甕の形をしたプラスチック容器に入った黄色い牛乳がある。韓国で長きにわたり、変わらぬ姿で消費者の健康と心を満たしてきたピングレの「バナナミルク」だ。発売から今年で40年になり、幼少時代の思い出に浸らせてくれるこの商品は、老若男女を問わず多くの人に支持されている。
「バナナミルク」が発売されたのは1974年6月。1970年代初頭、政府は牛乳の消費を積極的に奨励したが、白い牛乳は味が物足りないとなかなか消費が伸びなかった。それで誕生したのが「バナナミルク」。当時は輸入禁止でなかなか口にできなかったバナナの風味が添加され、韓国を代表する商品に成長した。
発売から今年で40年になったピングレの「バナナミルク」
(左から)ピングレの「バナナミルク」「イチゴミルク」「バナナミルク・ライト」「メロンミルク」。最初に発売された「バナナミルク」の人気に後押しされ、その後に発売された商品もヒットした
「バナナミルク」は、長い歴史があり、韓国で知らない人はいない。子どもの頃にこれを飲んだ人は、年をとっても飲み続けている。現在1日平均約80万本が販売され、発売以来の累計販売数は60億本に上る。昨年の売り上げだけで1500億ウォンに上った。
こうして「バナナミルク」が世代を超えて幅広い年齢層の消費者に支持されているのは、何といっても美味しいからだ。牛乳の含有量が80%に上り、まろやかで濃くがある。加工乳の中でこれほど牛乳の含有量が高い製品はごく少数だ。
「バナナミルク」といえば、まず思い浮かぶのがユニークな容器だ。丸々とした太鼓腹のようなデザインは、韓国の伝統的な甕をヒントに考案されたという。
ピングレの関係者によると、当時の牛乳容器の主流だったガラス瓶やビニールパックと差別化するために考案されたのがポリスチレンの容器だという。飲むときに不注意で牛乳がこぼれないよう飲み口の部分に段差をつけるとともに、バナナの黄色が最大限に映えるよう半透明にした。そうして作られた容器は「バナナミルク」のシンボルになった。
京幾道南陽州市のピングレ工場で「バナナミルク」が生産される様子
「バナナミルク」の人気に後押しされたピングレは、今年2月に「バナナミルク」と同じ容器に入った「メロンミルク」を発売した。現在は、「バナナミルク」、低脂肪乳製品「バナナミルク・ライト」「イチゴミルク」の4つの商品を販売している。
今や「バナナミルク」の人気は、韓国だけでなく世界に広がりつつある。「バナナミルク」は、2004年から米国で販売が開始され、カナダや中国、フィリピンなど13カ国余りで販売されている。当初は少量しか輸出されていなかったが、現在は賞味期限の長い滅菌パック包装で大量に輸出されている。
「バナナミルク」は特に中国で人気を博している。中国では2008年から販売が開始されたが、2012年は輸出額が100億ウォンを突破し、昨年は155億ウォンと54%増加した。中国上海現地の販売価格は8.5人民元(1500ウォン)前後で、若者に好評だ。
ソウル西小門のピングレ本社の全景
ピングレのマーケティング担当のソ・ウォンジュ課長は、「韓国を訪れる中国人観光客の増加と韓流の影響で、中国でも広く知られるようになった。現在では外国人観光客がぜひ飲んでみたいと思う商品に挙げられるほど人気はうなぎ上りで、観光ガイドが観光客に勧めている」と話す。
また、「幼い頃からバナナミルクを飲んでいる人にとっては、単なる飲み物ではなく、思い出の商品だ。バナナミルクは、お腹を満たしてくれるだけでなく、心も癒してくれるようだ」と語る
コリアネット イム・ジェオン記者
jun2@korea.kr
ピングレのフェイスブックに投稿された「バナナミルク」の風刺画像が親近感を感じさせる。(上から)実りの秋をイメージした画像、秋夕にカンガンスルレを楽しむ「バナナミルク」と仲間たち、サッカーW杯ブラジル大会で韓国代表チームを応援する「バナナミルク」