520年の歴史を持つウィーン少年合唱団は、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立オペラ団とともにウィーン宮廷楽団の名声をそのまま受け継いでいる。その合唱団初の女性、そして東洋人の指揮者が誕生した。韓国人のキム・ボミさん(36)だ。
ウィーン国立音楽大学の博士課程を履修中の彼女は、ウィーン少年合唱団のハイドン、モーツアルト、ブルックナー、シューベルトの4チームの中のモーツアルトチームの指揮者として活動している。2012年9月に指揮者に任命された彼女は、1月から始まる合唱団初の韓国巡回公演への期待に胸を弾ませている。
ウィーン少年合唱団の指揮者のキムさん(写真提供:クレディア)
彼女は、「嬉しい反面、プレッシャーも大きい。子どもたちは先生の母国に行けると喜んでいる。厳しく困難なツアーの中でも、音楽が好きで歌を歌う子どもたちの目の輝きに感動してもらえるなら、それ以上に嬉しいことはない」と語った。
ウィーン少年合唱団は、1月18・19日のソウルの芸術の殿堂での公演を皮切りに、九里アートホール(17日)や高陽アラムヌリ(21日)、大邱オペラハウス(23日)などで歌声を披露する。
彼女は、「1部は中世の教会音楽とクラシック音楽、2部は明るく軽快なシュトラウスのワルツで締めくくる構成にした。 私の好きな教会音楽やアイルランドの“ダニー・ボーイ”など世界各国の民謡、韓国人の好きな“サウンドオブミュージック”と“アリラン”、ドイツの歌曲“野ばら”といった選曲になっている」と説明した。
指揮者に抜擢された理由
彼女は延世大学音楽部合唱指揮学科を卒業した後にドイツに渡り、レーゲンスブルクで教会音楽を専攻した。その後、ウィーン国立音楽大学で合唱指揮、声楽、グレゴリ音楽学の修士号を取得し、現在はグレゴリアン音楽学の博士課程の3学期を履修中だ。
ウィーン少年合唱団員と一緒に記念写真を撮るキムさん(写真提供:クレディア)
彼女は、どうしてウィーン少年合唱団の指揮者に抜擢されたのかという質問に、どう説明したら良いかわからないと答えた。ウィーン少年合唱団の指揮者オーデションは、実技試験と面接の他にも音楽監督との面談や2~3週間にわたるサマーキャンプでの合唱団員の子どもたちの指導などとても複雑だ。指揮者としての心構えはできているのか、練習する過程で子どもたちと一緒に生活し、うまく溶け込めるかをテストするのだ。当時のサマーキャンプに彼女の他に2人の候補が参加していたことを後で知ったという。
彼女は、「サマーキャンプに参加した子どもが、私の他に2人の候補がいることを教えてくれた。その子は、女性の先生は初めてで、一番上手に教えてくれる私が先生に決まればいいと言ってくれた」と話した。
サマーキャンプが終わり、9月にウィーンで新入生の子どもたちと約2週間ほど一緒に生活した後に契約が交わされた。
彼女は自分が選ばれた理由について、「たくさんの要素がある。恐らく音楽監督が子どもたちに聞いたと思う。子どもたちの意見が大きく影響したと思う。音楽的なこともそうだが、子どもたちと気が合ったようだ」と説明した。
彼女は、「25人を指導する指揮者、先生として私自身が子どもたちに尊敬される人にならなければならないという心構えで子どもたちに接していきたい」と話した。
ウィーン少年合唱団を指揮するキムさん(写真提供:クレディア)
音楽家になりたいという幼い頃からの夢
彼女は幼い頃から聖堂でオルガン演奏と合唱団の指揮をしながら音楽家になりたいという夢を抱いていた。しかし、彼女の両親がプロの音楽家になることに反対したため、大学ではホテル経営学を専攻する。だが、大学でグループサウンズに加わって演奏し、音楽活動をしているうちに、自分が本当にしたいことは教会音楽と合唱音楽であることを悟る。そして、中退することを決心し、再び大学の入学試験を受け、1998年に延世大学音楽学部合唱指揮学科に入学した。
彼女は、「幼い頃から周りの人たちとアンサンブルをし、グループで一緒に作業することが好きだった。聖堂で伴奏をし、ミサの曲を指揮しながら、みんなで一緒に音楽をすることの楽しさを知った」と話した。また、「ドイツで学んでいるときも、ウィーン少年合唱団で指揮をするときも辛いと思ったことはない。これまで積み重ねてきた努力がなければ、今の自分はないと思う。そして、自分の好きなことだからその一瞬一瞬を楽しんできた」と話した。
これからの抱負はと聞かれ、彼女は「ウィーン少年合唱団で指揮することも自分の計画にはなかった。ただ一日一日を懸命に過ごしていくことしか考えていない」と答えた。
ウィーン少年合唱団と一緒に記念写真を撮るキムさん(写真提供:クレディア)
コリアネット イム・ジェオン(林在彦)記者
jun2@korea.kr