韓国の行政モデルが国境を越えて世界の注目を集めている。行政安全部は先月、93カ国の外交使節団に対し、韓国の公共行政における革新的な取り組みを紹介し、「行政韓流」の可能性を示した。コリアネットでは、災害管理や スマート農業、山林復元、行政都市の建設など、韓国政府が推進する五つの革新事例を、全5回にわたって取り上げる。
「READY Korea」4次訓練で、船舶衝突を想定した人命救助訓練を行う救助隊= 2025年11月25日、仁川、行政安全部
[ソウル=テレシア・マーガレット]
気候危機や新技術の登場により、人類はこれまで経験したことのない「見えない危険」に直面している。こうした不確実性に対応するため、韓国政府が構築した科学的な災害管理システムは、経済協力開発機構(OECD)をはじめとする 国際社会から高い評価を受け、公共行政の新たな標準として注目を集めている。
現在、私たちが直面している危険は、従来想定されてきた災害とは性質を異にする。冬季の異常高温や大規模な山火事といった気候危機に加え、自動運転車や情報通信技術の発展に伴う技術的な誤作動、高齢化や空き家問題など、人口構造の変化に起因する社会的リスクまで、その範囲は多岐にわたっている。
このように、国境を越えて拡大する新たな潜在的リスクの増加を背景に、災害管理においては、事後的な復旧ではなく、「先制的な把握」が中核的な課題となっている。
政府は危険要素を先制的に把握するため、行政安全部傘下の国立災害安全研究院に「潜在災害危険分析センター」を設置し、運営している。同センターはビッグデータや人工知能(AI)を活用し、新たな危険要素を定期的に抽出するとともに、発生可能性や想定被害規模、拡大の様相などを多角的に分析している。
これらのデータは、多様な危機状況を想定して対応策を事前に策定する「シナリオ技術」の基盤となり、政府はこれを土台に、将来の災害を予測する精密なリスクマップの作成を進めている。
国立災難安全研究院が今年発刊した報告書「建設工事監理制度の不十分さに伴う構造物崩壊リスク」と「情報サービスの複雑化・多様化に伴うデジタルブラックアウト」の表紙=国立災難安全研究院
注目すべき成果の一つが、2023年から半期ごとに発行されている「国家潜在危険報告書」だ。「電気自動車充電インフラ火災リスク」を最初のテーマとして、現在までに計15冊が刊行された。同報告書は、韓国社会における新たな危険の兆候と具体的な対応の方向性を示すガイドブックとしての役割を果たしている。
分析結果は、単なる記録にとどまらず、国家政策の基盤として活用されている。5年ごとに策定される「国家安全管理基本計画」や、毎年の「執行計画」に速やかに反映される仕組みだ。中央省庁や地方自治体は、報告書で示された危険要因を踏まえ、年間の執行計画を策定しなければならない。
現場対応力を高めるため、政府は「Safe Korea Exercise」を定例化し、関係機関の合同訓練に加えて民間の参加も大幅に拡大した。科学的分析を現場での迅速な対応につなげることが狙いだ。
行政安全部の関係者は、「標準化された手続きを基に、危険の把握から対応までを体系的に運用している点が韓国の強みだ」と説明した上で、「国民が災害リスクを理解し、共に備えられるよう、情報発信を強化していく」と語った。
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