ソウルの地下鉄の魅力にすっかりとりつかれた米国人がいる。ソウル出身の人よりもソウルの所々に秘められた歴史と隠れた名所に詳しく、一番好きな街は「ソウルで最も不思議な街」東大門というチャーリー・アッシャー(Charlie Usher)さんとリズ・グレッセン(Elizabeth Ardel Groeshn)さんだ。二人が綴ったソウルの駅の探訪記「チャーリーとリズのソウル地下鉄旅行記」が先日出版され、注目を集めている。アッシャーさんがコメントを書き、グレッセンさんが写真の撮影・編集を担当した。
2005年から韓国に住み始めたというアッシャーさんは、再び韓国を訪れた2009年にソウルの地下鉄の便利さと充実したシステムに魅了された。それ以来ソウルの街をもっと深く知ろうと、カメラマンのグレッセンさんとブログ(http://seoulsuburban.com/)にソウルの駅の探訪記を掲載し、毎週ソウルの駅を探訪している。アッシャーさんは、ソウルのすべての駅に行ったこともなく、これから行くつもりもないという。それでも二人が足を運んだソウルの駅は約140にも上る。
カメラマンのグレッセンさんとともにソウルの地下鉄旅行記を出版したアッシャーさん(写真:チョン・ハン記者)
個人的な小さな関心から始まったアッシャーさんのブログ・プロジェクトは、好評を得て読者が増え始め、徐々に規模が拡大している。各駅それぞれ多少の違いはあるが、7号線論峴駅や5号線西大門駅のように周辺に多様な見どころと深い歴史のある駅には4回も足を運んでいる。
ソウルの駅とその周辺地域の歴史や環境に注目して本を出版したアッシャーさん(写真:チョン・ハン記者)
彼は、地下鉄3号線独立門駅の西大門刑務所にまつわる悲しい歴史と3号線東大入口駅近隣の奨忠壇公園にまつわる日本による植民統治期前後の韓国史について詳細に綴った。アッシャーさんとグレッセンさんは、3号線蚕院駅近隣の川沿いを歩いていて蚕体験学習場を見つけたり、3号線と4号線の乗換駅の忠武路駅周辺でベテラン俳優のイ・ギロクさんに偶然会ってインタビューしたりするなど、旅でしか味わえない偶然の驚きと楽しさ、各駅に秘められた過去と現在の対照的な美しさを何度となく見つけた。
アッシャーさんは、ソウルの地下鉄は便利で魅力にあふれているという(写真:チョン・ハン記者)
アッシャーさんは、「人間関係も努力した分だけ発展するように、同じ場所でも関心を持って眺めていると何か違う新しものに見えてくる」と、彼の地下鉄巡りにかける熱意とソウルへの愛情を表現した。コリアネットは、アッシャーさんにソウル地下鉄巡りについて聞いた。
アッシャーさんは、ソウルの地下鉄そのものが好きだという(写真:チョン・ハン記者)
- 韓国の地下鉄の探訪記を書こうと思った動機は。
もともとはブログにコメントを書こうという小さなアイデアだった。出版した本は、私のブログのコメントを編集したものだ。ブログを始めたきっかけは、ソウルという街をもっと深く知りたかったからだ。私とリズは、本を通して共通の関心事をもっと深く理解しようと思った。自分たちが暮らす地域と近所の人々など見慣れたものを別の角度から見られるように、開放的にアプローチすることでもっと深く知ろうと思った。
- 韓国に来ようと思ったきっかけは。
2005年に初めて韓国に来た。それ以前から外国で暮らしてみたいと思っていた。ちょうど私が通っていた大学と京幾道との間に交換学生プログラムがあり、私の大学の学生が京幾道の大学で英語を教え、京幾道地域の公立学校の教師らが私の大学で英語や教育学の講義を受けることになった。そのときに韓国に来た。韓国は初めてだったが、アジアの他の国で暮らしたことがあったので、韓国も大丈夫だろうと思った。
2009年に再び韓国に来たのは、就職先を見つけるためだった。旅行のための資金が必要だったし、また韓国で暮らしたいという気持ちもあった。当時の米国は、経済状況が非常に悪かった。私は米国にいる友人よりもソウルにいる友人のほうが多い。韓国での暮らしがとても楽しかったので、また韓国で暮らすことにした。
- 一番おすすめのソウルの駅と周辺の街は。その理由は。魅力のある駅はたくさんある。その中でも特におすすめなのは東大門駅だ。近隣の市場と周辺の路地を見ていると、ソウルという街のかつての姿と新しい姿を同時に見ることができる。まるで社会で繰り広げられてきたすべての側面が積み重なってこの街のすべてを表しているようだ。
他にも、新堂駅近隣の中央市場と蚤の市、古い店舗も見ものだ。蚤の市はかなり規模が大きく、鍛冶屋もあり、他では見られない風景だと思う。
天気が良い日は、漢城大学駅で降りて城北洞をぜひ見てほしい。城北洞周辺は、とても閑静で素敵なカフェが多い。まだ工場が残り、芸術家たちの素敵なアトリエの多い文来駅も魅力的だ。上水駅と合井駅の周辺もおすすめだ。そこは、かつてホンデ通りの一部だったが、現在はそうではない。
- ソウルの地下鉄の魅力とは。
ソウルの地下鉄のシステムそのものが好きだ。私は米ウィスコンシン州出身だが、高校に入学するまでは公共交通機関やバスがあることも知らなかった。環境的にも公共交通を利用するのは望ましいことだ。ソウルの地下鉄のシステムは素晴らしい。路線が多く、とても便利で、料金が手頃だ。地下鉄でいろいろな場所に行くことができる。ソウルの地下鉄のシステムは最高レベルだ。
ソウルの街の中で一番住みたい場所は。
延南洞に住みたい。そこは弘大や新村にも近い。実際、そこにしばらく住んでいたこともあった。延南洞はかなり静かで住みやすい。興味のあるレストランや素敵なカフェもある。周辺に中国人や他のアジア系住民も住んでおり、立派な中華料理専門店もある。私がソウルで最高だと思うタイのレストランとカフェもある。
- ここが不便だとか、ここは直したほうが良いという点は。
延南洞に住みたい。そこは弘大や新村にも近い。実際、そこにしばらく住んでいたこともあった。延南洞はかなり静かで住みやすい。興味のあるレストランや素敵なカフェもある。周辺に中国人や他のアジア系住民も住んでおり、立派な中華料理専門店もある。私がソウルで最高だと思うタイのレストランとカフェもある。
- 韓国とソウルの歴史についてよく知っているようだ。そうした情報や歴史に関する内容はどこで知ったのか。
行く駅を決めたら、訪問する前に簡単に調べてから行くようにしている。グーグルで検索したり、ガイドブックなどを参考にしたりしている。そこに行ったら、周辺の通りや地域を紹介するブローシャーや案内板などを参考にしている。一度足を運んでみることが覚えることであり、そこに行ったら活用できる情報は最大限に活用している。
- 地下鉄巡りをするときや旅行記の制作で苦労したことと一番良かったことは。
苦労したことは特にない。もちろん、多少の言葉の問題はあった。また、目的の駅に着いたら、その駅が工事中だったり、一時的に通行禁止だったりして、入ることができずに引き返したことがあった。でも、それ以上の大きな問題はなかった。地下鉄旅行記を制作する過程で出会った韓国人の中には恥ずかしがる人も一部いたが、ほとんどの人は協力的だった。多くの人が積極的に話に応じ、協力してくれた。カメラマンのリズは、多くの人が顔を撮られるのを嫌がり、後向きの写真を撮るしかないときが多かった。
- ユニークで一番記憶に残っている駅とその周辺の街は。
難しい質問だ。どの駅もユニークで全部記憶に残っている。敢えて挙げるなら蚕院駅だ。その駅は、駅のある場所をはじめすべてがユニークだ。大通りの十字路に位置し、他の駅とは違って周辺の小さな花壇の中に駅がある。周辺は静かで多くの木が立っており、まるで公園のようだ。文来駅も周辺に工場や画家のアトリエなどがあり、とてもユニークだ。
このプロジェクトを通して一つ学んだのは、駅ごとにそれぞれ違う方法で駅とその周辺が調和していることだ。このプロジェクトを開始する前は、自分たちもあまり知らないことだし、数カ月後には飽きてやめるだろうと思っていた。でも、いざ始めてみたら、自分たちでも全く予想しなかった大きな多様性を発見した。例えば、阿峴駅周辺の通りを歩いていたら偶然に韓国正教会があるのを発見した。予想もしなかった発見に大きな驚きを感じた。
- 海外にいる友人がソウルに初めて来たら、最初にまず案内したい場所は。
韓国が初めてなら、まず景福宮と仁寺洞と東大門を見物させた後に広蔵市場でピンデトックやマッコリなどを味わわせたい。それから、城北洞に行きたい。そして、緑莎坪駅で降りて梨泰院を見物し、私が一番好きなマッコリやビールが飲める居酒屋に連れて行きたい。それから、私が一番好きなソウル歴史博物館に行き、夜はホンデ(弘益大学)を見物させたい。それから、新堂駅で降りて中央市場と蚤の市を見物させたい。
- 韓国の中でソウル以外に気に入っている場所は。
まず全州市を挙げたい。韓屋村と周辺の書院が素敵で、料理も素晴らしい。釜山市も魅力的だ。ソウルとは違う活気に満ちた雰囲気がある。去年の夏に行った海南郡は、とても静かで、島や海岸など周辺の景色が美しかった。
- 韓国について書くとしたら、何をテーマにしたいか。
ソウルがどれだけ様変わりし、どのような過程を経て変化してきたかについて書きたい。ソウルはまだアイデンティティが定まっていないと思う。もちろん、ソウルはこの50~60年間で大規模開発などを通じて大きな変化を遂げた。その後、パラダイムシフトによってデザインに焦点を合わせ、もっと活気あふれる街づくりを目指している。ソウルは国と国民を反映してこれからどうすべきか悩んでいると思う。私はそうした変化に関心がある。もちろん、他にも料理や文化、街の芸術など書きたい要素はたくさんある。
コリアネット ユン・ソジョン記者
arete@korea.kr