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2021.10.11

文化財修復技術者の金珉中さん=7月13日、ソウル、キム・シュンジュ撮影


[ソウル=ソ・エヨン、キム・ウニョン]

フランス・パリのルーヴル美術館で「ブルボン王朝の歴史」展が5月から9月まで開かれた。ロココ期のフランスの画家、ジャン・オノレ・フラゴナール(1732~1806)とアニセト・チャールズ・ガブリエル・ルモニエ(1743~1824)が描いたブルボン王朝18人の肖像画を展示。

約1年間にわたる保存修復作業を終え、一般公開が行われた。「紙」は文化財の修復作業に欠かせない存在。欠失部分に紙で補填が施される。


今回、補修紙として使われたのは、韓国で1千年以上にわたって使われてきた「韓紙(ハンジ)」。コウゾなどを原料に伝統の技法で作られるのが特徴。

今回の修復を手がけたのは、文化財修復技術者の金珉中(キム・ミンジュン)さんだった。パリで航空宇宙工学を専攻していたが、歴史学者の朴炳善(パク・ビョンソン、1923~2011)さんとの出会いで人生が大きく変わった。朴さんは、世界最古の金属活字本、仏教書「直指心体要節」(直指)を発見した人物。直指は2001年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」(世界記憶遺産)に登録された。金さんは、朴さんの作業を手伝いながら、専攻を美術品保存修復学科に変えた。

ルーヴル美術館を訪問し、韓紙で修復したマクシミリアン2世(18世紀)の机を観覧した金正淑・文在寅大統領夫人(左から3番目)とフランス大統領エマニュエル・マクロンのブリジット夫人(左から4番目)=2018年10月、スランス・パリ、青瓦台フェイスブック


ルーヴル美術館の関係者は、韓中日の伝統紙を比較する金さんの論文を読み、韓紙の優秀性に気付いた。論文によると、韓紙は、收縮と変形が少なくて保存修復作業に最適である。ルーヴル美術館は2017年に韓紙を使用し、「バイエルン・マクシミリアン2世の机」の引き出しの傷んだ鍵の部分を修復した。それ以前までは、和紙を使用していた。

金さんは、韓紙について「高品質で耐久性がある」とし、「補修紙として高評価を得た」という。

そして、「縦横の繊維が交差しているため、強度が高くて修復に最適だ」とし、「ルーヴル美術館をはじめ、韓紙を文化財の保存修復作業に使う所が増えていくだろう」と説明した。

ルーヴル美術館で文化財の修復作業を手がけている金珉中さん=フランス・パリ、本人提供


金さんは、韓国とフランスを行き来しながら、文化財の修復作業に取り組んでいる。ルーヴル・アブダビ(ルーヴル美術館の姉妹館)で来年4月開催予定の「世界における紙の歴史」展に参加し、韓紙の優秀性と魅力を発信する。

今後の目標について「韓紙を材料とする文化財の修復作業をシステム化したい」とし、「人材育成に取り組んでいきたい」と意気込んだ。


xuaiy@korea.kr