江原道(カンウォンド)、平安道(ピョンアンド)、咸鏡道(ハムキョンド)地域で主に栽培されるメミル(蕎麦)で作ったメミルチョンビョンは、地域によって具は異なるが、各地域を代表する普遍的な郷土料理だ
メミル(蕎麦)は、韓国人が好んで食べる食材の1つで、さっぱりした味と香ばしい香りが特徴だ。
江原道(カンウォンド)、平安道(ピョンアンド)、咸鏡道(ハムギョンド)など、標高が高く涼しい地域で主に栽培され、メミルグクス(蕎麦の麺)、メミルチョンビョン(蕎麦煎餅)などが郷土料理として有名だ。その中でもメミルグクスは、朝鮮時代の四礼の1つとされた冠礼(成人式)が終わった後に式の主催側と客人が一緒に特別食として好んだ食べ物。
朝鮮中期、両班家の貞夫人がハングルで書いた調理書『飲食知味方』には、メミル粉で作った麺のことをただの「麺」と記録していることから、メミルが極めて一般的な食べ物であったことがわかる。
メミルグクスは、今では主に暑い季節に好んで食べらるが、朝鮮時代に農家で行われた行事や歳時風俗などについて記した書籍『農家月令歌』では、10月の食べ物として記録されている。
メミルチョンビョンもメミルを主な材料とした定番の食べ物。メミルチョンビョンは、水を多めにしてこねたメミル生地を薄焼きにし、その中に大根や白菜キムチ、豚肉などの具を入れて巻いて食べるものだ。地域によってはニラやシイタケ、牛肉などを入れる調理法もある。
メミルは味はもちろん、健康にも良い。朝鮮時代の医学者である許浚(ホ・ジュン、1539~1615)は、朝鮮時代を代表する医学書『東医宝鑑』に「(メミルは)脾腸と胃腸の湿気と熱気をなくし、1年続いた胃もたれであってもメミルを食べればすぐに良くなる」と記した。
メミルが肝臓の解毒機能を助けるいう研究結果もある。肝臓に溜まった老廃物を排出させるだけでなく、アルコールの解毒にも優れているため二日酔いにも効く。また、泌尿器を強化させ排泄を促すほか、血中コレステロールを下げるため動脈硬化の予防にもつながる。さらに肌の美容にも良く、頭皮や肌のできものなどの治療にも効果があるとされている。
猛暑日に食べたくなるメミルグクスは、香ばしくさっぱりした味わいが特徴で、消化を促進する食べ物として知られている
<メミルグクス>
** 材料と分量
メミルの生麺80g
だし:いりこ30g、干しシイタケ4個
昆布10g、水5コップ、酒1コップ
かつおぶし50g、醤油大さじ2、砂糖小さじ1
キュウリ100g、大根100g、万能ネギ20g、わさび20g
** 作り方
1. いりこは頭と内臓を取り除き、干しシイタケは軽く洗い、昆布は塗らした布巾で拭う。
2. 鍋にいりこを入れて中火で2分ほど炒めてから、水と酒、シイタケと昆布を入れて10分ほど加熱した後に火を止める。その後かつおぶしを入れて20分ほど待ってから目の細かいざるを通し、醤油と砂糖で味付けをする。
3. キュウリは5cm程度の千切りにし、大根はおろしてから水気を切る。万能ネギは小口切りにする。
4. 熱湯したお湯にメミル麺を入れる。茹であがったら麺を取り出して流水で軽くもみ洗いする。最後に再度氷水につけてから、1玉ずつ取り分ける。
5. 麺鉢などに麺を入れてだしを注ぎ、千切りのキュウリと大根おろし、万能ネギ、わさびを添える。
<メミルチョンビョン>
** 材料と分量
メミル粉90g(½コップ)、塩1g(小さじ¼)、水175g(3/4コップ)
豚肉(ロース)100g
ソース:薄口醤油3g(小さじ½)、 にんにく(みじん切り)2.8g(小さじ½)、コショウ0.1g
白菜キムチ100g、ごま油2g(小さじ½)、ごま塩1g(小さじ½)
サラダ油26g(大さじ2)
酢醤油 : 醤油18g(大さじ1)、酢15g(大さじ1)、水15g(大さじ1)
メミル粉を練って作った麺を熱湯で茹で、氷水で洗う
** 作り方
1. フライパンを温めて油を引いてから、豚肉を入れて弱火で2分ほど炒める。
2. 炒めた豚肉とキムチを混ぜて具を作る。
3. フライパンを温めてから、メミルの生地を径10cm・厚さ0.2cm程度に丸く流し込み、弱火で両面をそれぞれ30秒ほど焼いてから具を横方向に入れて巻く。
4. メミルチョンビョンが冷めたら、長さ5cm程度に斜めに切り、酢醤油を添える。
コリアネット ユン・ソジョン記者
写真:韓国伝統飲食研究所
資料:美しい韓国料理100選
arete@korea.kr
メミルチョンビョンに入れる白菜キムチと豚肉の下ごしらえ。大根の千切りキムチやもやしナムルを入れる調理法もある
フライパンを温めてメミルの生地の薄焼きを作る。この時、薄ければ薄いほど食感が柔らかくておいしい。薄焼きの上に具を乗せて焼く