リチャード・クビトズキー
ドイツ・ジョゼフ・デュモント職業訓練校の教師
日本は、第二次世界大戦当時、朝鮮人が端島(軍艦島)に強制動員され、働かされた歴史を忘れている。ドイツでは、理解できないことだ。ドイツは「記憶文化」を通じて正しい歴史を次世代につないでいく取り組みをしつづけている。
6月15日から一般公開している、日本の産業遺産情報センター(以下、情報センター)の展示内容に、端島における強制動員被害者に関する内容が全くないということで、韓国では日本に対する批判が高まっている。
ドイツも第二次世界大戦当時、他国を侵略し、その国民を強制動員・労役させた。しかし、ドイツ政府は数年間にわたり、これらを次世代に留めようとして、被害国と協力しつづけている。
ドイツは、ナチス・ドイツの支配下で被害を受けた人々を様々な方法で追悼している。ユダヤ人や他民族への大量虐殺(ホロコースト)だけでなく、強制労働の被害を受けた人も対象としている。
2006年、ベルリンのトレプトウ=ケーペニック区にある強制収容所の内部からナチス・ドイツ時代の強制動員・労役状況を記録した書類を集めた施設が見つかった。残存する唯一の強制動員に関する施設である。
世界と明るい未来を構築するためには、歴史を正しく評価しなければならない。それにもかかわらず、日本は情報センターを通じ、歴史のほんの一部分だけを提供しているのだ。ドイツと違って、日本は強制動員問題に関する事実や状況などについて言及していない。
それは非常に憂慮すべきことだ。ドイツも最初は、強制労働者の苦しみを大した問題として捉えていなかった。被害者の多くは海外に住み、補償からも外された。しかし、ナチス政権下で行われたドイツ企業による強制労働被害者らへの補償を行うための「記憶・責任・未来」基金が2000年に設立されてから状況は変わった。基金は単に補償だけを目的とせず、過去を直視し迫害の記憶と責任を未来に引き継ぐ目的から「記憶・責任・未来」と命名された。ドイツ政府と約6000社のドイツ企業が参加し、予算を支援した。設立当初の予算は52億ユーロで、プロジェクトはその後も、利子収入により進行されている。
ドイツ政府や企業、社会は、ナチス政権での被害者全員を対象に、政治的・道徳的責任を果たしている。2000年の設立以来、約4000のプロジェクトが9770万ユーロの資金で推進されている。被害国の多くが基金の重役を引き受けており、具体的な和解を進めている。
しかし、日本政府の態度はドイツとは明らかに異なる。2018年、韓国の大法院は韓国人の元徴用工の個人賠償請求権を認め、新日鉄住金を相手に損害賠償を求めた。日本政府は韓国の大法院の判決を「断じて受け入れられない」と表明した。
欧州はどうだろう。欧州司法裁判所は長い間、加盟国(27カ国)に対し、同じく平等に法を適用している。高等法院は、ある国との利益を求めず、正義を実現するよう努めている。このような機関がアジアにもあったら、日本は強制動員問題から生じる法的問題を防ぐことができないだろう。
ドイツは、長い時間にかけて、過去における歴史的な責任に向き合った。このプロセスはいまだに続いている。これらの努力のおかげで、欧州各国と良い関係を築いてきた。そして、ドイツの人々はこれらの取り組みの重要性を考えるようになった。
情報センターは、歴史の事実を正確に展示しなければならない。当時の朝鮮人が日本で働いていたからといって、日本人と同じ待遇を受けられたとは言い難い。彼らは強制労働被害者だった。ドイツでは、国家が運営する機関で歴史を歪曲したものを展示する行為などは決して許されない。
リチャード・クビトズキー(Richard Kubitzki)は、2002年からドイツの職業訓練校で政治・生物・体育を教えている。同コラムは、フランクフルター・ルントシャウ(8月4日付け)のコラムを翻訳したものである。