ひと

2023.11.20

韓流がブームだ。K-POPだけでなく料理・ファッション・ビジネスなど多岐にわたって韓国が注目を集めている。これに大きく貢献しているのが各国のコリアン次世代だ。彼らは現地で生まれ育ち、現地の文化に慣れ親しんでいると同時に、韓国のDNAを持っているため、韓国を発信することにも熱心だ。海外文化広報院のKOREA.netと聯合ニュースは、各国で主流社会に入り活躍し、韓国人の地位を高め、ひいては韓国と居住国の間で架け橋の役割をしている人物を取材するシリーズを企画した。


文化財返還に努めるナム・ジウン氏=カン・ソンチョル撮影

文化財返還に努めるナム・ジウン氏=カン・ソンチョル撮影


[ソウル=KOREA.net ユン・スンジン、聯合ニュース カン・ソンチョル]

「文化財というものは、単なる過去の遺産ではありません。人類の過去、現在、そして未来を照らしてみることのできる鏡です。略奪したものは、元の国に返還するのが理です」。

文化遺産回復財団のナム・ジウン研究院は17日、KOREA.netと聯合ニュースの合同インタビューで「略奪した文化財の返還は、過去だけでなく、現在の該当国間の和解と協力の象徴」と話した。

ナム氏は、ポーランドで育ったコリアン2世。 遠い異郷の他国で、母国である韓国の言語と歴史を勉強し、自然に韓国文化遺産に興味を持つようになった。

在外同胞財団の奨学生に選ばれ、韓国の大学を卒業したナム氏は、2020年から文化遺産回復財団の研究員として働き始めた。ナム氏は研究員として活動し、海外にあった朝鮮時代の高官だったソン・シヨルの「宋子大全」木版や、李震相(イ・ジンサン)の「理学綜要」木版など、韓国文化財の返還に成功した。

ナム氏は去年、文化財を略奪した国と奪われた国の間にある辛い過去を忘れ、平等な未来関係を構築しようという内容を盛り込んだ本「文化財返還象徴的外交」を昨年、英語で出版した。

また、今年5月には、東欧州3カ国(ポーランド・ハンガリー・チェコ)」に所蔵されている韓国文化財の調査に乗り出した。

KOREA.netと聯合ニュースは、ナム氏にインタビューを行った。一問一答は以下の通り。

今年5月10日、ポーランドのクラクフ国立美術館で韓国の文化遺産を確認するナム・ジウン氏=ナム・ジウン提供

今年5月10日、ポーランドのクラクフ国立美術館で韓国の文化遺産を確認するナム・ジウン氏(左から2番目)=ナム・ジウン提供


―海外に暮らしながらも韓国人としてアイデンティティーを維持することができた秘訣はあるか。

子どもの頃から親が「韓国人としてのアイデンティティーを持って生きなさい」といつも話していた。箸の使い方も教えてくれたし、キムチも食べさせた。現地の国際学校には、自分の出身国をクラスメートに紹介する「国連デ―」というイベントがあった。その準備を通して、自然に韓国を学んでいた。韓国の時代劇「海神」「大祚榮」をよく見たが、このドラマを通じて韓国歴史への関心を深めることができた。

—ポーランドにおける韓国のイメージは。

90年代、ポーランドでの韓国に対するイメージはすでに良いものだった。当時のポーランドは、旧ソ連から独立したばかりで、経済的に厳しい時期だった。そこで、韓国企業が活発に投資を行ったおかげである程度、状況がよくなったのだ。その他、2002年の韓日ワールドカップやK-POPなども韓国に対する肯定的なイメージを持たせた。何よりも、新型コロナウイルスが世界的に広がっていた時、多くのポーランド国民は韓国を尊敬することになった。韓国が国際的に注目されている中、国民全員が模範的に対処した。これを見たポーランド人が韓国に対してさらに肯定的なイメージを持つようになった。

―文化財に対する認識において、韓国とポーランドの違いは。

韓国はまだ、文化財の保存・発展を、産業分野の一つとして捉える傾向にある。文化財を真剣かつ自然に受け入れるポーランドとは違って、韓国では文化財を観光やビジネスに活用することに重点が置かれているように感じられる。もちろん、最近では、韓国が文化大国となり、文化や文化財の影響力をさらに認めるようになった。光化門の月台など、文化財の修復・復元に力を入れており、文化財を保存し、発信しようと努力している。

今年9月、米国から韓国に戻ってきた、朝鮮時代の高官だったソン・シヨルの「宋子大全」木版=ナム・ジウン提供

今年9月、米国から韓国に戻ってきた、朝鮮時代の高官だったソン・シヨルの「宋子大全」木版=ナム・ジウン提供


―略奪文化財返還が持つ意味は。

大きく4つの言葉であらわすと、「和解」「協力」「紛争」「正義」。二つの国が返還の協議を通じて和解したり協力することもあるし、返還の過程で紛争に巻き込まれることもある。また、略奪された文化財を取り戻すことで正義を実現することもある。様々な利害関係が絡んでいる文化財返還は、今のような時期に、紛争解決の手がかりになりえる。

―文化遺産回復財団が進めた「東欧州3カ国(ポーランド・ハンガリー・チェコ)韓国文化遺産調査結果」で最も印象的だった部分は。

研究・調査を行ったほとんどの博物館が積極的に協力してくれた。博物館が所蔵しているアジア遺物の出所を把握することができなくて、財団の力が必要だったからだ。また、欧州の博物館には、中国や日本出身のキュレーターは多いが、韓国出身はあまりいない。実際に調査してみたところ、アジア諸国の文化財を韓国の文化財に分類しておいたケースが多かった。

今年9月5日、米ロサンゼルスで文化財を鑑定しているナム・ジウン氏=ナム・ジウン提供

今年9月5日、米ロサンゼルスで文化財を鑑定しているナム・ジウン氏(中)=ナム・ジウン提供


―韓国が文化財返還に関して国際的にできることは。

韓国は、最貧国から先進国へと、速いスピードで成長し、先進国となった。K-POPといった様々なK-コンテンツを持つ、強力なソフトパワーを備えた文化強国となった。これを通じて、韓国が文化強国として文化財返還において中枢的な役割を果たすことができる。韓国は今、ほかの国を助けることができる立場にあり、略奪という辛い歴史の経験もあるため、この分野では韓国がグローバル・リーダーになることができる。

scf2979@korea.kr