いました。それでも一生懸命にしていると、何だかお釈迦様に見守られているかのような安心感に包まれました。

19:30~僧侶との茶談

茶談とは、お茶をいただきながら僧侶と向き合ってお話しすることを言います。仏教文化についてのお話を聞くだけではなく、参加者が人生における悩みや、葛藤があれば僧侶に打ち明けると、心を込めてアドバイスをしてくださいます。参加人数が多かった(23、4名)ので1時間のところ、かなり時間オーバーしてしまいましたが、日常ではなかなか体験できない貴重なひと時が過ごせました。

2日目 03:30~早朝礼仏(自由参加、1時間)

早朝というより、夜中という方が正しいのではないかと思えるような時間から礼仏が始まります。前日、就寝してから数時間しか経たないうちに起床し、静かに身支度をして部屋を出ました。仏殿に向かう途中に空を見上げると、満点の星空が広がっていました。都会では決して見られない、星が降ってきそうな光景には心が洗われるようでした。そんな感動を胸に仏殿に到着すると、日曜日ということで大勢の信者の方々が来訪しており、溢れんばかりの人で埋め尽くされていました。空いているスペースを見つけて入って行き、辺りを見渡すと外国人は私一人だけのようでした。何だか少し心細く感じましたが、礼仏が始まると不思議と温かい気持ちになり、癒されました。

早朝礼仏が終わり、部屋に戻るときもまだ空にはたくさんの星が輝いていました

早朝礼仏が終わり、部屋に戻るときもまだ空にはたくさんの星が輝いていました


05:55~朝供養

前日の供養とはまた違ったお料理が数種類ありました。私たちがこれらを頂くことができるのは、夜中から用意してくださったおかげだと思うと、早朝からいろいろ美味しく頂けることに感謝の気持ちで一杯になりました。

07:30~ 散歩

森の中を散歩しながら、僧侶から寺院の周りに点在する建物などの説明を聞き、所々で写真撮影もしていただきました。そして、途中で足を止めて綺麗な空気を味わい、雑念を捨てて蝉や鳥の鳴き声に集中する瞑想は、普段あまり気づくことのない自然の大切さを教えてくれる貴重な、気持ちの良い時間でした。また、山道を歩いていると、僧侶が道の真ん中に大きなミミズがいるのを見つけて、それをそっと木の根元に避けてあげる様子を目にすると、僧侶の慈悲深い心が伝わってきて優しい気持ちになりました。

09:30~11:00 感想文作成、後片付け後に退室

私にとっては初めてで貴重な体験の感想を書き、気持ちよく過ごせたお部屋も綺麗に片づけて感謝とともに部屋を後にしました。

11:20~ 昼供養

これが最後の供養だと思うと、とても名残惜しい気持ちになりながらも、やはりじっくりと味わってもいられずに後片付けをして二日間の体験が無事に終わりました。

感想

私がずっと以前から、テンプルステイ体験に参加したいと思っていた一番の理由は、都会の喧騒を離れ、自然の中で自分を見つめ直してみたいという思いからでした。また、それ以外にも韓国仏教文化に触れ、まだ体験したことのない方にテンプルステイの内容や、素晴らしさを伝えたいという思いがあったからです。実際に体験をしてみると、盛りだくさんのプログラムに最初は慣れないこともあり、とても忙しく感じましたが、一つ一つ成し遂げていくにつれ、時間の大切さを感じながら最後には達成感も味わうことができました。そして、一番心に残ったことは、僧侶との茶談で自分自身について気づきがあったことです。また、僧侶が話されてる韓国語を、全て理解はできませんでしたが、それでも強く伝わってくるものを感じられたので、体験して本当に良かったと思いました。それと同時に、韓国三大寺院の残る二つの寺院でもテンプルステイするという目標ができました。皆さんも、機会がありましたら「自分を見つめ直す」時間を過ごしてみませんか。

【テンプルステイ情報】

テンプルステイ体験できる寺院の数

韓国内で試験的に実施中の寺院(ユネスコ世界文化遺産登録寺院を含む)は約150ヶ寺、そのうち外国人テンプルステイ専門寺院は約30ヶ寺。

テンプルステイの種類

日帰り型 : わずかな時間でも外国人が韓国の仏教文化を体験(寺院案内、坐禅、茶道体験など)できるように構成されたプログラム

体験型 : 寺院や季節、参加者の特性に応じて体験できるプログラム(寺院礼節や百八拝、燃灯作りなど)

休息型 : 寺院に滞在して疲れた心と体を休ませるプログラムで、決められた寺院礼節、寺院案内、礼仏と供養以外の時間は自由に過ごすことができる。

テンプルステイ公式 HP

http://webzine.templestay.com

*この記事は、日本のKOREA.net名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。

hjkoh@korea.kr