米国の大型スーパーマーケットの店頭に貼られた、冷凍キンパの品切れを知らせる案内文=韓国農水産食品流通公社
[キム・ヘリン]
「みんな冷凍キンパ、もう買わないで。毎日行っても毎日売り切れ。見つけた時に何個かまとめ買いしておけばよかったかな…」
米国のある消費者がSNSに、このようなコメントを投稿した。冷凍キンパが買いたいけど買えない状況に愚痴をこぼした。
韓国のキンパが米国人の口を魅了している。韓国の中小企業「オルゴッ」が米国のある大型スーパーマーケットに輸出している冷凍キンパ。今年8月に発売されて以来、飛ぶように売れている。1人当たり購入できる数量が制限される店舗も一部あったというほど、発売から1カ月足らずで品薄状態が続いている。
このような爆発的な人気の背景には、あるTikTok動画がある。今年8月、韓国系のセラ・アン(Sarah Ahn)氏が投稿した、母親と冷凍キンパを食べる動画。この動画は投稿から3週間で再生回数1100万回以上を記録した。米NBCは9月6日、「韓国の冷凍キンパがTikTokでバズり、全国的に品薄となった」と題した記事を掲載し、最近米国で話題となっているキンパブームについて紹介した。
米国のセラ・アン氏が投稿した、韓国産冷凍キンパを食べる様子=セラ・アン氏のTikTok動画キャプチャー
最近、韓国料理に対する関心が世界的に高まっているとはいえ、これほどだとは。KOREA.netは、消費者の心を奪った秘訣を探るため、話題のキンパ工場が位置する慶尚北道・亀尾(クミ)市に向かった。
ソウルから列車で3時間。工場に到着すると、ゴボウの甘い香りが漂ってきた。
靴を衛生シューズに履き替え、衛生服と衛生キャップを着用した後、ついに工場の中へ。ゴボウの香りにゴマ油の香ばしい匂いが加わった。手入れされたほうれん草とニンジンも見えた。
作業員がキンパの具となる材料をご飯の上に乗せると、機械がそれを巻いて、一定の厚さで切る。切ったキンパをプラスチックのトレイに入れて、急速冷凍した後、包装すれば完成。キンパは、人間の努力と機械の正確さが調和して作られていた。
完璧に作られたキンパ(上)、急速冷凍したキンパ(下)=キム・ヘリン撮影
果たしてどんな味なのだろう。冷凍キンパを温めて食べてみた。思ったより新鮮な味がしてびっくり。ほとんどのキンパは、電子レンジで一度温めると、中から水分が出てきて、全体的に柔らかくなりすぎてしまうが、このキンパは何か違う。温めてから少し待った後、またひとつ食べてみた。ご飯と野菜の食感がそのまま感じられ、食材の香りもそのままだった。
この人気のキンパを生産する企業「オルゴッ」の李昊鎭(イ・ホジン)代表は、「キンパを冷凍させる時間が長くなるほど、水分が蒸発し、解凍した後の食感が悪くなる。オルゴッは、45分以内にキンパを急速冷凍する技術を使い、水分損失率を減らした」と説明した。また、「電子レンジで温める時間を考え、ニンジンなどの材料を完全に調理するのではなく、約70%ほどに煮て冷凍する」と付け加えた。
オルゴッは、キンパの主な材料が野菜であることも、ベジタリアンが多くて健康食を好む米国の消費者に受けたと分析する。この他、価格競争力も追い風となった。キンパ9ピースが入っている製品の価格は3.99ドル(約590円)。米国現地の韓国食料品店で販売されるキンパは7~12ドル程度であることに対し、オルゴッが生産するキンパの値段はその半分、または3分の1程度だ。
韓国ドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」の主人公がキンパを食べるシーン=ENAのYouTubeキャプチャー
李代表は、「海外の博覧会に参加すると、すでにほとんどのバイヤーが『キンパ』と『すし』は違う料理であることを知っている」とし、ドラマなどの韓流コンテンツの人気に支えられ、様々な韓国製品に対する好感度が上がっている今、何よりもキンパは「韓国料理」という点が強みだという。
オルゴッは、米国だけでなくメキシコ、ベトナム、香港などにもキンパを輸出している。今後、ハラール認証やビーガン食品としての認証を受け、中東アジアなどへとマーケットシェアを拡大していく予定だ。オルゴッ以外の企業も、冷凍キンパ輸出市場に参入した。慶尚南道・河東(ハドン)郡にある「ボクマンサ」という企業は、去年2月にはフランス、今年8月には英国に冷凍キンパを輸出した。
農林畜産食品部が発表した統計によると、今年10月末の時点で、韓国産農食品の輸出が前年比1.2%増加した。特に、冷凍キンパをはじめとするコメを利用した加工食品の輸出額は、過去最高の1億7600万ドルを記録した。手軽に韓国の食を世界に発信できるK-加工食品の成長が期待される。
kimhyelin211@korea.kr