名誉記者団

2023.06.13

他の言語で読む
  • 한국어
  • English
  • 日本語
  • 中文
  • العربية
  • Español
  • Français
  • Deutsch
  • Pусский
  • Tiếng Việt
  • Indonesian
展示室全体の様子。それぞれガラス張りのショーケースに展示されている。

展示室全体の様子。それぞれガラス張りのショーケースに展示されている=長谷川明撮影


【文=長谷川明音】
【動画=リウム美術館YouTubeチャンネル】

朝鮮時代の白磁、みなさんは直接見たことがありますか。

韓国・ソウル龍山区(ヨンサング)にあるリウム美術館では2月28日から5月28日まで、朝鮮時代の白磁の美しさが感じられる「朝鮮の白磁、君子志向」という展示が行われました。韓国の国家指定文化財の白磁31点(国宝10点、宝物21点)や、日本から取り寄せた34点の作品を含む計185点の陶磁器が展示されました。私は4月12日、鑑賞してきました。

そもそも「白磁」とは何でしょう。コトバンクでは「白色磁胎に透明釉をかけた陶器の総称」と定義しています。中国で発明されたもので、その母体は青磁となっています。青磁の素地と釉の中から鉄分を除去して作られたものが白磁です。時代や地方によって胎土や釉調に多様性が見られます。あたたかみのある乳白色が主な特徴として挙げられます。

上の写真のように、展示室は照明を落としてあり、作品の位置にスポットライトが当てられているため、作品がより際立って見えるようになっています。

これだけたくさんの白磁を一度に目にしたのは初めてだったので、圧巻でした。展示を見にきたお客さんも一つ一つ作品をじっくりと堪能しながら、鑑賞していました。私もこの展示室の中を何周も回りながら鑑賞しました。

作品のうち、個人的に気に入った作品3点をご紹介します。

まず1点目はこちらの白磁です。

「Jar Decorated with Grapes」 国宝、国立中央博物館所蔵、18世紀前半=長谷川明撮影

「Jar Decorated with Grapes」 国宝、国立中央博物館所蔵、18世紀前半=長谷川明撮影


こちらは国宝に指定されている作品です。韓国ソウルに位置する国立中央博物館の所蔵品で、1962年12月20日に国宝に指定されています。18世紀初めに作られた朝鮮時代の白磁で、表面には葡萄が描かれています。特有の色合いや優雅な趣が特徴の白磁です。

まず、18世紀初めに作られたものとは思えないほど保存状態が良かったことに驚かされました。また、色合いやデザインから感じられる力強さ、凛とした佇まいが魅力的で非常に印象に残っています。

他の作品も見ていきましょう。

「Jar Decorated with Plum Blossoms and Bamboo」 海外所蔵、15−16世紀=長谷川明撮影

「Jar Decorated with Plum Blossoms and Bamboo」 海外所蔵、15−16世紀=長谷川明撮影


こちらは、大阪市立東洋陶磁器美術館の所蔵品で、15世紀から16世紀頃に作られた白磁です。朝鮮時代初期の青華白磁の中でも華やかな作品として知られる白磁です。ちなみに、青華白磁とは14世紀前半に元で初めて開発され、白磁の表面に描かれた青い絵が特徴の白磁です。

純白の素地に薄い青色で梅と竹が描かれています。まるで水彩画が描かれているようなこちらの白磁は非常に華やかなデザインですが、繊細で上品な印象を受けます。個人的に華やかでありながらも、派手すぎず控えめなところが気に入りました。

続いてはこちら。

「Jar」 ソウル歴史博物館所蔵、15−16世紀=長谷川明撮影

「Jar」 ソウル歴史博物館所蔵、15−16世紀=長谷川明撮影


ソウル歴史博物館所蔵の白磁です。こちらも15世紀から16世紀前に作られたものです。安定感のある形や澄んだ色合いの白素地が特徴の白磁です。素朴ながらも優雅な印象を受けます。

こちらの白磁は表面に何も描かれていない非常にシンプルなデザインですが、薄暗い会場の中で白素地がスポットライトに照らされ、存在感を放っていました。たくさんの白磁が展示されていましたが、美しさが際立っていたので、記憶に残っています。上品で全体的に整っており、人を惹きつけるような魅力のある白磁だと感じました。 そろそろ次の展示スペースに移動しましょう。

先ほどとは異なり、明るい展示スペース=長谷川明撮影

先ほどとは異なり、明るい展示スペース=長谷川明撮影


なるべく人がいない時間に撮影したかったのですが、老若男女問わず多くの観覧客で溢れていました。それでは、こちらの展示空間で印象に残っている作品をご紹介します。こちらの空間では様々な青華白磁が展示されてます。白素地に青色で染付が施された青華白磁に描かれた様々な模様を鑑賞することができます。

(左から)Jar Decorated with Dragons and Clouds:大阪市立東洋陶磁美術館、18世紀。Bottle Decorated with Peonies:東京国立博物館、1723-1735年頃。Beveled Jar Decorated with Peonies and Camellias:大阪私立東洋陶磁美術館所蔵、17世紀後半=長谷川明撮影

(左から)Jar Decorated with Dragons and Clouds:大阪市立東洋陶磁美術館、18世紀。Bottle Decorated with Peonies:東京国立博物館、1723-1735年頃。Beveled Jar Decorated with Peonies and Camellias:大阪私立東洋陶磁美術館所蔵、17世紀後半=長谷川明撮影


まずはこちらの作品(上の写真で左)。18世紀の朝鮮時代に作られた白磁で、白素地に龍が描かれています。高さ60cmと、かなり大きめの白磁です。曲線美が印象的です。

韓国の隣国である中国と日本の作品も展示されていました。雅やかな佇まいが印象的な白磁です。(上の写真で右側)左側の白磁は1723年から1735年頃に中国で作られたもので、右側は江戸時代に作られたものです。

日本の白磁は、まるで着物の柄のような可愛らしい花の絵が描かれています。こうやって並べてみると、違いを比較しやすいと思いました。 白磁の模様に各国の趣が表れていたのが大変興味深かったです。

そして、最後に今回の展示の目玉となる作品をご紹介します。

5月7日、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の妻、金建希(キム・ゴンヒ)夫人(右)と岸田文雄首相の妻裕子夫人が共に白磁を鑑賞する様子。両夫人が鑑賞しているあの白磁が、今回の展示で最も存在感を放っている作品だと感じた=大韓民国大統領室

5月7日、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の妻、金建希(キム・ゴンヒ)夫人(右)と岸田文雄首相の妻裕子夫人が共に白磁を鑑賞する様子。両夫人が鑑賞しているあの白磁が、今回の展示で最も存在感を放っている作品だと感じた=大韓民国大統領室


こちらの白磁は個人所蔵のもので、18世紀に作られたものです。簡潔な造形性に控えめな色味、柔らかで優美な曲線美が特徴的なこちらの白磁は、静かに存在感を放って調和をなしています。光沢感やフォルムが非常に美しい白磁です。

展示の一番最後に展示されていたこちらの作品が今回の展示で最も存在感を放っている作品だと感じました。緩やかな曲線を描く輪郭に沿って光沢を放つこちらの白磁、触れずとも滑らかさが伝わってきました。間近でみることはできませんでしたが、遠目でも十分にその美しさを堪能できました。

今回の展示では、様々な種類の展示を一度に鑑賞することができました。展示作品が作られた時代から時間は流れ、人々の生活や環境も大きく変化しましたが、白磁の美しさと人間の美的感覚はそのままであるように感じました。むしろ、流れた時間の分だけ一層味わい深くなったようにも感じました。

今回紹介したこちらの展示ですが、5月7日と8日に岸田文夫首相が訪韓した際、最終日の8日に岸田首相夫人の裕子氏と韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領夫人の金建希望(キム・ゴンヒ)氏が共に鑑賞したそうです。両婦人のリウム美術館鑑賞に関するニュースは日韓両国で報じられました。

金夫人は「両国の相互協力による文化交流と和合の展示」と述べ、「今後も様々な分野における両国間の交流が活発化することを願う」と述べました。また、裕子夫人は金夫人に対し「日韓黒龍が活発化していることを嬉しく思う」と伝えたそうです。

私が紹介したリウム美術館での展示は終了してしまいましたが、もし白磁に興味がある方はソウル市にある国立中央博物館や梨花女子大学博物館などでも鑑賞できるので、ぜひ調べてみてください。


*この記事は、日本のコリアネット名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。


km137426@korea.kr

関連コンテンツ