国際社会における韓国の役割や威信が変化するにつれ、国際協力に対する責任も大きくなっている。「援助」という名の下で新しい市場を開拓するだけでなく、韓国の発展経験を活かして相手国の発展に貢献するという大義名分に至るまで、各分野の専門家の間で国際協力に対する関心が高まっている。
セブランス病院国際診療センターのイン・ヨハン(韓国名、本名:John Linton)所長もそのうちの1人だ。韓国国際保健医療財団(以下、KOFIH)の総裁として韓国と全世界の保健医療協力のために努めるイン所長は、5月にあった朴槿恵(パク・クネ)大統領のアフリカ3国歴訪のスケジュールにも同行し、韓・アフリカ国家間の保健医療協力の現場にいた。

7日、セブランス病院で会ったイン・ヨハン所長は保健医療分野の国際協力の方向性について「最高のシステムを作り、それを真似させることが持続可能な援助だ」と強調した
「25年前に私が自分で設計した救急車があります。今回、アフリカに行ってみたところ『コリア・エイド』にその救急車が使われていたんです。当時、国内に5千台が普及されたのですが…アジア通貨危機の際に会社が変わってしまったので、その後のことは知りませんでした。『イン・ヨハン作詞/作曲の救急車』が『コリア・エイド』に使われているのを見て誇らしく思えました。私が設計したものとは少し違いましたが…」
「コリア・エイド(Korea Aid)」とは、アフリカの医療へのアクセス性に欠ける地域の住民を訪問し食べ物・保健・文化などのサービスを提供する移動型援助事業のこと。朴大統領のアフリカ3国歴訪の際に発足式が行われたこの事業のメインとなるのは移動型の医療サービスだ。
「政府が『コリア・エイド』のテーマを『少女たちのための暮らし』に決めたのは、素晴らしい判断だったと思います。幼い女の子たちから教育することで、後にそれが自然な形で夫へ、子供たちへと伝わるのです」。韓国が発展を成し遂げた原動力の1つは「母の力」と主張し母子保健を強調するイン所長はこう話す。
韓国の国民健康保険公団、健康保険審査評価院(以下、審評院)とケニアの国家病院保険基金との間で結ばれた業務協定についてイン所長は「現在、ケニアの健康保険加入者数は人口全体の7%程度です。1980年代の韓国と似た水準です。あと、ケニア側が審評院に関心を示しました。今、ケニアでは審評院制度がないのですが、健康保険制度もこのように二元化すれば権力の乱用や不正も防ぐことができるので、これは必要だと思ったようです。ケニアでは始まったばかりの段階ですが、韓国は全過程を経て今や健康保険加入者が99.9%ですから、色々と教えてあげられます」とケニアの健康保険状況が過去の韓国と似ている点が大きく影響したと語る。

移動型の複合援助事業「コリア・エイド」に使われた車が、過去に自分が設計したものだと知って誇らしく思ったと語るイン所長
アフリカ諸国との協力におけるフォローアップについては「ウガンダ、ケニアに『モバイル・ヘルス』、つまり移動型の診療が導入されましたが、本当に持続的な支援がしたいなら1年中医師を派遣しメンターリングをする必要があります。単にその国の健康問題を解決するのではなく、最高のシステムを作り、それを真似させることこそ持続可能な援助なのです」と強調した。
これと関連して、イン所長は麟蹄(インジェ)大学の白(ペク)病院応急医学科所属のキム・フン教授の話を切り出した。「麟蹄大学応急医学課にキム・フン教授という方がいらっしゃるのですが、キム教授が数年前にスリランカに行って病院の電算化作業を始めたんです。患者記録システム、カルテ電算化、薬局処方の電算化など、どれもとても基本的なものです。2年前にこのシステムを完成させたのですが、スリランカ政府がこれを300の病院に普及させると言ったそうです。大韓民国万歳!」。これに付け加え、イン所長は持続可能な援助を成功に導くカギは「低コスト、高効率」だと話した。
イン所長の国際保健協力に対する情熱は凄まじいものだった。KOFIH総裁として全世界を飛び回ることで、適用可能な協力アイテムに関するアイディアも得ているようだった。
「バングラデシュで母子保健事業のアイディアを1つもらって来ました。現地のNGOで使っている出産パッドがあるんですが、出産の際にこのパッドを敷いて分泌物がパッドから溢れたら危ないと考える基準にしているのです。出産の際は出血量が生死の分け目となる重要な判断基準なのですが、これは医者にも判断が難しいのです。素晴らしいアイディアだと思います。持ち帰った2つのパッドを韓国でも評価中です。検討を経て全世界に普及させる予定です」

イン所長は、韓国の援助事業が世界各国で高い評価を得ているのは頭ではなく胸に響く「韓国の情」が理由だと語る
「援助される側」から「援助する側」になったという言葉は、過去半世紀の韓国の状況をよく表している。韓国の急速な成長・発展の経験を共有することで韓国はプライドを、相手国はモチベーションを高めることができると言われる。しかしイン所長は、何よりも大きな韓国の強みは「植民地根性がない」点だという。
「5年前、韓国国際協力団(KOICA)とペルーを訪れたのですが、当時の駐ペルー大使が『我が国の1%の援助が、先進国の50%だ』と言っていました。いくらなんでも、それは言い過ぎだろうと思いました。次の日、リマのスラム街を訪れました。そこにはKOICAの建てた立派な保健支所がありました。現地人が発表をしたのですが、2006年まではKOICAの医療センターで年に3千人の患者を受けていたそうです。1日10人です。それがKOICAが保健支所を建てて以来、9万人にまで増えたといいます。追加の設立を要請してリマ市などの支援を受けさらに3つが建てられました。これこそが持続可能な援助です。ところで、どうやって成功できたのか。私は科学者ですから、分析をしてみました。韓国人は一度たりとも外国を侵略したことがない。韓国人は全エネルギーをけん制に使います。しかし、驚いたことに他の民族との交流には非常に優れています。頭でなく胸を響かせる民族なのです。なぜそうなれたか。それは植民地根性がないからでしょう。人間には感情というものがあります。いくら助けてもらっても気持ちが込められてなければ感謝も生まれないですし、感謝の気持ちがなければ助ける気にもなれません」
インタビューに応じてくれたイン所長は次のような言葉で話を結んだ。
「他人を助けることは、自分を助けることです。他人を助けることは、自分の人生を変えることなのです」。
コリアネット チャン・ヨジョン記者
写真:コリアネット チョン・ハン記者
翻訳:イ・ジンヒョン
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