ある韓国人医学徒は、1950年代にドイツで留学生活を送っていた。
ある日、医学徒がドイツ北部・ハンブルクの市役所を通り過ぎようとしたとき、地下ホールの入口に立つ酒と収穫の神「バッカス(Bacchus、Dionysus)」の全身像を目にした。帰国後、医学徒は疲労回復剤を開発し、「バッカス(Bacchus)」と名づけた。その医学徒が、東亜ソシオグループ(Dong-A Socio Group)現会長のカン・シノ(Kang Shinho)氏だ。
1961年に錠剤として発売された「バッカス」は、1963年に現在の瓶の形の「バッカスD(Bacchus Drink)」に変わり、2013年まで約178億本販売された。そのビンを全部つなげると、地球を53周しても余りあるという。韓国人なら知らない人はいない、発売から50年以上の「長寿商品」となった。急変する社会。発売から半年経たずで消えていく商品が多いなか、「バッカス神話」はなおも続く。
韓国を代表する長寿商品「バッカス」。左は1963年の発売当時そのままの「バッカスD」、右はスーパーやコンビニ用の「バッカスF」
「バッカス」の主成分であるタウリンは、人体で生成される生体物質で、コレステロールを下げ、肝機能を補助するアミノ酸の一種だ。タウリンの効能の中で最もよく知られているのが「疲労回復」だ。肝臓で生成される胆汁酸が肝臓内の毒性物質を取り除き、疲労回復効果を発揮する。このときタウリンは、肝臓内で胆汁酸の生成を促進し、疲労回復を助ける働きをする。
輸出用として生産されている缶入り「バックス」
韓国を代表する疲労回復剤として定着した「バッカス」だが、最近は海外進出が加速している。1981年にアラブ首長国連邦と米国に初めて輸出されて以来、現在18カ国(米国、中国、フィリピン、モンゴル、カナダ、カンボジア、日本、オーストラリアなど)に輸出されている。
特に、カンボジア市場への進出には目を見張るものがある。2011年1900万本(50億ウォン)、2012年6100万本(172億ウォン)、2013年1億本(277億ウォン)が輸出された。単一国としては最大の売り上げだ。
米国では東部やロサンゼルス地域に供給されている。缶入り「バッカス」は、若者層の好みに合わせて差別化された成分含量(高麗人参濃縮液50mg、ロイヤルゼリー20mgなど)、口当たりの良さ、リーズナブルな価格(0.99ドル)で消費者の心をつかんでいる。中国では「バオジアス」という商品名でスーパーなどで販売され、輸出が拡大している。世界のエナジードリンクの市場規模は約7兆ウォンで、年平均10%以上の高成長を続けている。とどまるところを知らない「バッカス」の勢いはこれからも続く。
記事:コリアネット ウィ・テックァン記者
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詳細は、東亜ソシオグループのホームページ (http://www.donga.co.kr) をご覧ください。