オピニオン

2017.07.14

吳泳雨(オ・ヨンウ)文化体育観光部 海外文化広報院長

吳泳雨文化体育観光部海外文化弘報院長

[オ・ヨンウ、イ・ギョンミ]

マジック。辞書の意味は「人の目を別にそらして人をあざむくための手段や方法のたとえ」(出典:小学館)。その意味をよく見ると、実際に不可能なことだと知っていながらも驚いたり感心することである。どうしてだろう。不思議なことであるが、実際にあり得るという期待と幻想が結合するからである。

先月14日、ソウル市内を歩いていた市民は珍しい光景を見た。ビルから垂直に降りながらクロスカントリーをし、湖の上ではスケーティングを楽しみ、光化門(クァンファムン)ではスキージャンプをし、バスにぶら下がったままスノーボードをするこの珍しい風景は2018平昌冬季オリンピック・パラリンピック(平昌冬季オリンピック)とマジックを組み合わせた海外文化弘報院の広報映像製作の現場。世界マジック大会で1位を獲得し、韓国より海外でさらに有名なユ・ホジンマジシャンが披露したマジックは多くの人々の目を引いた。

文化を通じて韓国を世界に知らせる海外文化弘報院は今年に入り、特に平昌冬季オリンピックの広報活動に集中している。前述の広報映像以外にも31カ国の在外韓国文化院に平昌広報館を設け、海外の主要メディアに広告を出し、オリンピックをテーマにしたイベントを行うなど様々な活動を展開している。

来年2月に行われる平昌冬季オリンピックは30年ぶりに韓国で開催される2番目のオリンピックである。1988年にソウルオリンピックが行われた当時は全世界からオリンピックに関心が寄せられた。新しい道路はオリンピック路と名づけられ、オリンピックの名をつけたマンションや公園ができた。また、テレビやラジオからはソウルオリンピックを歌う歌手が後を絶たないほどオリンピックの熱気に包まれていた。戦争の傷跡を乗り越えた韓国の発展した姿を世界に見せたいという気持ちで全国民は一丸となって、「Hand in Hand」を歌いながら力を合わせてオリンピックを成功裏に終わらせた。

しかし、もう一度行われるオリンピックに対する関心はこれまでとは違う。主要都市ではない江原道の平昌(ピョンチャン)で開催されるという地域的特性のためかもしれないし、ソウルオリンピック以来ワールドカップや国際陸上大会など大きな国際大会を相次ぎ開催したため、大規模のスポーツイベントへの関心が薄くなったせいもあるだろう。

でも、平昌冬季オリンピックはいくつかの点から大事な転機を迎えている。江原圏を中心とした国土の均衡ある発展を図り、冬季スポーツ関連産業の活性化に貢献することやITオリンピック、エコオリンピックを通じて韓国の未来ビジョンを世界に知らせ、韓国の価値を高めるきっかけになる可能性があるからである。さらに、今の新政権は北韓と韓国の単一チーム構成を提案した。もしこれが可能になれば、韓半島の緊張を緩和し、世界平和に貢献する平和オリンピックに位置づけられるだろう。

広報責任者の立場からは、ソウルオリンピックのような熱気や声援がうらやましい。しかし、今は権威主義時代のように国が先頭に立ってオリンピックを広報し、国挙げての政策として働きかけることができるわけがない。また限られた予算や人力で進められる官主導の広報は限界があるため、新しい時代にふさわしい斬新な試みや国民の関心が必要である。

そのため、韓国の成熟した民主主義のパワーを世界に見せた「目覚めた市民意識」を平昌冬季オリンピックの成功に向けもう一度発揮してほしい。おおげさな広報イベントではなくても、トラベルバッグに平昌冬季オリンピックマスコットのバッジや人形をつけて出国したり、海外で出会う外国人との対話で平昌冬季オリンピックを話題にするなど小さな実践が平昌冬季オリンピックを知らせる良い方法になるだろう。

前述のように、マジックは不思議なことが実際に起きられるという期待と幻想を前提にする。きちんとした準備と多方面からの広報を通じて平昌冬季オリンピック・パラリンピックで世界の人々が一緒に驚いて歓声を上げるマジックのようなことが実現できることを期待する。

km137426@korea.kr