サンディエゴ州立大学(SDSU)舞踊科のオ·ジュヨン教授(右から2番目)が、K-POP公演「K-Performance」を披露した後、ダンサーたちと記念撮影を行っている様子。この日の公演は、プロ野球チームであるサンディエゴ・パドレスの「韓国文化遺産記念(Korean Heritage Celebration)」イベントの一環として開かれた=9月19日(現地時間)、米・カリフォルニア州
[コ・ウンハ、パク・ヘリ]
[写真=オ・ジュヨン]
最近、韓国のメディアではK-POP歌手のグローバルチャート進入、海外大衆音楽授賞式での受賞などのニュースをよく目にするようになった。7月の関税庁の輸出入貿易に関する統計によると、今年上半期のK-POPアルバム輸出額は昨年同期比17.1%増の1億3293万4000ドルを記録し、歴代最高値を更新した。
その中でも、世界最大の音楽市場とされる米国音楽市場での成長ぶりが目立つ。4852万3000ドルで最も多い輸出額を記録した日本に続き、米国は2551万9000ドルで2位の輸出対象国になった。2020年を除いて2012年以降、ずっと2位の座を守ってきた中国を抜いたのだ。
特に、今年はBTSメンバーであるジミンのソロ曲「ライククレイジー(Like Crazy)」が「ビルボードホット100」で1位を取ったこと、BLACKPINKが「MTVビデオミュージックアワード(MTV VMAs)」で2冠王になったこと、TOMORROW X TOGETHER、Stray Kids、NewJeansが順にビルボードのメインアルバムチャートである「ビルボード200」で1位を占めたことなど、以前より多様なK-POP歌手たちの活躍が目立った。
このように日々強まるK-POPの影響力を追い風に、米国サンディエゴ州立大学(SDSU)では、北米で初めてK-POPダンス理論・歴史の授業が開設された。今年秋学期に初めて始まったこの授業の開設をリードした人物は、SDSU舞踊科のオ・ジュヨン教授。
オ教授は、梨花女子大学の舞踊科を卒業した後、米テキサス州立大学・オースティンキャンパスで北米初のK-POPダンスに関する論文で博士号を取得した。現在、SDSU舞踊科で学生たちを教えている。昨年7月に出版されアマゾンベストセラーになった「K-POPダンス:パンダミング・ユアセルフ・オン・ソーシャルメディア(K-POP Dance:Fandoming Yourself on Social Media)」を執筆したオ教授は、この10年間、K-POPを主題にしたさまざまな論文を執筆した。また、自身が運営する「オニーズ・ラップ(Oniz Lab)」研究所を通じて、「K-POPクリエイター資格証」を発給するなどの活動を続けている。
米国内でK-POP広報をリードしているオ教授は、K-POPダンスについて「短時間ではなく、世代を経て実現した教育と芸術産業の結果物」と評価した。コリアネットは、K-POPを発信するために多方面で活躍しているオ教授に書面インタビューを行った。
サンディエゴ州立大学(SDSU)舞踊科のオ·ジュヨン教授。
- SDSUで今年の秋学期から提供するK-POPダンス理論・歴史授業を行っている。K-POPダンスと関連した教科科目の開設を提案した理由は。
K-POPダンスのファンダムの規模を考慮し、2017年に任用されてから学校側に提案してきた。米国、特に文化的多様性が根強いカリフォルニアでは、ほとんどすべての大学にK-POPのダンスチームがある。しかも、チアリーディング、ヒップホップダンスチームに匹敵するほど規模も大きい。2022年「K-POPダンス:パンダミング・ユアセルフ・オン・ソーシャルメディア」の本が出版されたことで、現実的な行政作業への取り組みが始まった。大規模な理論科目を教えるためには、教科書が必要であり、新しい科目のテーマが持つ学術的な意味の検証が必須であるからだ。大学教育は伝統的な学問を教えると同時に、新しく変わる学生たちの関心も反映しなければならないため、教科科目を開設することに決めた。
- K-POPダンスが、米国で大学の正規教科課程に採択されるまでの過程は順調だったか。
まず、最も大きな批判は「伝統」(canon)ではないという意見だった。どの国も自国の文化あるいは既得権の伝統を強調する傾向がある。米国も植民地の歴史以後、多文化民族で構成された国であるにもかかわらず、白人中心の伝統が強い。K-POPは劇場芸術ではなく、大衆のダンスであり、白人ではなくアジア文化圏のダンスであるため、この2点を克服するのが困難だった。
- どのような授業をが行っているのか。参加する学生たちの反応は。
「K-POPダンス:パンダミング・ユアセルフ・オン・ソーシャルメディア」の本を教科書として使用し、1学期の間、K-POPダンスの歴史とダンスファンダムの文化的意味について学ぶ。理論授業に加え、学期の初めに80人の学生がダンサー、照明・衣装デザイナー、音楽を担当してショーケースを準備する。学期の途中には「K-POPダンスチャレンジ」という課題を通じて、実技および創作の経験を積み、K-POPダンスに対する理解度を高める。
現在、80人の学生が授業を受講している。授業の人気が高く、数十人の学生が待機者リストに載ったりもした。しかし、最大の講義室の収容人数が80人に限られているため、やむを得ず受講生を減らさなければならなかった。生徒たちは、授業時間にK-POPのミュージックビデオを見るだけでも喜ぶ。また、K-POPアイドル1世代を見ながら育った私が話すエピソードを、とても興味深く聞いている。例えば、私が中学校の時、女性アイドルグループSESのメイクと衣装をマネして、チアリーディングをした話をした。ダンスを通じてSESのようになりたいと思った夢や、模倣するという過程が青少年期に及ぼした影響を説明する。一方、学生たちが難しいと感じているのが、たくさんの名前や用語だ。「愛嬌(あいきょう)」、「指ハート」といった用語や、アイドルグループの名前などは、ファンには身近な言葉だが、多くの学生たちは発音することが難しいようだ。
- 先月の初めに開かれたショーケースで、受講生に公演できる機会を提供した。理論授業であるにもかかわらず、公演に直接参加できる機会を提供しようと心がけているようだが。
K-POPダンスは料理と同じだと思う。インスタグラムやユーチューブで数多くの料理の写真、あるいは料理ビデオを見るが、実際にやってみないとその知識を自分のものにするのは難しい。同様に、多くの米国の学生たちが接するK-POPは、ソーシャルメディアの数秒間の短いビデオくらいだ。実際に公演を経験した学生たちは、チームワークがどれほど重要なのか、ひとつの公演を作りあげるのにどれほど多くの人がその裏にいるのか気づくのだ。そして、直接ダンサーとして参加したり、他の公演を見ることで、ダンスの真の意味が理解できるようになる。
ショーケースでK-POPダンス理論・歴史授業の受講生たちがK-POP公演を行う様子=9月6日(現地時間)、米・サンディエゴ州
- 先月19日、アメリカのプロ野球チームであるサンディエゴ・パドレスの「韓国文化遺産記念(Korean Heritage Celebration)」のイベントでもK-POP公演を披露したと聞いた。
K-POPと韓国の文化を披露したのは、今回がサンディエゴ・パドレス史上初めて。ショーケースを基盤に開かれたオープンオーディションで、3チームがSDSUの学生たちと共に公演を行った。その過程は大変だったが、何よりも2023年が韓米同盟70周年ということもあり、両国の文化交流に寄与することができて嬉しく思う。
- BTSとBLACKPINKだけでなく、今年さらに多くのK-POPグループがビルボードチャートなど米国の音楽市場で大きな反響を呼んでいる。米国の音楽市場が、K-POPのどこに魅力を感じていると思うか。
K-POPアイドルは、その音楽性やダンスの実力はもちろんのこと、ダンサーの外見、衣装やメイク、振り付け、舞台マナー、舞台照明、映像の活用といったすべての面において、完璧だと言われている。K-POPダンスは短時間で出来上がったものではなく、世代を経て実現した教育と芸術産業の結果だと思う。一目で実力が分かるほど、彼らの優れた実力が一番の魅力だと思う。
- 著書「K-POPダンス:パンダミング・ユアセルフ・オン・ソーシャルメディア」を通じてK-POPダンスを理論的に整理し、学問的にアプローチしたという評価を受けている。K-POPに対する理論整理と学問的研究が必要だと考える理由は。
どんな芸術現象でも理論的に確立されなければ、一瞬の流行で終わってしまう。特にダンスはなおさらだ。私は7歳の時にバレエを始め、舞踊科で現代舞踊を専攻し、大学院で舞踊美学について論文を書いた。その中で、学術的記録の重要性を一番に感じた。なぜなら、学術的記録は歴史の一部になるからだ。米国で2012年にK-POPダンスについて博士論文を書き始めたが、その理由はK-POPが、すでに一つの完成したダンスジャンルとして受け入れられていると思ったからだ。この10年間、K-POPダンスはさらに緻密に発展し、すでに一つのジャンルを確立している。K-POPダンスに対する文化的、歴史的、社会的重要性を有識者たちが言及し、また進むべき方向まで提案することは、大いに役立つだろう。
- K-POPの人気が持続的に高まっているだけに、様々な計画を持っていそうだ。今後の計画は。
韓国には優れた人材が多いにも関わらず、機会が少ないと思う。しかし、米国にはまだ多くのチャンスが潜んでいる。今回のサンディエゴ・パドレスの公演のように、K-POPダンスを公演してほしいという要請が増えている。私が教える学生たちに公演の機会を与えることも意味があるが、今後韓国の優れたK-POPダンサー、芸術家、アイドルたちと協力できるシステムを整えたい。大学側でもK-POP理論の授業は人気が高く、実技授業の開設を考慮しているほどだ。米国でのK-POPブームは、韓国と違って専門性よりは趣味と参加に重点を置いている。したがってK-POP産業と関連した実務経験のある韓国人専門家を採用したいと思う。
また、現在、教育者の経験をもとに、K-POPダンス教育に関する2冊目の本を執筆している。長期的に、K-POPを通じて、韓米間の大学で芸術教育および文化交流プログラムに寄与したい。
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