
モンペリエ国立オペラ管弦楽団のヴァレリー・シュヴァリエ監督が6月9日、ソウル市・中区のKOCISセンターでコリアネットのインタビューに答えている
「世界中どこを探しても、これほど体系化された文化外交交流システムは見たことがありません」K-フェローシップに参加した感想を述べているモンペリエ国立オペラ管弦楽団のシュヴァリエ総監督
韓国芸術家たちとの25年越しの縁
韓国とのコラボのきっかけを尋ねると、彼女はすでに25年前から韓国の芸術家たちとの縁が続いていると言いながら明るく笑った。その長きにわたる交流は、ただ会うだけではなく、芸術的な信頼と協力の基盤となったに違いない。
「当時一緒に仕事をした多くの方々が、今では韓国の権威ある芸術教育機関で活動しています。時が経った今でも、その縁はなお芸術の現場で続いています」
今回の訪韓期間中にも、ソウルオペラ団との共同制作をはじめ、合唱団間の交流、女性作曲家と演出家を支援するプロジェクトなど、実質的な協力方法について多角的に議論した。
フランスの舞台でパンソリを披露
来年の韓仏国交正常化140周年に向けて準備している韓国関連のプロジェクトを紹介してほしいと頼んだところ、意義深い計画が一つあるという返事がすぐに返ってきた。パンソリをフランスの舞台で上演する予定だという。
彼女は「パンソリは民俗ではなく12世紀に始まった古典芸術。モーツァルトより古い時代のこと」とパンソリの芸術的価値と深みを強調した。単なる伝統芸能ではなく、フランスの観客に韓国の古典芸術を世界の音楽という新しい視点から紹介しようとする意図がうかがえた。
公演ではパンソリのみならず、韓国人の顔をモチーフにしたビジュアルアートもあわせて披露する計画だという。伝統と現代、音楽とビジュアルアートの枠を超えた融合作品により、韓国社会の様々な側面に触れてほしいと語った。
「人工知能(AI)は会議のまとめや事務作業にはとても役立ちます。でも、呼吸や演技などはできず、感情もありません。創作は依然として人間の領域なのです」芸術とAIの境界について真剣に語るヴァレリー・シュヴァリエ総監督
舞台の表でも裏でも女性のリーダーシップを拡大すべき
芸術界における女性のリーダーシップ拡大と多様性確保の必要性を訴え続けてきたシュヴァリエ。彼女が長い間見てきた現実は依然として厳しい。
「世界人口の半分が女性なのに、リーダーシップにおいてはその割合が反映されていません。より多くの女性が「副(Vice)」付きの補助的な役割ではなく総責任者の地位に就けるよう、構造的な変化が必要です」
彼女は女性クリエイターとのコラボを芸術組織運営の中核的な原則の一つとしている。単なる参加に留まらず、企画から制作まで芸術のあらゆるプロセスに女性の声を反映させようと努めているのも、そのためだ。
芸術分野のサステナビリティ経営は必要不可欠
気候変動や地球温暖化といった地球規模の課題を前に、芸術ももはや無関係ではいられない。環境に配慮したサステナビリティ経営をどのように実践しているか尋ねた。「舞台セットを再利用して照明はLEDに交換し、プラスチックの使用も減らしています。また、出張では飛行機ではなく列車の利用を推奨しています」
彼女はさらに、観客もカーボンフットプリントの削減に参加できるよう、芸術の現場で実践できる様々な方法を模索中だと説明した。
人工知能(AI)は道具に過ぎず、芸術は人間の領域
AIの導入が芸術にとって脅威になりかねないという懸念もある。芸術の舞台でAIをどのようにとらえ、アプローチしたらいいか尋ねた。すると「AIは会議のまとめや事務作業にはとても役立ちます。でも、呼吸や演技などはできず、感情もありません。創作は依然として人間の領域なのです」という答えが返ってきた。
「記録されなければ存在しない」韓国の無形文化の記録を強調するシュヴァリエ監督(右)とコリアネットのチョン・ミソン(左)
記録されなければ存在しない。
インタビューを行った6月9日は国際アーカイブズの日だった。韓国文化の記録の価値について、彼女はこう答えた。韓国のパンソリ、書道、口承の伝統は世界的な文化遺産です。記録されなければ存在しないのと同じなのです。100年後にK-POPだけが残るとすれば、韓国文化が誤解されることになりかねません」
文化体育観光部(MCST)の「K-フェローシップ(K-Fellowship)」
2009年から毎年行われている国際文化交流招待プログラム。在外韓国文化院や韓国内の主要国際文化芸術行事主催機関の推薦により、海外から文化芸術機関のリーダー、芸術家、政策立案者などを韓国に招待して文化芸術の現場に実際に触れてもらい、両国の間で継続的な協力関係が築けるように支援している。