食・旅行

2022.12.23

Hidden Charms of Korea_sool

(左から)パク・ジェボム氏、イ・ジェウク氏、パク・ロクダム氏、キム・ヒジュン氏

(左から)パク・ジェボム氏、イ・ジェウク氏、パク・ロクダム氏、キム・ヒジュン氏


[ソウル=ミン・イェジ]
[写真=キム・スンジュ]
[映像=イ・ジュニョン]

「江南スタイル」で有名な韓国歌手PSYの曲「HANGOVER」のミュージックビデオを見ると、韓国の酒文化がうかがえる。乾杯しては相手の視線を避け、横向きになって酒を飲む。焼酎とビールを混ぜた「爆弾酒」を飲んだ後、サウナに行って二日酔いを治す。韓国酒そのものについては厳しく評価する外国人であっても、様々な形で楽しめる韓国の酒文化については高く評価する。この曲がリリースされてからもう8年。韓国の酒類市場や飲酒文化にも大きな変化が起きた。

KOREA.netは、酒に関する分野で活動する専門家4人から韓国の酒文化について聞いた。4人の専門家は、ワン焼酎でブームを起こした「ワンスピリット」のパク・ジェボム代表とキム・ヒジュン最高コミュニケーション責任者(CCO)、酒のサブスクサービスを提供する「酒談話」のイ・ジェウク代表、800種類以上の伝統酒を復元したパク・ロクダム韓国伝統酒研究所長。


―2022年、韓国の酒類市場のキーワードといえば、「ワン焼酎」を挙げるほど、旋風的な人気を集めた。焼酎を、その中でも特に蒸留式を選んだ理由は。

パク・ジェボム: :年を重ねるにつれ、うるさい音楽が流れる飲み会より、落ち着いた雰囲気で気楽に話し合いながら酒を飲む方が好きになった。自分で焼酎を造ろうと決めて、酒について勉強すればするほど、もっと良い酒を造りたいと思うようになった。「緑の瓶」の酒を、高級だとか質が高いと思っている人は今までいなかったと思う。そんなイメージを変えたかったし、造ってみて自分自身が韓国の蒸留式焼酎に誇りを持つようになった。蒸留式焼酎は非常に「貴重な酒」だ。個人的にオーガニックやヘルシーなものにこだわっていることも影響していると思う。どうせ飲むなら、良い酒を飲みたいと思うだろう。

パク・ジェボム、キム・ヒジュン:もちろん、私たちも「緑の瓶」の希釈式焼酎が好きで、よく飲む。ただ、それが韓国酒の全部ではないということを伝えたい。

キム・ヒジュン氏

キム・ヒジュン氏


―韓国の飲み会はどうか。

キム・ヒジュン:社会人になったばかり頃は、自分が好きではない種類の酒を飲まされたり、上司の機嫌を取ったりしていた。正直、気に入らない酒文化だ。

パク・ジェボム:でも、飲み会に行って一緒に酒を飲むと、友情が深まって仲良くなると思った。だから飲み会に行くのだと。

キム・ヒジュン:私もそう思った。酒と料理の「ペアリング(お酒との相性の良い食材や料理との組み合わせ)」があるように、人の間でもペアリングがあると思う。

イ・ジェウク氏

イ・ジェウク氏


―韓国初の伝統酒サブスクサービスを提供するプラットフォームを立ち上げた。20代という年齢を聞いてさらに驚いた。いつから伝統酒に興味を持つようになったのか。

イ・ジェウク:香港で大学に通っていたので、韓国の伝統酒についてよく知らなかった。偶然、伝統酒博覧会に行って、伝統酒の種類がこんなにたくさんあることを知り、ショックを受けた。ネット購入ができる伝統酒があったが、購入方法がよく分からず、どんな伝統酒を買えばいいかも迷った。自分で解決しようと、このサービスをスタートした。

―どんな伝統酒を選べばいいかをどのように教えてくれるのか。

イ・ジェウク:これまでは、「伝統酒なら何でもいい」「歴史が長い」といった説明だけだった。しかし、これでは若者に絶対に受けない。若者の「人生で最も素敵な写真が撮りたい」という気持ちに注目し、重要なイベントの時、「人生で最も意味のある良い伝統酒が飲みたい」という気持ちにこたえられるようにアドバイスする。どんな場でどんな酒がふさわしいか、その酒に良く合うつまみな何なのか、味はどうかなどを紹介する。

―伝統酒サブスクサービスの利用者について

イ・ジェウク:私たちの顧客は、サブスクサービスを通じて、価値や意味のある消費がしたいと考えている人たちである。コンビニでよく見かける焼酎やビールではなく、毎月、新たな経験を求めて、けして安くはない料金を払う消費者たちだ。彼らは、料理と酒がもたらす価値を、他の人よりも重要視している。たかが一杯、されど一杯。ならば、良質で意味のある消費を、と望む顧客だ。

パク・ロクダム氏

パク・ロクダム氏


―韓国の酒文化に欠かせないのが「爆弾酒」だ。いつからできた文化か。

パク・ロクダム:爆弾酒の文化は、つい最近できたもので、祖先が楽しんだものではない。産業化が進み、安い酒が登場したことが影響した。また、酒を飲む場所も家ではなく、店へと変化したこともある。店で早く飲んで酔う方法として、アルコール度数の高い焼酎に発酵酒を混ぜて飲む「爆弾酒」という文化ができたのだ。値段が安いため、つい飲みすぎてしまうのである。

―それでは、韓国人が酒を楽しむ方法とは。

パク・ロクダム:食事をしながら酒を飲む「晩酌」文化だ。食事をすることでお腹がいっぱいになるため、酒を飲みすぎることがなかった。何といっても、韓国の酒文化には風流があった。ソンビは酒を飲みながら詩を作り、音楽や踊りを合わせたり、書画を残したりするなど、芸術のジャンルと言えるものを作り出した。ただ、飲めや歌えの酒文化からは学べることがない。

―昔と今は違う。朝鮮時代と今を比べるのは無理があるのでは。

パク・ロクダム:朝鮮時代に戻るべきだと言っているわけではない。韓国の酒文化をもう一度、正しく整理する必要がある。若者が韓国の伝統酒そのものについて、造り方について、飲み方について勉強をするようになったことは、良い兆しだと思う。私が25年前、研究所を設立した時は、酒を学ぶために来る人の平均年齢は58歳だった。非常に稀に30代や40代が1~2人いただけだ。今は平均年齢が30代にまでになった。すでに変化が始まっているのだ。10年後、20年後にはこの世代が社会をリードし、韓国の酒文化は(良い方向に)変わっていくだろうという期待を抱いている。

―韓国の酒文化について外国人に伝えたいことは。

パク・ロクダム:「韓国のマッコリ」と言われると、外国人が真っ先に思い浮かぶのは、黄色の洋銀のやかんに入れて飲むことだそうだ。それは韓国戦争が終わってから20年間だけのことで、韓国が最も貧しい時期だった。韓国は、高麗青磁、朝鮮白磁、陶器、真鍮の器を作った国だ。そのことを知ってほしい。

jesimin@korea.kr