文化

2021.10.04


[ユン・ヒヨン、イ・ギョンミ]
[映像=新韓ライフ公式You Tubeチャンネル]

ある女性が保険会社のCMに登場し、魅力的な外見で驚くほどのダンスパフォーマンスを披露する。同CMは、投稿してから1カ月足らずで再生回数1千万を突破した。ここで注目したいポイントがある。この女性は「バーチャルヒューマン」であることだ。ネットユーザーの間では「全然気づかなかった」「本物の人間のように見える。びっくりした」といった声があがっている。

バーチャルヒューマンが全世界で活躍する時代になった。人工知能(AI)といった科学技術の発展により、バーチャルヒューマンの活動においてハードルとなっていた「不気味の谷」を越えて、見るたびに現実味を帯びていく。「不気味の谷」とは、人型ロボットなど、人間ではない存在があまりにも人間に近い時に、見るものに違和感や嫌悪感を抱かせるという理論で、1970年に日本のロボット工学者である森政弘が名付けた。

すでに世界では、Lil Miquela(リル・ミケラ、米国)、imma(日本)、Shudu(シュドゥ、英国)といったバーチャルヒューマンがインフルエンサーやセレブ、広告のモデルとして活動している。最近は韓国も参入し、優秀な技術力を披露している。外見だけでなく、個性的な性格や自我を持ち、実際の人間のようにコミュニケーションする韓国のバーチャルヒューマンを紹介する。

ロジ


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バーチャルインフルエンサーであるロジ=ロジInstagram


ロジは、韓国初のAIを基盤とするバーチャルヒューマン。広告・アニメーション・映画・映像キャラクター制作などを手掛ける企業LOCUSの子会社である「サイダススタジオエックス」が制作した。サイダススタジオエックス側は、ロジ開発の背景について「外国で活発に行われている『バーチャルインフルエンサー』マーケティングを見て、IT大国である韓国も参加しなければならないと思った」と説明した。

ロジのInstgramフォロワー数は約4万8千人。ロジは、MZ世代(ミレニアル世代とZ世代、1980~2000年代生まれ)が好ましいと感じる顔立ちや800あまりの表情、代役が撮影した仕草などを3D技術で組み合わせ、作られた。制作会社は「ロジのInstgramアカウントを始めてから3カ月間、ロジがバーチャルモデルであることに誰も気づかなかった」と伝えた。

新型コロナウイルスのパンデミック下、海外旅行が厳しい時であるにも関わらず、ロジはマスクを着用せずに世界を旅する。旅先で写真を撮ってSNSに投稿する。他には、「ゼロウェイスト」「アップサイクル」といった環境に配慮した活動にも積極的に参加するなど、自分の意見を堂々と伝える。

韓国の保険会社である新韓ライフは、ロジを自社の広告モデルに起用した。従来の硬いイメージから脱し、若者の心をつかむという狙いがある。この広告は7月1日に公開されて以来、たった20日で再生回数1千万回を突破した。8月10日からは、自動車メーカー「シボレー」のモデルとしての活動も始めた。またホテルからもオファーがあり、色んなホテルを訪問して、個人のInstgramにその内容をアップした。このように、バーチャルインフルエンサーは、スキャンダルの恐れがないことや、時間と場所の制約がないことから、マーケティング業界において人気が高まっている。

ルイ


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バーチャルユ―チューバ「ルイ」=RuiCovery YouTube


ルイは、カバー曲の動画を投稿するYou Tubeチャンネル「ルイカバリー(RuiCovery)」を運営するバーチャルユーチューバーである。登録者数は、約2万6千人に上る。ロジとは異なって、「ディープフェイク技術」を活用したもの。この技術は、実際の人の体と声に、AIディープラーニング技術で数人の顔のデータを集めて作った仮想の顔を合成するもの。ルイを開発した「ディオビ・スタジオ」の担当者は「実在する人の顔の微妙な表情変化や感情を反映し、仮想の顔を合成する。ルイが他のバーチャルヒューマンに比べ、もっと自然に感じる理由がそこにある」と説明した。様々な曲のカバーはもちろん、日常生活の様子も共有するルイ。最近は、韓国のテレビショッピング大手CJ ONSTYLEのモデルに起用されるなど、バーチャルインフルエンサーとして大活躍している。


aespaのアバター「ae」

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ガールズグループaespaのメンバーと、アバターメンバー「ae」が一緒に取った団体写真=aespa公式YouTube


K-POP世界にもバーチャルヒューマンが登場した。Red VelvetやEXOなど、多くのK-POPスターが所属するSMエンターテインメントは、ガールズグループ「aespa(エスパ)」を通じて、メタバースを利用した新しい世界観を発表した。aespaは、仮想世界に存在するアバターのメンバーである「ae(アイ)」と現実世界のメンバーがシンクを通じてコミュニケーションするという未来志向的なコンセプトを持っている。現実世界のメンバーの外見や実力、音楽性と共に、仮想世界のメンバーのIT技術力がMZ世代に受けた。「ae」は、ミュージックビデオはもちろん、音楽番組にも登場する。

キム・レア

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LG電子が開発したバーチャルヒューマン「キム・レア」=キム・レアInstagram


キム・レアは、韓国の大手電機メーカーLG電子がマーケティングに活用するために開発したバーチャルヒューマンである。名前には、「未来から来た子ども」という意味が込められている。LG電子は今年1月、世界最大級の家電・技術見本市「CES2021」で23歳のキム・レアを演説者として起用した。レアは流ちょうな英語で3分間発表した。

レアはあるファッション誌とのインタビューで「ソウルで生れてすぐ、家族みんなで慶尚南道(キョンサンナムド)・巨済(コジェ)島のクジョラ村へ引っ越した。日常の様々な音で音楽を作るマシュー・ハーバートといったアーティストの音楽を聴き、ミュージシャンになる夢を育んできた」とし、自分のことをシンガーソングライター兼DJと紹介した。具体的かつ現実的な彼女の生活は、実在の人物のように感じられる。仮想人物と実在の人物を区別せず、そのまま自然に受け止めて「コミュニケーション」する若い世代を狙ったからである。

hyyoon@korea.kr