文化

2020.07.31



[イ・ギョンミ]
[映像=チェ・テスン]

「Kゾンビ」って知ってる?

変な音を立てて、身体をひねる。まるで骨が折れたかのように、首・腕・骨盤など、体にあるすべての関節を鳴らす。障害物などものともせず、がむしゃらに人間に向かっていく。噛まれた人間も、ゾンビになってしまい、どんどん数が増える。

韓国映画に登場したゾンビが「Kゾンビ」と呼ばれ、韓国だけでなく、世界の人々を魅了している。「Kゾンビ」とは、その名の通り「韓国のゾンビ」のこと。Kは、韓国(KOREA)の頭文字で、K-POPやK防疫のような感じ。

今、このKゾンビの人気ぶりを見せるのが映画「新感染半島 ファイナル・ステージ」。ゾンビだらけになった韓半島を舞台に展開するこの映画は、海外190カ国に販売決定、台湾・シンガポール・マレーシア・ベトナムなどで映画ランキング1位を維持している。韓国でも公開以来、観客動員数359万人を突破し(7日時点)、新型コロナウイルスの感染拡大が直撃した韓国の映画業界で、回復の起爆剤となっている。

朝鮮時代を舞台にしたゾンビもの「キングダム」も、世界的人気を誇る。動画配信サービスのNetflixが制作したドラマで、合計190カ国で配信され、27の言語で字幕制作が行われた。また、12言語で吹き替え版も作られ、「史上最高のゾンビもの」「ゾンビものはこうであるべき」などと、海外のメディアやファンも称賛している。

Kゾンビの本格的なスタートと言える作品は、映画「新感染 ファイナル・エクスプレス」。2016年7月に韓国で公開され、1157万人もの観客を動員した大ヒット映画である。また、海外160カ国・地域でも公開され、韓国ゾンビものも世界に通じるということを証明した。



他国のゾンビとは違うKゾンビの動きに世界が注目


映画「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」「ドーン・オブ・ザ・デッド」「ワールド・ウォーZ」、アメリカのテレビドラマ「ウォーキング・デッド」など、ゾンビものは、西洋では昔から愛されているジャンルの一つ。それに比べて、韓国では馴染みがないと思われていたが、今や状況が変わった。Kゾンビが海外のファンを取り込めた理由について専門家は、西洋のゾンビとは異なる動きやキャラクターが持つ力、さらに俳優の演技力まで加わった結果と分析する。

韓国でゾンビ専門家として知られる鄭明燮(チョン・ミョンソプ)さんは、Kゾンビの動きに注目する。「韓国のゾンビは、スピードが速く、アクロバティックな動きをする」とし、「韓国独特のパリパリ文化から生まれたスピード感が、見る側に緊張感を与える」と説明する。「パリパリ」は、韓国語で「早く、早く」、または「急げ、急げ」という意味で、物事を急かす文化を指す。

鄭さんは、「外国のゾンビが、ただ動いているだけなら、Kゾンビは、ゾンビの動作や姿勢を研究し、さらに発展させたもの」とし、「ゾンビ分野において、韓国は遅れていたため、参考になるデータが多く、そのデータを積極的に活用した」と評価した。

アニメーション「ソウル駅」から、映画「新感染ファイナル・エクスプレス」「新感染半島 ファイナル・ステージ」まで、ゾンビをテーマにした作品を制作したヨン・サンホ監督は、Kゾンビの特徴について「単なる怪物のような生命体ではなく、さっきまで隣同士・仲間のような同じ人間だった存在」と話した。ただ処理すべき存在として認識される、他の国のゾンビと違って、わけありゾンビということ。

「新感染 ファイナル・エクスプレス」「キングダム」「新感染半島 ファイナル・ステージ」のゾンビの振り付けを担当した田穎(チョン・ヨン)さんは、「コンピュータグラフィックス(CG)なしに、奇怪な動きをし、ダイナミックにぶつかり合いながら走るゾンビ俳優」を、Kゾンビの特徴として挙げた。その上で、「外国人がKゾンビにハマったのは、韓国ゾンビものが持つ世界観や韓国ならではの伝統的なものが融合したため」と説明した。

多数の映画でゾンビを演じた韓聖洙さん=韓聖洙さんのインスタグラム(左)、チェ・テスン撮影(右)


Kゾンビが完成する過程

攻撃対象が現れると、猛烈に走るゾンビ群団。ゾンビたちは、やみくもに走っているわけではない。何のルールもなく、ただ体をひねっているわけでもない。ゾンビの基本ルールを守り、それぞれの作品に合わせて、ユニークなゾンビを演出するため、監督や振付師が作ったコンセプトに合わせて演技する。

田さんは、「新感染 ファイナル・エクスプレス」は狂犬病を、「キングダム」は夢遊病をモチーフにして、振り付けを完成した。これを基にして、「新感染 ファイナル・エクスプレス」では頭を振り立てるゾンビ、「キングダム」では、手を使わずに頭と胸が先に出るゾンビになるよう、俳優らに要請した。「新感染半島 ファイナル・ステージ」では、四つ足で走る、さらに攻撃性の高いゾンビだった。一見、全部同じようなゾンビに見えるが、このような細かな違いが隠されている。

俳優らは、ゾンビになるため、3~4カ月間、訓練を受ける。歩き方や表情、人を攻撃する際の様子、ゾンビになる瞬間の動きなど、様々な振り付けや演技を学ぶ。また、2時間以上かかる特殊メイクもKゾンビに欠かせない。



# 気軽に知っておきたいKゾンビ情報

「私もKゾンビになりたい!」
多数のゾンビ映画に出演した俳優の韓聖洙(ハン・ソンス)さんは、Kゾンビになれるコツの一つとして「自分自身を捨てること」を挙げる。人のように自己意識ができ、「私は今、いったい何をしているんだろう」と思う瞬間、人のように動くため、ゾンビになれないという。

もう一つ重要なのは、「腕を使わないこと」。

「ゾンビの真似というと、多くの人は、腕を変にひねる」とし、「その瞬間、ゾンビは本物ではなくなる」と指摘する。「腕も、頭も、力を抜いて落としてください。そのまま歩くだけで、あなたはゾンビになれます。むりやりにゾンビの動きを作ろうとしないで、自分をまるごと捨ててください」

「もし、ゾンビに遭遇にしたら?」
鄭さんは、「万が一」ゾンビに遭遇した時の対処法を教えてくれた。

「ゾンビに立ち向かって闘うことは禁物です。とにかく逃げて、安全な場所を探して、そこで救助を待ってください。そのために、数日分の食糧や緊急時に備えたグッズが入っている『防災リュック』を用意してください」

実際にゾンビに遭遇する可能性はないが、「もし会うことになったら」の話。

km137426@korea.kr