月亭里ビーチ=5月6日、済州島、増岡優沙撮影
[済州=増岡優沙(日本)]
[映像=diphda_jeju Instagram]
近年、地球温暖化に伴う海水温上昇やプラスチックごみなどによって生じる海洋汚染が全世界で問題視されています。6月27日(現地時間)、ポルトガルで始まった国連海洋会議でグテーレス国連事務総長は「残念ながら私たちは海の大切さを忘れ『海洋危機』と呼ばざるを得ない状況に直面している」と話しました。
韓国の南西に位置する済州島でも、美しい海とまた海に不法投棄された漁具は船舶のスクリューに絡まったり対比するように海岸に流れ着いたごみが目につきます。 海洋廃棄物とは海または海岸に流入・投棄・放置された廃棄物を指します。
海洋廃棄物によって生じるマイクロプラスチックは魚介類の産卵・海藻類の住み場など海の生態系に悪影響を及ぼしています。マイクロプラスチックは海の生態系だけではなく私たちの体内にも取り込まれています。マイクロプラスチックを食べた小魚やプランクトンを大きな魚や動物が食し、その魚が私たちの食卓に上がることにより、私たちは10日間でクレジットカード2枚分のマイクロプラスチックを食べていると言われています。
2020年に韓国で回収された海洋廃棄物は2016年(7.1万トン)比約2倍増の13.8万トンと1年間に発生する海洋廃棄物の約95%(推定14.5トン)におよびます。海洋廃棄物の回収量が増えた背景には、海洋ごみ関係予算の大幅な増額があります。韓国・海洋水産部は2016年に433億ウォンだった海洋ごみ関係予算を2021年には1306億ウォンと195%増額、その結果この10年間韓国全土で回収された海洋廃棄物は101万トンに達しました。
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韓国では環境を守るため、プロギングという活動がSNSを通じて広まっています。
プロギングとはスウェーデン語の「plocka upp(拾う)」と英語の「jogging(走る)」を合わせた造語で、ジョギングをしながらごみを拾う活動を指します。 必ずしもジョギング中にする訳ではなく、散歩がてらなど時間と場所に関係なくごみ拾いで環境を守る取り組みもプロギングと言えます。 韓国ではインスタグラムにおいてハッシュタグ「#플로깅 (プロギング)」がついた投稿件数は10万件に達する(7月1日現在)など、MZ世代を中心に流行しています。
日本でも一般社団法人プロギングジャパンを中心に全国でプロギングや関連イベントが実施されています。また、ごみ袋・軍手・トングなどを準備すれば日本全国どこでもプロギングは可能です。
韓国の南西に位置する済州島は、自然豊かで風光明媚(めいび)な風景で知られています。私はその済州島の美しい海のために少しでも役に立てればと思い、済州島の北西部に位置する翰林(ハンリム)港で行われた6月27日、プロギングに参加してきました。
各自麻袋や軍手、トングを受け取り活動スタート。昔から風・石・女性が多い「三多島」と呼ばれる済州島ですが、この日は台風並みの風だったため、強風にあおられないように注意しながら活動しました。ごみの種類はブイや漁網のほか、お菓子や生活用品の袋、洗剤の容器、発泡スチロールなど多様でした。
海洋ごみ=6月27日、済州島、diphda_jeju Instagram
10代から30代の6名が参加したこの日は、活動を始めてからは分からないことを質問したり、お互いに手伝い合ったりと明るい雰囲気の活動でした。
活動前は大きすぎると感じた150Lの麻袋は、1時間ほどですぐにいっぱいになり、海洋ごみの多さを実感しました。大きなごみはトングでつかむことができますが、小さく割れてしまった発泡スチロールやプラスチック製袋の切れ端などはつかむことが難しく、すべてのごみを回収するのはほとんど不可能に近いと思いました。
回収した150Lの麻袋、6袋分=6月27日、済州島、増岡優沙撮影
海洋ごみは一般のごみと違い、ほとんどが回収後に脱塩作業が必要です。しかし今のところ韓国国内に脱塩のための専門施設は無く、環境部が23年までに脱塩・選別用の処理施設2か所を推進中です。
また海洋ごみはリサイクルできるものの、脱塩など過程が複雑な海洋ごみはそのリサイクル率がかなり低いのが現状です。そのため、ほとんどの海洋ごみは脱塩後に焼却、もしくは埋め立てされています。
海洋ごみが一般ごみと一緒に処理されると、焼却された場合は焼却用の機械を腐食し、埋め立ての時には土壌を汚染するため、海洋ごみは麻袋に入れ区別しなければいけません。 さらに自治体に回収を要請しない場合、麻袋が腐食しせっかく回収した海洋ごみがまた海へ戻ってしまいます。
放置され腐敗した麻袋=6月27日、済州島、増岡優沙撮影
プロギングの主催者でありdiphda jeju代表のビョン・スビン氏は、友人が海で失くしたダイビングマスクを見つけた際に魚の噛み跡を見て、海に住む生き物が海のごみを食べ最終的に私たちに戻ってくることに気づき活動を始めたそうです。2021年には年間165回のプロギングを実施、今後もプロギングを実施するとともにゼロウェイストに関心を向けたいとのことです。
韓国では使い捨て製品の使用規制、日本でもビニール袋の有料化などが進んでいます。しかし、なぜ使い捨て製品やビニール袋の使用を減らさなければいけないのかを考え、減らすことによって何が変わるのか体感できる場面はほとんどなかったように思います。
今回のプロギング活動では集めても集めても減らない大量のごみを目の当たりにし、私たちの行動一つで海の環境を少しでも変えられるのではないかと感じました。
*この記事は、日本のコリアネット名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。
eykim86@korea.kr