名誉記者団

2023.08.09

他の言語で読む
  • 한국어
  • English
  • 日本語
  • 中文
  • العربية
  • Español
  • Français
  • Deutsch
  • Pусский
  • Tiếng Việt
  • Indonesian
【文・写真=藤村志乃芙】

サムゲタン。鶏肉、高麗人参、ネギなど体を温める性質を持つ食材がたっぷり入っている

サムゲタン。鶏肉、高麗人参、ネギなど体を温める性質を持つ食材がたっぷり入っている




・滋養をつけたい夏


今年もやってきた暑い季節。日本では夏に負けないよう、季節の変わり目「土用の丑の日」に滋養食であるうなぎを食べる習慣があります。うなぎ屋の店先には、うな丼やうな重を求めてたくさんの人たちが列をなし、そこらじゅうに香ばしい匂いが漂います。 そんな日本の「土用の丑の日」に似た習慣が韓国にもあるんです。


・伏日(복날 ポンナル)とは?

「伏日」(복날 ポンナル)と呼ばれる、暑さが最も厳しい7〜8月の3日間。韓国ではサムゲタン(삼계탕)をはじめとした滋養食、保養食 (보양식 ポヤンシク)を食べて精をつけます。

今年の伏日は以下の通り。この3日間のことを「三伏」(삼복 サムボク)と言います。
初伏(초복 チョボク)7月11日
中伏(중복 チュンボク)7月21日
末伏(말복 マルボク)8月10日


・サムゲタンが食べられるお店へ


訪れたのは、長崎県にある、ギャラリー&カフェ 三花嶺(さんかれい)。店主の坂本由美子さんは薬膳コーディネーターで、韓国には30年以上通い続ける韓国好きです。



繊維がわかるほどほろほろ柔らかく煮込まれた鶏肉は、旨みがたっぷり。

繊維がわかるほどほろほろ柔らかく煮込まれた鶏肉は、旨みがたっぷり。



土鍋(뚝배기 トゥッペギ)でぐつぐつ煮立ったサムゲタン、熱々をいただきます。骨まで崩れるほどやわらかいほろほろの鶏肉、もち米、高麗人参にナツメにネギ、体中に染み渡るようなやさしい味わいのスープがたまりません。ご飯を入れてキムチと一緒に食べるのも最高です。

よく漬かったキムチと一緒に食べる、至福の瞬間。

よく漬かったキムチと一緒に食べる、至福の瞬間。



「日本は韓国に比べて丸鶏が手に入りにくいので、なるべく多くの鶏の部位を仕入れて一緒に煮込んでいます。高麗人参やナツメなどの食材も日本では買いにくいけれど、やっぱり入れた方がおいしいですね。韓国旅行の際にまとめてたくさん買って帰ります」と坂本さんは話します。

・以熱治熱(이열치열 イヨルチヨル)の教え

土鍋に入っているので、最後の一口まで熱々です。食べ進めると体の芯からポカポカと温まるのを感じます。薬膳コーディネーターでもある坂本さんに、サムゲタンを夏に食べるメリットについて伺いました。

サムゲタンについて説明する、ギャラリー&カフェ 三花嶺の店主、坂本由美子さん。

サムゲタンについて説明する、ギャラリー&カフェ 三花嶺の店主、坂本由美子さん。



「日本のうなぎ屋さんのように、伏日の韓国ではサムゲタンのお店に行列ができます。サムゲタンは鶏やもち米、人参にナツメなど体を温める食材がたっぷり。韓国には以熱治熱(이열치열 イヨルチヨル)という言葉があって、熱をもって熱を制す、暑い夏こそ熱いものや辛いものを食べて汗をかくのがよい、とされているんです。

暑いからと冷たいものばかり取っていたら内臓が冷えて食欲が落ちたり、体のだるさが続いたりしますよね。サムゲタンは食欲がない時にも食べやすく、滋養たっぷりで今の時期にぴったりのメニューだと思います」。

熱々のサムゲタン、雑穀米のおにぎり、キムチ。

熱々のサムゲタン、雑穀米のおにぎり、キムチ。



・熱々の後にやってくる시원하다(涼しさ、気持ちよさ)

 熱々のサムゲタンを食べ終わる頃には、汗がじんわりと出て、心地よい涼しさが感じられます。これぞ시원하다(シウォンハダ・シウォナダ)という感覚でしょう。

「涼しい」と訳されることの多いこの시원하다という言葉は、風が吹いて涼しい時に使うかと思えば、熱々のお風呂に入った時にも使います。 熱いスープを飲んだ時、マッサージで肩こりがとれた時、さらには長い間心にとどまっていたモヤモヤが解消したり、厄介だった問題が解決した時にも使います。

涼しい、すっきり、さっぱり、気持ちいい、というような意味を含む言葉で、細やかなニュアンスまで日本語では訳しきることのできない、韓国特有の表現といえるでしょう。

暑い季節に内臓を冷やさない、滋養のあるもので栄養をつけるという伏日の習慣は、夏を健康に乗り切るための偉大な知恵。

今年の夏はあなたも熱々のサムゲタンを食べて、ぜひ시원하다の感覚を味わってみてください。

*この記事は、日本のKOREA.net名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。

hjkoh@korea.kr