韓国人なら誰でも、学校に持っていった弁当のおかずとして毎日のように食べた「オムク」の味が忘れられないだろう。自分の弁当にも友だちの弁当にも入っていたほど、韓国の弁当の定番おかず「オムク」。寒さの厳しい日、湯気がもくもくと立ち上る道端の屋台で食べるオムクコチ(串刺しにした韓国おでんとスープはたまらなく美味しい。その味が恋しくて寒い冬を待ち焦がれる人も多い。
「オムク」は、スケトウダラや鯛、太刀魚、イシモチといった白身魚の身をすり潰し、塩を加えて練り合わせたものの総称で、鍋料理や串刺し、揚げ物など、様々な料理に用いられる「国民的おかず」として韓国人に親しまれている。
オムクの歴史は朝鮮時代にさかのぼる。朝鮮時代の宮中の宴の様子が記録された『進宴儀軌』や朝鮮第19代王スクチョン(粛宗)の時代に実学者のホン・マンソン(洪万選)が編纂した家庭生活書『山林経済』」などには、魚の骨をとって薄くスライスし、、肉、野菜、きのこ、でんぷんを加えて混ぜて食べたという記録がある。

釜山オムクの歴史が息づく釜山富平カントン市場のオムク売り場。テンチョ・オムクやチーズオムク、タコオムクなど、70種類以上のオムクが販売されている
韓国第2の都市で豊かな水産資源に恵まれたプサン(釜山)は、早くからオムク市場で栄えた街だ。街のあちらこちらにサムジン・オムクやテウォン・オムクといったオムク工場とオムク販売店ができ、その数がどんどん増えていった。オムクといえば「釜山オムク」といわれるほど、全国的に有名になり、最高級のオムクと認識されるようになった。
それを肌で感じさせるのが、プサン(釜山)市プピョン(富平)洞にあるカントン市場だ。「オムク通り」とも呼ばれ、入口からオムク販売店がずらりと立ち並ぶカントン市場では、キノコやニンジン、チーズなどを加えて色をつけたカラフルで、四角、三角、丸のいろいろな形をしたオムクが販売されている。市場を訪れた人は、オムクを食べて空腹を満たす。「元祖釜山オムク」を目当てにわざわざ遠くからやってくる人もいる。

いろいろなオムクやこんにゃく、野菜などが入った人気のオムク料理の一つ「オムクタン」
1970年代末から、魚の骨と皮を取る採肉機や魚の水分を抜く脱水機、食べやすい形にする形成機などの機械が開発され、オムク製造業は大きく成長した。
市場で販売されているオムクの種類は数百種類にも及ぶ。粘着性のあるすり身を高温の油で揚げたオムクは、串刺しの他にも、揚げたり、蒸したり、焼いたりと、調理法も様々だ。
オムクの「フュージョン化」も進んでいる。オムクの中に野菜などの食材を入れて揚げたオムクコロッケのほか、イカ墨やトビコ、チーズ、チャプチェ、豆腐、カレーなどを加えた新製品が続々と登場している。
オムクは今もなお進化を遂げている。もはやストリートフード、庶民の食べ物ではない。職人の技と様々な食材から生まれるオムクは、今やヘルシーなグルメになりつつある。
記事:コリアネット ソン・ジエ記者
写真:コリアネット チョン・ハン記者、サムジン・オムク、聨合ニュース
jiae5853@korea.kr

寒さを癒してくれるほかほかのオムクタンとオムクコチは、冬のストリートフードの定番だ