[文・写真=田尾秀子]
毎日一日に3個食べると、一生老いることがないと言われているなつめ(棗)。そのなつめを、韓国では生産第一位の慶尚北道の慶山で収穫体験をしました。
なつめといえば、乾燥したものが参鶏湯や宮中料理、韓菓に入ってるのを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。日本では生のなつめは殆ど流通していません。一部の地域で見かけることもありますが、その数も年々減っているそうです。乾燥したなつめにしても、まず和食で使用されることはなく、生薬や薬膳料理、薬膳茶などの材料として使用されるくらいです。一方韓国では、秋になると生のなつめがスーパーや市場の店先に並び、まさに秋の定番果物といっても過言ではないくらいです。また、乾燥なつめになると冠婚葬祭や韓薬などには欠かせない存在です。このように様々な役目をするなつめの産地は、忠清北道 報恩郡、慶尚北道 慶山が有名です。特に慶山のなつめは、韓国の専門紙『農業人新聞(농업인신문)』によると、2024年時点で全国生産量の40%以上を占め、その品質は韓国髄一だそうです。
体験当日にはテレビ局の取材がありました
そして今回私が訪れたのは、慶山にあるヒーリングファーム(治癒農園)。慶山のなつめは、りんごなつめと言って、一般的ななつめの倍ほどの大きさで、例えていうなら姫りんご位の大きさです。農園を訪れた日はあいにくの雨模様でしたが、レインコートを着て、農園で支給された靴カバーを履いて、いざ収穫へ!まずは収穫の仕方を教わり、たわわに実ったなつめの中から大きすぎず、傷んでいない実を選んで採るのは意外に難しく感じました。収穫しながら食べてみると、りんごのようにサクッとした食感で、しっかり甘さも感じられてとても美味しかったです。収穫したなつめを入れるための保存袋を手渡されていたので、なつめを袋一杯にしたい気持ちとは逆に半分くらいしか採れず、収穫が終わってから農園の方に袋いっぱいにしていただいたのがとても嬉しくて満足しました。
日本では味わえない生のなつめを、収穫しながらの試食している様子
なつめの収穫体験の他にも、なつめヤッパプ(薬飯)作りや、カラタチ茶作りも体験しました。
なつめヤッパプについて
もち米、なつめ、栗、かぼちゃの種、ひまわりの種を材料に、醤油、なつめエキス、シナモン、黒糖、水を混ぜたものを加えて炊きます。炊き上がったら胡麻油を混ぜて仕上げます。もちもちした食感にほのかななつめの甘さとさまざまな味や食感がミックスされ、奥深く、ホッとするような優しい味わいでした。
なつめには神経を落ち着かせる効果があり、老化防止や美肌にも効果があると言われています。昔から西太后や楊貴妃も毎食食べていたと伝えられているほどです。
老化防止や美肌にも効果があると言われている、なつめヤッパプ
カラタチ茶について
カラタチ茶はスライスして種を取り除き、ガラス容器に同量の砂糖とともに入れて作ります。カラタチの実もなつめと同様に、日本では殆ど流通していません。私はカラタチの実を見たのも、手にしたのもこの時が初めてでした。実は種が多く果肉が少ないうえに、かなり酸味が強いので生食には向かないそうです。また、緑と黄色の実で効能が異なり、アトピー性皮膚炎や消化機能改善などの効果が期待されます。
体験の日に砂糖漬けにしたものを日本に持ち帰り、砂糖がすっかり溶けた頃に飲んでみました。思っていたより酸味は強くなく、甘さの中にほのかな苦みと独特な香りがあり、体に良さそうだと感じる味わいでした。
初めて見たカラタチは柚子のように見えました
今回の体験を通して、韓国では日常の中に溶け込んでいる果物でも、日本ではまだ知られていないものがたくさんあることを改めて感じました。そんな “ 身近な異文化 ” を、これからもひとつひとつ紹介していきたいと思いました。
*この記事は、日本のKOREA.net名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。
hjkoh@korea.kr