科学技術

2016.06.15

遺伝子を一本だけ選んで精度良く切断する「ゲノム編集ツール」の新技術が開発された。
キム・ジンス遺伝体矯正研究団長率いる基礎科学研究院の研究チームと蔚山(ウルサン)医大イ・サンウク教授の研究チームは、切断酵素を使ってゲノムを編集する「クリスパーCpf1(CRISPR Cpf1)手法」でマウス胚の遺伝子書き換えに成功した。

ゲノム編集とは一種の人工切断酵素を利用し、特定の塩基配列をもつDNAを切断して隙間を作ったり改変したりする技術をいう。この技術を活用すれば多様な疾患を引き起こす原因遺伝子を正常遺伝子に置き換えることができるので、人間や動植物細胞内の正常でない遺伝体の矯正が可能になる。従来の切断酵素(Cas9)を使った手法では2重螺旋で構成された遺伝子(DNA)の2本を全て切断しなければならず、精度が低く突然変異などの副作用も多く見られた。 

研究チームは新型切断酵素(Cpf1)を使ったゲノム編集技術で実験用の黒いマウスの受精卵からメラニン生成遺伝子を切り取り、白い毛のマウスを誕生させた。この手法は副作用がなく正確な結果を導出するため注目を集めている

研究チームは新型切断酵素(Cpf1)を使ったゲノム編集技術で実験用の黒いマウスの受精卵からメラニン生成遺伝子を切り取り、白い毛のマウスを誕生させた。この手法は副作用がなく正確な結果を導出するため注目を集めている



研究チームは新型たんぱく質酵素(Cpf1)を使ったゲノム編集技術で実験用の黒いマウスの受精卵から黒色を出すメラニン生成遺伝子を切り取った。この受精卵から生まれたマウスの腹には斑点のような白い毛が生えた。これから数世代を経ると完全に白い毛で覆われたマウスが生まれる可能性もある。また研究チームは独自で切断遺伝体の塩基配列の順番を解明し、ゲノム編集ツールのクリスパーCpf1が誤動作を起こす確立を測定することにより研究の精度を高めた。

新型のゲノム編集技術の研究をリードした基礎科学研究院のキム・ジンス遺伝体矯正研究団長(左)と蔚山医大のイ・サンウク教授

新型のゲノム編集技術の研究をリードした基礎科学研究院のキム・ジンス遺伝体矯正研究団長(左)と蔚山医大のイ・サンウク教授



キム・ジンス団長は「従来の(Cas9を使った)手法は人間遺伝子の場合、切断したい遺伝子の他にも90個以上の遺伝子を切断していたが、今回の新型(Cpf1)酵素を使った手法は本当に切断したい遺伝子一本だけ切り出すことができるので以前よりはるかに精度が上がった。新規のクリスパーCpf1を適用すれば、マウスはもちろん牛、豚といった動物に幅広く活用できるのでゲノム編集に広く使える」と研究の意義を強調した。

以上の研究成果は7日、生命工学分野の国際ジャーナルで知られる「ネイチャー・バイオテクノロジー (Nature Biotechnology)」オンライン版に掲載された。

コリアネット ユン・ソジョン記者
写真:基礎科学研究院、蔚山大学病院
翻訳:イム・ユジン
arete@korea.kr   

キム・ジンス団長らによる新型ゲノム編集技術の研究成果が紹介された生命工学の国際ジャーナル「ネイチャー・バイオテクノロジー」のオンライン版

キム・ジンス団長らによる新型ゲノム編集技術の研究成果が紹介された生命工学の国際ジャーナル「ネイチャー・バイオテクノロジー」のオンライン版