2019年にソウルで行われたキムジャン祭り=聨合ニュース
ティム・アルパー
英国出身フードコラムニスト
キムチは、ここ数年の間に世界のシェフやグルメに注目されるフュージョン食材に浮上した。これはキムチが健康に良いだけでなく、キムチの持つ独特の辛味と、サクサクした気持ちの良い食感のおかげでもある。
韓国人以外の国のほとんどの人が「キムチ」と呼ぶのは、白菜キムチのことである。塩漬けした白菜と大根、ニンニク、唐辛子の粉、他にも様々な食材を加えて作る。キムチには抗酸化成分と抗がん効果のある植物性化学物質、体に有益な乳酸が多く含まれている。このため、急速に成長している健康食品業界でも、キムチは高く評価されている。
海外では、店でキムチを買うか、家で少量ずつ作って食べる人が多いが、韓国の伝統的なキムチ漬けは、それとはずいぶん異なる。「キムジャン」というこの方法は、「キムチを作って、分かち合う文化」を意味する。2013年には、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された。
キムチに少しでも興味のある人は、「11月になると韓国に行ってみて」と言われたことがあるだろう。もちろん、現在では新型コロナウイルスが終息してからの話である。11月は韓国でキムジャンが盛んに行われる時期である。この時期になると、白菜と大根をたくさん載せたトラックをよく見かける。
毎年恒例の特別行事
キムジャンの季節が近づくと、韓国人はキムジャンに必要な食材を大量に購入する。1年に1度だけの行事であるからだ。白菜の収穫ができない冬場の3~4カ月間食べるキムチを、あらかじめ一気に作っておく伝統が今でも続いているのだ。キムジャンは大規模な行事であり、家族全員だけでなく、近所の手助けも必要となる。
キムジャンは、2等分、または4等分に分けた白菜を塩漬けすることから始まる。塩漬けする理由は、キムチが腐敗しないようにするためである。塩漬けすることで、時間が経つにつれ、もっとおいしくなるのである。
塩漬けした白菜を水切りして、生姜、ニンニク、千切りした大根、唐辛子の粉、にんじんなどを入れて赤いルビー色のヤンニョム(薬味)を用意する。風味を加えるため、イワシの魚醤やアミの塩辛などを入れることもある。最近は菜食主義者のための調理法も人気を集めている。
この方法以外にも、多くの人が自分ならではのキムチレシピを持っている。ある人は、甘さを加えるため、梨をすりおろして入れたり、抗酸化成分や辛味を加えるためにネギを入れたりもする。ネギは、西洋のリーキとは違う。ワケギや玉ねぎを入れてもかまわない。
キムチのヤンニョムを作る方法は、韓国人の数と同じくらい存在する。それぞれ特徴があり多様であるが、一つ共通点がある。食材の下ごしらえやそれを混ぜ合わせる過程は、全て手作業で行われ、この苦しい労働は長時間続くという点である。伝統的なキムジャンは、ミキサーを使ったり、スーパーマーケットから下ごしらえ済みの食材を買ったりはしない。
ヤンニョムが完成すると、白菜の外側の葉から一枚ずつヤンニョムを塗っていく。仕上げとして白菜の大きな葉(一番外側の葉)で巻くように包む。昔は、キムチをつぼに入れて、そのつぼを土の中に埋めておいた。しかし、最近はキムチ冷蔵庫にキムチを保管する。
絆の味