ワーケーションセンターで、パソコンを使って業務を行う職員=先月19日、慶尚南道・南海郡、シャルル・オデゥアン
[南海 = シャルル・オデゥアン]
「ソウルでは、出勤するとすぐに疲れてしまいますが、ここでは気分がすっきりして、仕事の効率も上がります」
これは、先月19日、慶尚南道・南海(ナメ)西面にあるソサン・ワーケーションセンターで業務を始めた、スタートアップ企業の社員キム・サンヒョク氏の言葉だ。
同行したスタートアップ代表のキム・ミンホ氏も、「政府主導でワーケーション文化が広がっている」としたうえで、「集中力が高まり、会社が安定してくれば、ソウルを離れ地方勤務も検討したい」と語った。
ワーケーションとは、「仕事(work)」と「休暇(vacation)」を組み合わせた言葉で、都市のオフィスを離れ、休暇先で仕事をするという新しい勤務形態を指す。コロナ禍以降、次世代の働き方として注目を集めている。
韓国では、業務効率や創造性の向上、ワーク・ライフ・バランスの実現にとどまらず、人口減少地域の活性化や地域経済の成長、さらには企業誘致といった国家戦略とも連動して推進されている。
ワーケーション専門企業「ストリーミングハウス・ザ・ヒュイル」の代表は、「企業にとっては働く文化の改善や職員の満足度向上につながり、自治体にとっては平日やオフシーズンの生活人口の増加、さらには地域成長モデルの構築にも寄与する」と説明した。
南海郡は、2020年に始めた「青年村ライフ実験プロジェクト」をきっかけに、ワーケーション環境の整備を進めてきた。狙いは、若者の流入を促し、地域の生活人口を増やすことにある。
これまでに行政安全部の地方消滅対応基金を活用し、旧ソサン旅客船ターミナルを共有オフィスへと改装。今月には、宿泊施設と仕事スペースを備えた「南海ワーケーションセンター・エンガン」の試験運営を始める予定だ。
南海郡の関係者は、「南海のワーケーションは、個人でも、同僚や家族と一緒でも利用できる、仕事と日常が調和した開かれた空間です」と紹介した。
「南海ワーケーションセンター・エンガン」の全景=南海郡
韓国政府も、ワーケーションの活性化に向けて、さまざまな事業を展開している。参加者には、オフィス利用料や体験活動費の支援に加え、旅行保険の加入や宿泊予約のサポートなど、実質的な利便が提供される。
申し込みは、ワーケーション運営会社「ザ・ヒュイル(The Hyuil)」の公式ホームページ(thehyuil.co.kr)から行える。
行政安全部は今年12月までに、人口減少地域22カ所を含む全国34の市・郡で、中央省庁の公務員を対象に「ワーケーション」の実施機会を提供している。9月時点で、15の機関から約1000人が利用したという。
文化体育観光部と韓国観光公社も、今年末までに全国21地域で「ワーケーション」プログラムを運営している。
海洋水産部の漁村体験・休養村プログラムや、農林畜産食品部の農村型ワーケーション事業と連携し、参加者が多様な活動や利便を享受できるよう支援している。
「韓日ワーケーション・ファムツアー」で記念撮影を行う参加者たち=10月、忠清南道・公州、ストリーミングハウス
韓国型ワーケーションモデルは、海外からも注目を集めている。忠清南道は先月11日と12日、公州(コンジュ)と保寧(ポリョン)で、日本の自治体職員や企業関係者を招き、「ワーケーション忠南グローバル・ファムツアー」を開催した。参加者たちは、韓屋での宿泊や伝統文化体験、地域観光プログラムなどを通して、韓国ならではのワーケーションを体感した。
シン代表は、「ワーケーションが、いまや企業のハイブリッドな勤務形態の一つとして定着した」と評価したうえで、「政府機関や公企業にも広がりを見せ、市場の需要も着実に拡大している」と述べた。さらに、海外出張型ワーケーションが将来的に、国家間協力の新たなモデルへと発展する可能性があるとの見通しを示した。
caudouin@korea.kr