政策

2016.10.18

韓国は、1987年に電算ネットワークの普及拡大と利用促進に関する法律を制定して以来、より便利で良質な行政サービスを国民に提供するために電子政府の構築に取り組んできた。絶え間ない技術開発の努力により発展を遂げてきた韓国の電子政府システムは、今や世界から認められるものとなった。韓国の電子政府がたどった道のりと電子政府の成功例や今後の海外協力計画などを順に追う。今回は韓国の特許情報化システムについて紹介する。

韓国は米国・中国・日本・欧州(EU)に並ぶ知的財産大国(IP5)である。

国連傘下の世界知的所有権機関が発刊した「2014世界知的所有権統計」によると、韓国は2014年に計4つの産業財産権(特許、実用新案、商標、産業デザイン)分野で20万4,589件の特許が出願され中国、米国、日本に次ぐ世界4位となった。国際出願も全体21万5千件の6.1%に当る1万3,151件で世界5位だった。とくにGDPベースでの韓国人の特許出願および人口百万人当り韓国人の特許出願はそれぞれ9,739件と3,186件で世界1位だった。

出願申請、審査、登録、関連情報の検索など特許に関する一連の手続きを個人でも手軽に処理できるように構築されたオンライン電子出願サービスの「特許路」

出願申請、審査、登録、関連情報の検索など特許に関する一連の手続きを個人でも手軽に処理できるように構築されたオンライン電子出願サービスの「特許路」





韓国が知的財産権大国になった背景には特許の出願から審査、登録までの全プロセスが簡単に処理できるように支援するオンラインシステムがあった。1999年、世界で初めて特許行政の全プロセスを電子化したことで注目を集めたネット基盤の特許情報化システムの特許ネット(KIPOnet)は、特許庁の特許審査、登録などの特許に関するすべての行政処理を手軽に行うために構築されたもの。さらに特許を出願した個人が出願、審査、登録、手数料の納付といった特許行政の全プロセスを容易に処理できるように設計された「特許路」と国内外の知的財産権に関するすべての情報をDB化して誰もが無料で利用できる情報をネットで提供する特許検索サービス「キプリス(KIPRIS、Korea Intellectual Property Rights Information Service)」もある。

国内外の知的財産権に関するすべての情報をDB化した特許情報ネットのキプリス

国内外の知的財産権に関するすべての情報をDB化した特許情報ネットのキプリス





こうした特許に関するオンラインシステムは多くの書類を紙の文書で提出する手間を大きく軽減し、夜間・休日にも利用できるため特許登録、審査過程の利便性を高めた。実際、特許庁によると1999年の特許ネットのオープンにより特許行政の手続が自動化された上、24時間・365日サービスにより審査期間が49%も短縮されたため2009年まで約4,838億ウォンの行政費用を削減できたという。さらに同システムは特許情報の電子検索サービスにより産業界における研究開発期間と研究投資費用の削減にも貢献した。

これらのオンラインシステムは自国の知的財産の保護にもつながる。最近移動通信業界で注目されている虹彩認識による画面コントロール機能などの知的財産は、高い付加価値を創出し国家や企業の競争力の向上に結びつくためだ。

韓国の特許情報化システムは2009年11月にインド・ニューデリーで開催された第27回アジア・太平洋電子商取引委員会カンファランスで公共部門・電子ビジネス分野の優秀事例に選定され「200年eアジアアワード」を授賞した

韓国の特許情報化システムは2009年11月にインド・ニューデリーで開催された第27回アジア・太平洋電子商取引委員会カンファランスで公共部門・電子ビジネス分野の優秀事例に選定され「200年eアジアアワード」を授賞した





韓国の特許に関するオンラインシステムは世界各国から注目を集めた。特許ネットは2009年11月にインド・ニューデリーで開催された第27回アジア・太平洋電子商取引委員会カンファレンスで公共部門電子ビジネス分野の優秀事例に選定され「2009e-アジアアワード」を授賞した。また特許ネットの国際特許関連機能だけを集めた「国際特許出願受付システム」はイスラエルやエジプトなど26カ国で普及、活用されている。

韓国型特許システムに関する海外の関心は輸出につながっている。韓国はモンゴル、アゼルバイジャン、アフリカ広域知的財産機関などと政府開発援助(ODA)の形で特許システムの経験と知識を共有している。

特許庁のチェ・ドンギュ庁長(右)とアラブ首長国連邦のアル・シェヒ経済省副大臣が2016年2月に特許庁のソウルオフィスで相互業務協約のための覚書に署名してから握手を交わしている。両国は韓国型の特許情報システムを約450万ドルでUAEに輸出する事業契約を締結した

特許庁のチェ・ドンギュ庁長(右)とアラブ首長国連邦のアル・シェヒ経済省副大臣が2016年2月に特許庁のソウルオフィスで相互業務協約のための覚書に署名してから握手を交わしている。両国は韓国型の特許情報システムを約450万ドルでUAEに輸出する事業契約を締結した






今年2月に韓国はアラブ首長国連邦(以下、UAE)と450万ドル規模の特許情報システムの事業契約を結び、相互業務協約のための覚書(MOU)を締結した。この契約に基づいて両国はUAEの特許情報システム構築と知的財産に関する教育、UAE政府の特許機関拡大に向けた組織のコンサルティングなどで協力するとともに、特許情報システムを輸出し関連ノウハウを共有することで合意した。

UAEに輸出される特許情報システムはUAEの特許とデザインに関する出願、審査、登録、手数料の納付など特許行政の全プロセスをオンラインで処理できるシステムの構築などを骨子とする。両国はまず電子出願とモバイルサービスに関するオンライン特許情報システムを構築してから、審査、登録などのシステムを2次開発で構築する予定。

また韓国とUAEは10月4日に特許行政モデルの輸出契約を結び、UAEの特許審査組織の発足に向けた戦略に関するコンサルティングサービスを提供することにした。この合意はUAEが急激に増加する特許出願に対応し、中東地域における特許大国としての成長に向けて独自の特許審査組織を設立させるための努力の一環である。特許庁は年内に詳細をまとめて専門家を派遣するなど、特許行政の発展と運営の経験をUAEと共有することにした。韓国はUAEに特許に関する法規制や設計、審査人材の育成、知財権の創出・活用戦略の策定などを含む総合コンサルティングサービスを提供し、UAEの知財権発展戦略を支援することになる。

コリアネット ユン・ソジョン記者
写真:特許庁
翻訳:イム・ユジン
arete@korea.kr