ひと

2014.01.15

他の言語で読む
彫刻刀一本で丸太を仏教芸術作品にする職人がいる。経歴45年の仏像木彫刻の巨匠、ホ・ギルリャンさんだ。

彼は、イチョウの木で制作した「33点の観音像」の展示を2002年に開いて以来約10年ぶりの展示「松の木、飛天になって」で、松の木を彫刻した飛天像33点を公開した。

부처님께 공양드리는 비천의 모습을 조각한 허길량 장인의 ‘다공양비천’ 작품 (사진제공: 허길량)

釈迦如来を供養する飛天を彫刻にしたホさんの作品「茶供養飛天」(写真提供:ホ・ギルリャン)


飛天とは、釈迦如来が説法する場所に現れ、楽器を演奏したり、花を捧げて供養したりする善人のことだ。

ホさんは、統一新羅時代の梵鐘、新羅時代の聖德大王神鐘、修徳寺大雄殿、神勒寺の普済尊者石鐘の前にある石灯をはじめ、仏画や壁画、寺院の天井などに刻まれた様々な飛天の姿に彼の想像力を加え、それらを「形」にしてきた。

Heo_Kil_Ryang_Exhibition_04.jpg
비파를 연주하며 천천히 날으는 비천의 모습을 묘사한 ‘봉두비파주비천’(위)과 온화한 미소를 띄고 장구를 치는 비천의 모습을 조각한 ‘장고주비천’(아래) 작품. 가느다란 비파줄과 장구줄은 대나무를 깎아 조각하였다. (사진제공: 허길량)

琵琶を弾きながらゆっくりと空を舞う飛天を描写した「鳳頭琵琶奏飛天」(上)と、穏やかな笑みを浮かべながらチャングを叩く飛天を彫刻にした作品「長鼓奏飛天」(下)。琵琶とチャングの細い紐は竹を削ったものだ(写真提供:ホ・ギルリャン)


ホさんは、「直径80センチの大きな松の木だけを厳選し、丸太から彫刻する。紙やすりも使用せず、彫刻刀一本で彫って、削って、仕上げる過程を数え切れないほど繰り返した」と語る。

こうして誕生した33点の飛天像は、空から優雅に降りてくるものや釈迦如来を供養しているもの、琵琶を弾きながらゆっくりと空を舞うものなどだ。ゆらゆらなびく薄い天衣には松の木の年輪がほのかに見え、頭にかぶった冠の模様と楽器の細い紐の一つひとつまで精巧に彫られている。

ホさんは、15歳だった1968年に木工芸の世界に入門し、韓国の仏教美術の伝統を受け継ぐ師匠たちから木彫刻の技法を学んだ。それから45年間、木彫刻に人生を捧げてきた。 コリアネットは、45年間にわたって仏教美術の伝統を守り続けているホさんに、彼の木彫刻の世界について聞いた。

목조각의 대가 허길량 씨 (사진제공: 허길량)

木彫刻の巨匠、ホ・ギルリャンさん(写真提供:ホ・ギルリャン)


1. 15歳で木工芸に入門して以来45年間にわたって木彫刻に没頭してきた。木彫刻を始めようと思ったきっかけは。また、ホさんの45年間の木工芸人生について話してほしい。

敬虔な仏教徒だった母に育てられたため、幼い頃から仏教に馴染みがあった。小学校に入学する前、全羅南道順天市の仙巌寺で小僧として約1年間過ごした。そこで僧侶たちが何か作っているのを横で見て、触って、いたずらをした記憶がある。そのときの記憶のためか、小学校を卒業した後も「仏教美術」というものが何なのか詳しくはわからなかったが、あのときの僧侶たちのように仏教に関わるものを自分の手で作ってみたいと思うようになった。それで、当時木工芸の巨匠と呼ばれていたソ・スヨンさんとイ・イノさんから仏教美術の基礎である仏画草本を学んだ。時間が経つと模様が変化するのがとても不思議で楽しかった。それ以来、時間の経つのも忘れて木彫刻に没頭した。

2.33点の飛天像をはじめ、ホさんの作品の世界と仏教は切っても切れない関係だと思うが、仏教美術を極めようと思った動機は。

木工芸を学んである程度の境地に至ったと思ったのが1977年だ。その年に仏教美術大典で大賞を受賞した。それときから、いかに彫刻が上手くても仏教の教えに沿っていなければ、仏教美術の深い味わいが感じられない単なる芸術作品に過ぎないと思った。それで、朝鮮時代の仏教美術の脈絡を受け継ぐウイル和尚の下で体系的に学ぶことにした。ウイル和尚の弟子になったのは、とても光栄なことで、それが仏教美術をより深く理解する基盤となった。

지난 8일 예술의전당에서 공개한 33점의 비천상 중 그가 가장 좋아한다는 작품, 통일신사시대 범종에 새겨진 ‘생황지비천(Bi-Cheon Playing a Redd Aerophone)’ 작품 옆에서 있는 허길량 장인. (사진: 손지애)

2月8日に芸術の殿堂で公開された33点の飛天像の中でソさんが一番気に入っているという作品「笙簧之飛天(Bi-Cheon Playing a Redd Aerophone)」の横にソさんが立っている。これは、統一新羅時代の梵鐘に刻まれていた絵だ(写真:ソン・ジエ記者)

今回展示された飛天像も新しい構図と技法によって生まれたものだ。絵や経典にあるものを自分なりに研究し、形にした。一つの作品をつくるのに3・4カ月かかった。一本の丸太を彫って仕上げる作業を繰り返し、紙やすりを一切使わずに彫刻刀だけで表面を滑らかにするのには膨大な時間を要した。紙やすりを使うと、彫刻の深い味わいが失われるからだ。仕上げの漆塗りが濃すぎると、像自体の色が濃くなり、木の年輪が見えなくなってしまう。漆塗りをしてすぐに拭き取る作業を繰り返し、漆が木に染み込みすぎないようにした。

3.高さ3メートルの大型仏像から極細のしわの表現まで、一つの作品を完成させるのに膨大な時間と労力を要すると思うが、どんな心構えで作業に取り組んでいるのか。

仏像を彫る人を釈迦如来の母親という意味で「仏母」と呼ぶ。仏像は信仰の対象でもあるが、芸術でもある。だから、信仰を持って真心の限りを尽くして彫らなければならない。少しでも雑念が入ると聖なる像にはならない。だから、仏母の心構えによって釈迦如来像の顔が変わる。多くの人が私の彫った仏像にお辞儀をしていく。その人たちのことを思えば、彫る人も彼らの心と同じでなければならない。だから、私は酒、たばこを一切口にしない。彼らを思って作業に取り組んでいる。

4.ホさんにとって彫刻とは。

一言で「私の人生のすべて」だ。先祖たちの作品の多くが国宝や宝物に指定されている。その職人たちの精神を受け継ごうと努めている。宗教的な彫刻は「精神」だと思う。

また、仏教美術の伝統を継承するために弟子を育てることも重要だ。多くの時間と手間を要するといって最近の若者たちは彫刻をしようとしない。彫刻の伝統を継承するために、弟子を育てることも私の使命だと思って懸命に取り組んでいる。私が話すすべてのことが私の人生のすべてだと思う。一つひとつの作品に私の「魂」と「精神」が込められている。

5.今回の韓国での展示の後、米国やフランス、英国など海外での展示も計画しているそうだが、ホさんの今後の計画は。

私よりも周りの人が「これらの作品は海外で展示すべき」という。欧州、米国、日本の3地域で展示を計画中だ。特に欧州は石をモチーフにした芸術作品が多く、韓国の木彫刻を通して改めて韓国の文化を評価するのではないかと思う。

허길량 장인의 ‘소나무 비천(飛天) 되어’ 전시회 (사진: 손지애)

ホさんの展示会「松の木、飛天となって」の様子(写真:ソン・ジエ記者)


ホさんの飛天像33点が展示されている「松の木、飛天になって」は、3月16日まで芸術の殿堂で開かれる。

コリアネット ソン・ジエ記者
jiae5853@korea.kr