ひと

2023.10.12

ウェブトゥーン「ユミの細胞たち」=イ・ドンゴン提供

ウェブトゥーン「ユミの細胞たち」=イ・ドンゴン提供


[キム・ソナ]

「特別さは、ただ眺めるばかりだが、平凡さには(みんなが)共感できる」

平凡な32歳の女性「キム・ユミ」と、彼女の体の中の細胞たちが一緒に成長していく物語を描いたウェブトゥーン(デジタルコミック)「ユミの細胞たち」(2015)。イ・ドンゴン作家は、自身の作品が多くの読者から愛される秘訣についてこう語った。

イ作家はデビュー前、一人で文房具メーカーを運営していたという。あるときステッカーを作った彼は、そのステッカーを広報するための漫画を制作したことがきっかけで、ウェブトゥーン作家になった。

30歳のとき、「甘い人生」(2011)でウェブトゥーン作家としてデビューし、「元彼女」(2014)、「ユミの細胞たち」、「ジョジョコミックス」(2021)など、ロマンスジャンルの作品を描いてきた。最近は、日常生活を題材にした「ロマンス糖度100」を連載している。一問一答は以下の通り。

―かわいらしい画風だが、どのようにして生まれたのか。

僕の絵の始まりは、文房具メーカーで文具用品の絵を作ったことだ。丸くて小さな、カワイイ絵を描き始め、それが少しずつ変化したのが私の初作品「甘い人生」だ。でも、漫画では人物の様々な感情を表現するために、もっと細かい作業が必要であることに気付いた。それから指やキャラクターの大きさの割合などを少しずつ発展させていくうちに今の絵になったと思う。

―作品の登場人物は、超能力者でも特別な才能を持っているわけでもない、ごく普通の人が多いが。

特別さは、ただ眺めるばかりだが、平凡さには(みんなが)共感することも、応援することもできる。また、自分を重ねることもできる。だからこそキャラクターが身近に感じられ、その成長を応援できるのではないかと思う。

ウェブトゥーン「ユミの細胞たち」に登場するプライム細胞=イ・ドンゴン提供

ウェブトゥーン「ユミの細胞たち」に登場するプライム細胞=イ・ドンゴン提供


―「ユミの細胞たち」は、人間の感情や欲望を擬人化した細胞たちが体の中に住んでいるという設定がユニークで斬新だ。

「私の恋愛細胞は死んでる」とか、「たまった仕事は、来週の私がやる」とか、よく耳にする冗談だと思う。このような表現が好きなので、自分の作品に生かしている。

―「ユミの細胞たち」はドラマ化し、大ヒットした。原作者としてドラマを見た感想は。


自分の作品が映像になるなんて、本当に胸がジーンとするような経験だった。ドラマ化は、また全然違う別の創作の領域だと思うので、視聴者の立場からドラマを楽しく見た。初期設定に関してドラマの制作チームから質問があったが、それ以外に口を出すことはなかった。ウェブトゥーンとは内容が違う場面もあったが、それなりの意味があったため、特に悪いとは思わなかった。

ドラマ化した「ユミの細胞たち」。シーズン2まで制作され、欧州・北米・東南アジアなどで人気を博した=TVING公式インスタグラム

ドラマ化した「ユミの細胞たち」。シーズン2まで制作され、欧州・北米・東南アジアなどで人気を博した=TVING公式インスタグラム


―どんなジャンルのウェブトゥーンを見るか。

カワイイ絵のスタイルが好きで、繊細な心理描写も好きだ。エッセイのようなものが好きで、日常生活を題材にしたウェブトゥーンも好きだ。

―世界的に知的財産(IP)が注目されている。著作権に関して、読者にお願いしたいことはあるか。

ウェブトゥーンの違法流通に関しては、相変わらず問題が山積みだ。だが、ウェブトゥーンの有料化を通じて市場が拡大できたのは、読者の知的財産に対する認識が高まっているからだろう。お願いの言葉ではなく、お礼を言いたい。

―KOREA.netの読者にひと言。

ありふれたものであっても、自分なりの独特な視点で見ること。僕は漫画が持つこういう点が好きだ。普通にあるようなストーリーに漫画ならではの想像力を加えるウェブトゥーンをこれからも描いていきたい。

イ作家が描いた自分のカリカチュアであり、ウェブトゥーン「ロマンス糖度100%」の主人公=イ・ドンゴン提供

イ作家が描いたカリカチュア。ウェブトゥーン「ロマンス糖度100%」の主人公=イ・ドンゴン提供


sofiakim218@korea.kr