社会

2024.12.24

他の言語で読む
2018年10月にオープンした「絶滅危惧種復活センター」=国立生態院

2018年10月にオープンした「絶滅危惧種復活センター」=国立生態院


[ギル・ギュヨン]

ツキノワグマが自然に返されてから今年で20年。環境部と国立公園公団は、韓国で絶滅したツキノワグマを復活させようと、2004年にロシアから6頭を受け入れた。現在、智異山に生息しているツキノワグマは80頭余り。ツキノワグマの復活事業は、絶滅危惧種を復活させた成功例として挙げられる。人間と自然が調和して共存できるということを見せた。

環境部は復活事業を拡大するため、2018年10月、慶尚北道・英陽(ヨンヤン)郡に「絶滅危惧種復活センター」をオープンした。面積は225万平方メートルで、研究棟や飼育場、温室、生体試料銀行など、最新設備を備えている。崔乗雲(チェ・スンウン)センター長は、「韓国で初めて絶滅危惧種を専門的に研究するため設立された機関で、世界でも珍しい」と説明した。

(左から時計回りに)植物温室、昆虫温室、動物病院、魚類・無脊椎動物研究棟=ギル・ギュヨン撮影

(左から時計回りに)植物温室、昆虫温室、動物病院、魚類・無脊椎動物研究棟=ギル・ギュヨン撮影


環境部が指定した絶滅危惧種は、今年で282種類になる。センターは、原種の導入から復元・増殖、死後モニタリングまで、様々な段階を経て絶滅危惧種を復活させる。研究員は原種を確保するため、全国各地を回る。島の絶壁を登ったり、水の中に入ることもする。原種を確保した後、個体数を増やす作業に進む。どんな条件下で長く生存し、繁殖行動が活発に行われるかなどを着実に研究し、復元・増殖の技術を作る。

センターは2019年に初めてズグロカモメ、カワウソ、チョウセントノサマガエル、チョウセンキバナアツモリソウの4種類の増殖に成功し、今まで絶滅の危機に瀕している野生生物17種を自然に返した。その中でも代表的なのは、タマオシコガネを復活させたことだ。昔はよく見かけたが、1970年代以降、殺虫剤や農薬の使用量が増えたことで韓国の自然生態系から姿を消した。

昨年9月、タマオシコガネを自然に返す子供たち=国立生態院

昨年9月、タマオシコガネを自然に返す子供たち=国立生態院


結局、モンゴルから数百匹を輸入し、個体数を増やし始めた。昨年9月、忠清南道・泰安(テアン)郡で200匹を自然に返した。崔センター長は「タマオシコガネは、農薬や抗生剤の成分が入っている糞(ふん)を食べるとすぐ死んでしまうので、センターで飼っている馬からのものをエサとして供給する」と説明した。

クロツラヘラサギの復活も注目される。クロツラヘラサギは国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで、近い将来に野生での絶滅の危険性が高い絶滅危機とされる。世界の約9割が韓国で繁殖するが、海洋汚染によって生息地が破壊され、毎年減っている。これを解決するためにセンターは生息地の環境改善や保護活動に乗り出している。天敵のタヌキの進入を防ぐ垣根を立て、集団繁殖地に人工岩を設置した。2027年までに個体数を5000匹に増やすことを目標としている。

トキ科の渡り鳥で、夏は韓半島やロシアなどで繁殖し、冬は日本を含む東アジアの各国で過ごすクロツラヘラサギ=国立生態院

トキ科の渡り鳥で、夏は韓半島やロシアなどで繁殖し、冬は日本を含む東アジアの各国で過ごすクロツラヘラサギ=国立生態院


センターは、生物多様性の保全に対する認識改善にも力を入れる。今年4月、江華(カンファ)郡の漁村で行われた「クロツラヘラサギ保護活動」は、漁民の力量強化教育や協業の優秀例と言える。漁民がクロツラヘラサギの個体数と生息地の情報を共有し、復活活動に積極的に参加している。鳥類チームの梁民承(ヤン・ミンスン)専任研究員は「漁民の皆さんの認識が改善していることが感じられる」とし、「昨年まではクロツラヘラサギの復活に反対する人が多かったが、今や皆さんから先にクロツラヘラサギの情報を教えてくれる」と話した。

今年11月、国立生態院は、野生生物に関する国民の認識改善や未来人材の育成のため、センター内に教育館を開館した。崔センター長は「産業化や無分別な開発で生息地が破壊刺されれば、絶滅危惧種の増加を防ぐことはできない」とし、「生物多様性の重要性を知らせ、その価値を守ることが究極の目標」と強調した。その上で、「絶滅危惧種という言葉がなくなり、センターが閉館するまで、研究を続ける」と話した。

gilkyuyoung@korea.kr