オピニオン

2024.04.02

1 Danish Ambassador Svend Olling
スヴェン・オリング(Svend Olling)駐韓デンマーク大使

私たちの努力は、十分であり、効果的だと言えるのか? どうすればより成果を上げることができるだろうか?

先月ソウルで開催された「第3回 民主主義首脳会議」への参加をきっかけに、世界民主主義の増進に向けて、韓国とデンマークにできることについて考えてみた。

最近、盛況裏に幕を閉じた首脳会議を通して、両国が共有する民主主義の価値を再確認することができた。一歩前進できたと言える。時宜にかなった土台作りができた。付帯行事と関連した日程も、進歩に向けた革新的な提案がたくさん出された。デンマークは、今回の首脳会議を通して、民主主義を一層増進させた韓国政府の努力に感謝の意を表わす。


デンマークは今回の首脳会議で、包容性と青年の力量を強化することにフォーカスを置いた。このような意志は、デンマークのメッテ・フレデリクセン(Mette Frederiksen)首相が、首脳会議3日目の本会議で「包容的社会と青年力量強化」というテーマで主宰した第1セッションにもよく表れている。いずれも両国の社会にとって重要な部分だ。

民主主義が形成される過程で、社会運動がどのような役割を果たしたのかを知る必要がある。両国は歴史的に、社会運動の役割が非常に重要だったという共通点がある。女性の労働権運動から気候変動の問題まで、社会運動の役割が大きかった。韓国の独立運動も社会を変える起爆剤として働いた良い例だ。デンマークと韓国には、民主主義における強みと柔軟性がある。権利と公正性を追求し、下から上へと声を挙げた。青年たちの主導で行われた変化も少なくなかった。

このようなテーマは、首脳会議の期間中に、2つのイベントでも議論された。一つ目は、「民衆の力:平和な民主的変化に向けた連合を構築」をテーマに、デンマーク外交部と救援機構の「アクションエイド・デンマーク」が主催した市民社会および青年の日という討論だ。草の根民主主義市民運動と民主主義の変化における平和的な促進の関係について意見が交わされた。

2つ目は、デンマークとオランダ、ウィキメディア財団が共同で主催した「民主主義と人権強化に向けたオンライン情報清廉保護」というテーマの討論だ。民主主義の基本になるのは信頼と接近性、多様性と主体性、そして最も重要な要素である選挙だ。そして、このような要素を土台に、より健康な情報生態系の構築に向けて私たちにできる努力を考えてみた。デンマークは、政府間連合体である「オンライン自由連帯(FOC)」と共同で主催した。韓国政府も昨年、FOCに加入しており、両国はこの分野でも同じ船に乗っている。

成果を出すための両国の協業について論じるためには、まず技術分野から見なければならない。この分野には、多くのチャンスと課題があるからだ。デンマークは、最近発表した「テック外交戦略」で技術のイノベーションが各国の未来社会を構築するにおいて、どれほど重要なのかを明らかにした。

人工知能から量子技術に至るまで、先端技術には社会の発展を加速化し、人権を支持できる力が秘められている。しかし、これらの技術はフェイクニュースの拡散など民主主義の根幹を傷つける重大な問題を引き起こした。人類はこのような新技術をどのように受け入れて利用し、個人の健康や安全、そして社会の普遍的な福祉に及ぼす影響をコントロールできるかについて悩んできた。しかし、このような規制に関する努力は、世界中の企業が発展するスピードに追いついていないのが現実だ。

デンマークの目標は、欧州がこの分野で先駆者として位置づけられることだ。このような戦略を通じて、技術におけるイノベーションが、私たちの未来にどれほど重要なのかを強調したい。そして、規制およびイノベーションを先導することで、ヨーロッパ内での技術企業との協力を促したい。デンマークのラスムセン外相も、「欧州は規律を確立しなければならない。また、技術の発展も主導しなければならない」と述べた。

昨年の夏に開かれた「民主主義首脳会議」でFOCは、オンライン情報の完全性と選挙に関する共同声明を発表した。デンマークは、情報の完全性を専門に担当する組織の共同議長を引き受けた。この声明は、世界人権宣言を基に、デジタル時代に表現の自由を擁護することが、どれほど重要なのかを訴えることになった。開放性、自由、包容性を土台にした公共の場での討論が、民主主義に必須だということも再確認した。また、選挙に関連して、オンラインで情報の完全性を保障することがどれほど複雑な問題なのかもわかった。

意識のある市民が乗り出し、デジタル未来の構想に関心を持たなければならない。技術が恩恵をもたらすという点も明確にする必要がある。デジタル時代の中で、デンマークと韓国は立場が似ている。オンラインとオフラインで人権や包容的な民主主義社会を実現するために、尽くしてくれることを願う。韓国で開かれた「第3次 民主主義首脳会議」を土台に、両国が包容的かつ安全であり、みんなにとって民主的な未来を構築できるようにしたい。両者および多国間で協力ができることを心から願う。

スヴェン・オリング大使は2023年5月に、駐韓デンマーク大使に任命された。