[文・写真=吉岡香織]
2025年は、アジア太平洋戦争の終結から80年、1965年の日韓基本条約が締結から60年にあたります。そんな今年の8月23日、韓国の李在明大統領が来日し、石破茂首相と会談しました。
私はちょうどその当日は日本にいなかったのですが、韓国が大好きな日本人のひとりとして注目しており、新聞報道などを見ていました。
・「話し合える環境」を今後も大切にしていく
外務省のプレスリリースの他、いくつか新聞報道などをみていて私が感じたのは、今後、話し合っていける環境をつくるための、はじまりのはじまり、となったのではないかという点です。
今回は踏み込んだ話は行われなかったようですが、私が着目している一つの大きな問題として、両国の間には過去の日本の植民地支配による問題があります。被害者側は、きちんとした反省と謝罪、賠償などを求め、戦後80年が経ち高齢となったいまでも声を上げ続けています。どのような社会問題であれ、本来であればそこに寄りそうかたちでなければならないと思いますが、残念ながら、それを口実として悲しい争いが続いてきました。問題を解決していくためには対話をすることが大切ですが、特にここ数年はそれをできるような状況ではなかったように思います。
しかし今回、両国の首脳が対話をする場が設けられました。共同文書の公表は17年ぶりとのことです。(私は外交の研究者ではないので会談が開かれた経緯や背景について分析や言及はできませんが)これをきっかけに、今後はさまざまな問題について「対話」ができ、解決へと導けるような関係へと深まっていくことを願っています。
日本外務省:日韓首脳会談の結果に関するプレスリリース(2025年8月23日、東京)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100893690.pdf
・「未来志向」の意味を活かす
韓国でもそうですが、日本の報道でも「未来志向」という言葉が頻繁に登場しています。この言葉の意味は報道する社によって随分と捉え方が違うようです。
両国の関係が良くなるのは、こんなに喜ばしいことはありません。しかし、歴史の中で起きてきた事実を歪曲したりなかったことにしてしまって、被害者を置き去りにし、未来を生きる人たちだけが仲良く生きていける関係を築いていこうという意味にしてはいけないと思います。これは日本側がより努力が必要な部分であり、加害の歴史を認めるというのは勇気が必要かもしれません。でも今回の対話が始まりとなり、もっとも難しいこの問題も少しずつでも進展していき、未来志向の意味が「心あるもの」になっていってほしいなと思います。
日韓首脳会談を報じた日本の新聞