韓国小説「82年生まれ、キム・ジヨン」の翻訳版。(左上から時計回りに)韓国語版、日本語版、繁体字(台湾)版、ベトナム語版、ハンガリー語版、タイ語版、簡体字(中国)版、スペイン語版=民音社
[大阪=綱嶋菊代(日本)]
世界各国の女性の共感を得た韓国の小説「82年生まれ、キム・ジヨン」(チョ・ナムジュ作家)。
日本語、英語を含む16カ国語で翻訳され、世界各国で読まれています。 米国時事週刊誌タイムの「THE 100 MUST-READ BOOKS OF 2020」(今年読むべき100冊)にも選ばれました。
韓国では2016年に出版され、130万部以上の販売部数を記録し、ベストセラーとなりました。日本では2018年に出版され、20万部以上の発行部数を突破し、注目を集めました。
主人公「キム・ジヨン」という主婦は、会社員の夫と1歳の娘と、ソウル郊外のアパートで暮らしています。1980年代に生まれた韓国の女性に最も多く付けられた名前である「ジヨン」。どこにでもいるごく普通の女性です。
彼女は、誕生から就職、結婚、出産に至るまで様々な男女の不平等問題を経験しました。ある日、心のバランスを崩し、精神科に通院することになりました。カウセリングを受けることによって今まで抱え込んでいた女性への性差別、働く既婚女性や専業主婦の苦悩が溢れ出てきます。
小説を基にした同名タイトルの映画が2020年10月に日本で上映され、大ヒットしました。
82年生まれの韓国女性の物語がなぜ、日本の女性の共感を呼ぶのか?
筑摩書房の担当編集者の井口かおりさんは、朝日新聞とのインタビューで「想定以上の反応。東京医大の不正入試問題など、露骨な女性差別を目の当たりにさせられた中、共感を呼んだのだと思う」と語りました。
私は、女性として生きていくにあたって、幼少期、学生、就活、仕事、結婚と、変換時期に誰もが経験する女性だからゆえのなぜ?という疑問、葛藤、孤独、どこかしらに共感ができるからだと思います。
1980年代の日本は、働く女性が急激に増えた転換期でした。
それ以前は結婚したら専業主婦になり子育てに専念するために仕事を辞める女性がほとんどでした。
一方、韓国は儒教の影響で、家父長制が強く、男性優位の時代で、
日本にもあった、敗戦までの男子尊重の家長主義を思い出します。
私は、「ジヨン」を取り巻く社会の構造や文化、彼女が受ける圧迫感に共感できました。彼女は、結婚しても仕事を続けたかったのですが、妊娠を機に仕事を辞めることになります。
彼女にとって、仕事はお金を稼ぐ為だけのただの手段ではなく、「社会的な存在」として認めてもらえるものだったのです。
このように日韓両国で話題を集めた理由は、両国における過去の女性像や、社会環境が類似しているからではないかと思います。
*この記事は、日本のコリアネット名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。
eykim86@korea.kr