ファン・ジュンミン
東国大学校文化芸術大学院兼任教授(専攻:グローバル音楽産業)
最近、K-POP産業のマルチレーベル体制が話題になった。マルチレーベルとは、ミュージックエンターテインメント会社が、所属アーティストたちをそれぞれ専担する会社(レーベル)を作って、一つのアーティストまたはチーム(知識財産権)を集中的かつ体系的に管理するシステムだ。ソニー・ミュージック、ユニバーサル・ミュージックなど米国の大手レコード会社ではよくある形である。国内ではJYPエンターテインメント、HYBE、SMエンターテインメントなどがマルチレーベル体制を確立している。
全世界の音楽産業を先導する米国のレコード会社では、各アーティストの特性や求めるジャンルに合わせて多様なレーベル会社を傘下に置いている。アーティストマネジメントの構造も、韓国とは大きく異なる。まず、契約の主体が会社ではなくアーティストだ。アーティストがマネージャーと契約を結び、マネージャーがアーティストを管理および代弁し、ラジオ、アルバム制作、放送出演、公演、メディア広報、イベント、マーケティング・流通・パブリッシング業者とアーティストが協業できるようにする。
これまでK-POPを企画する会社は、米国のレコード会社とは正反対のシステムでアーティストを管理してきた。いわゆる「インハウス育成・制作」システムだ。アーティストまたは契約を結んでいるマネージャーが、外部のパートナーと協業するのではなく、アーティストが企画会社と専属契約を結ぶのだ。会社は新人開発チーム、トレーニングチーム、音楽プロデューシングチーム、マネジメントチーム、広報チーム、マーケティングチーム、事業チームを構成し、分業化されたシステムの下で役割を果たす。彼らは皆、一つの会社の職員として共通の目標とビジョンを持ち、アーティストを管理している。企画の段階から各チームの担当者が緊密に疎通するため、協業が可能なのだ。これはアーティストが主体になって、すべての業務を外部のパートナー会社と進める米国のシステムに比べ、アーティストの管理および関連コンテンツの制作の面において、効率的だという見方もある。
K-POPを企画する会社は、このような形をさらに発展させ、独特なマルチレーベル体制を構築した。会社の内部に多数のレーベルを置き、各レーベルが一人のアーティストまたは一つチームを専担する形である。一つのレーベルがデビュー前から一人のアーティストまたはチームを育成する。つまり、管理、音楽プロデューシング、スタイリング、振り付けの企画、ファングッズの企画・販売、公演の企画などを総合的に集中管理するのだ。
HYBEの場合、持株会社であるともいえるBIGHIT MUSIC、PLEDISエンターテインメント、ADORE、SOURCE MUSICのように、各レーベルの独立運営体系を認めてきた。つまり、それぞれのレーベルが、それぞれ担当しているアーティストまたはチームの個性や特徴を生かすことに努めているのだ。
ひとつのレーベルが各自管理するアーティスト及びアーティストチームに集中することで、会社は同時に多様な知識財産権を確保することができる。各アーティストの個性や特徴を集中的に生かすことができるのだ。何よりも新曲の発売時期を短縮させ、音源およびアルバムの制作頻度を高め、結果的に多様な活動をより活発的に行えるようになった。特に、国内の大型K-POP企画会社はほとんどが上場会社であるため、アーティストやチームがコンテンツを周期的に生産できる好循環が可能なシステムであり、株価の上昇につながりやすい。
つまり、ジャンルの特徴によってレーベル社を区分した米国のマルチレーベル体制の枠組みに、K-POP特有の「インハウス育成および制作」方式を融合させたわけだ。
このような体系は、海外の音楽産業界の注目を集めた。JYPエンターテインメントは2020年、マルチレーベルシステムの海外延長線としてソニーミュージックジャパンと協業し、日本のローカライズガールズグループ「NiziU」をデビューさせ、人気を集めた。
2022年3月には当時SMエンターテインメント総括プロデューサーだったイ・スマン氏がサウジアラビアの首都であるリヤドを訪問し、ハイファ・ビント・モハメド・アル・サウード王女兼観光副大臣、ファイサル・ビン・ファデル・アール・イブラヒム経済企画相、ハメド・ビン・モハメド・ファイズ文化省次官などの政府の主要関係者に会った。これはサウジアラビアの投資部が、SMエンターテインメントと了解覚書(MOU)を締結し、現地K-POP育成システムを基盤にした現地アーティストの発掘および育成企画につながった。 (しかし、イ・スマンさんがSMエンターテインメントを離れたので、実行はされなかった)
HYBEもユニバーサルミュージックグループ傘下のゲペンレコードと協力し、昨年米国LAのサンタモニカにあるIGAスタジオでガールグループのオーディションプログラムである「ザ・デビュー:ドリームアカデミー」に乗り出した。そして誕生した米国のガールグループのキャッツアイ(KATSEYE)が28日、初のシングル「Debut」を発表した。K-POPの育成や制作システムを通じて、多様な国籍のメンバーで構成された才能のあるグローバル・アーティストとして誕生したのだ。
これまでKーPOPの企画会社は「1人プロデュース体制」から出発し、多彩な変化を経て米国のマルチレーベルシステムの長所を導入し、アーティストの育成システムおよび企画力を盛り込み、独特なシステムに発展させた。そして、K-POPのジャンル化と共に、様々な国籍のメンバーで構成されたアーティストやチームが出るようになった。
K-POPは韓国を代表する文化・知的財産権において、世界音楽市場のシステムに大きな変化をもたらしている。私たちは韓国の文化・知的財産権をより積極的に世界の人々と共有できるチャンスを迎えている。K-POPを筆頭に映画、演劇、小説、詩、伝統音楽など、さらに多様な韓国の文化コンテンツが世界でより多くの人に愛され、共有されることを願う。
ファン・ジュンミン教授は、中央日報記者出身だ。JYPエンターテインメントで広報理事を歴任した経歴があり、2022年から東国大学校の文化芸術大学院でグローバル音楽産業に関する講義を担当している。