ひと

2023.08.18

ウェブトゥーン作家のマンチ作家が描いたキャラクター=マンチ

ウェブトゥーン作家のマンチ作家が描いたキャラクター=マンチ



[オ・グムファ]

「匂いは嗅ぐものではなく、見るもの」というアイデアはどのようにして思いついたのだろうか。漫醉(マンチ)作家の作品「匂いを見る少女」は、「匂いを視覚的に捉える」能力を持つ少女が、事件の真相を暴こうと奔走するストーリーのウェブトゥーン(デジタルコミック)だ。

特殊な能力を持つ人物たちが登場するファンタジー作品「モンジュぺ」で、2009年にウェブトゥーンを描き始めたマンチ作家は2013年7月23日から2016年6月28日まで約3年間連載した「匂いを見る少女」で一躍、人気作家となった。ウェブトゥーンの連載が始まって間もなく総再生回数1000万を超えるなど大ブレイクし、ドラマ化も決まった。原作は海外でも英語、日本語、中国語、タイ語、インドネシア語、スペイン語、フランス語、ドイツ語など8カ国語で翻訳された。「匂いを見る少女」が完結してからは、2020年に「ロッカー&オープナー」などのシナリオ作家としても活躍した。マンチ作家の以前の作品と同じく、特殊な能力を持つ人物たちが登場し、追いつ追われのファンタジーバトル物語だ。

斬新なアイデアと無駄のないストーリー。マンチ作家の作品は、マンチ作家にしか出せない個性にあふれている。 子供のころから漫画家を夢見ていたマンチ作家は、「ウェブトゥーンは、心弾むようなストーリーが、現実になるのではという期待を持たせてくれる」と語った。 コリアネットは、そんなマンチ作家と書面インタビューを行った。

- 「モンジュペ」、「匂いを見る少女」、「ロッカー&オープナー」の登場人物はみんな特殊な能力を持っているという共通点がある。

特殊な能力を持つ人物が、現代社会を生き抜いていくストーリーに興味がある。いろいろなジャンルの作品にチャレンジしてみたけれど、ストーリーはともかくセリフすらも思い浮かばなかった。キャラのアイデアは人間以外のものから得るタイプだ。例えば、「モンジュぺ」の主人公の場合、シャーペンで床に絵を描くと、その絵が柱のように浮かび上がってくる不思議な能力を持っている。このアイデアは当時はやっていた3Dプログラムの「スケッチアップ」を見て思いついた。3Dの柱が浮かび上がってくるのを見た瞬間、「あ!これを主人公の能力にすれば」と思った。

マンチ作家が2013年7月から2016年6月まで連載した「匂いを見る少女」のワンシーン=マンチ

マンチ作家が2013年7月から2016年6月まで連載した「匂いを見る少女」のワンシーン=マンチ



- 「匂いを見る少女」の主人公、ユン・セアが匂いを見られるというコンセプトが独特だ。どうやってアイデアを思いついたのか。

当時、ネイバーのウェブトゥーンで人気を集めたモーショングラフィックスの作品が一つのきっかけになった。そこから、今までのウェブトゥーンにはなかった「感覚」に対する新しいアプローチの方法を思いつき、「匂いが目に見える」としたら、どうだろうかというアイデアにたどり着いた。そして、この能力を生かすために、捜査活動を軸に展開するジャンルを選んだ。

- 「匂いを見る少女」は読者からの反響が良く、3年間連載された。長く続くストーリーを作っていくうえで、最も力を入れた部分は?

捜査ものを週2回のペースで連載するのは、かなりハードだった。朝から晩まで休む間もなく作業していた(笑)。読者たちが作品を楽しむスピードについていくには、毎回新しいエピソードを考えなければならなかった。匂いの表現をできるだけリアルにするために、直接匂いを嗅ぎながらセリフを書いた。作品の専門性を保ちつつ、ストーリーを妨げないように、毎回作品の最後に匂いに関する情報を入れておいた。捜査ものではあるが、「匂いを見る」という設定から外れないように心がけていた。

- 作品が海外でも翻訳された。「匂いを見る少女」の場合、中国のリピーターが特に多いといわれるほど大反響を呼んだ。 

独特なストーリが一番の魅力のようだ。匂いは消えるものなので、確実な証拠にはならないという設定が、ストーリ全般において緊張感をもたらし、ミステリアスな雰囲気を作り上げたのだと思う。「匂いを見る少女」には、主人公顔負けの存在感あふれるキャラがたくさんいたおかげで、読者の皆さんも最終回まで作品を楽しめたのだと思う。

2015年4月1日から5月21日まで放映されたSBSのドラマ「匂いを見る少女」の主人公とマンチ作家が描いたイラスト=SBS公式フェイスブック

2015年4月1日から5月21日まで放映されたSBSのドラマ「匂いを見る少女」の主人公とマンチ作家が描いたイラスト=SBS公式フェイスブック



- SBSのドラマ「匂いを見る少女」の原作を描いた作家として、ウェブトゥーンとドラマの違いは何だと思うか。

ドラマは40分という決められた時間内に、すべてのストーリーをまとめて映像に納めなければならない。これはウェブトゥーンとは全く異なる作業だ。脚色についての認識を新たにするきっかけにもなった。ウェブトゥーンはドラマとは違って、より自由度の高い演出が可能だ。カットの分量を自由に調整し、必要に応じて場面を強調したり飛ばしたりできる。どう演出するかについて、頭を悩ませることもあったが、私はその過程を結構楽しんでいた(笑)。

- 「匂いを見る少女」の連載が終わってからは、「ロッカー&オープナー」のシナリオ作家を担当した。コリアネットの読者にシナリオ作家の役割について説明をお願いします。

シナリオ作家は作品の「ストーリー」と「絵コンテ」を作る。演出と表情の設計図、つまり「絵コンテ」を作って、絵作家に渡すのがシナリオ作家の役割だ。これとは逆に、絵作家は髪の毛の一本一本まですべてを細かく描く作業であり、かなりの時間がかかる。

- 先生は、韓国著作権保護院が取り組んでいる「ウェブトゥーン著作権保護共同キャンペーン」に参加したが、ウェブトゥーンの作家として、著作権に関して読者へお願いしたいことはあるか。

「ロッカー&オープナー」を連載した当時、漫画を違法に無料連載する「海賊版サイト」を告発したことがある。その結果、サイトは閉鎖されたが、他にも多くの海賊版サイトが新しくできてしまい、作品の不法連載は跡を絶たなかった。収入が3分の1に減った作家たちもいた。「コストを考えた合理的な選択」を理由に、海賊版サイトで読むのはどうなのだろうか。読者たちが支払う数百ウォン(約数十円)は、作品を描いた作家たちへの対価であることを忘れないでほしい。

- 韓国ウェブトゥーンが人気が高まるとともに、ウェブトゥーン作家を目指す人たちが増えてきた。彼らに一言アドバイスを。

心が躍るようなこと、ワクワクすることを探そう。平凡な日常を絵に描いて、誰かと共有することにワクワクするのなら、描けばいい。きめ細かなストーリー展開で、どんでん返しを狙うことにワクワクするのなら、そんな作家になればいい。今、人気があるからといって、そんなジャンルや作品に自分を無理やり合わせようとしないでほしい。マイペースに、自分の道をコツコツと歩んでいけば、いつかはその分野の専門家になっているだろうから。

jane0614@korea.kr