ひと

2024.08.23

彫刻家のパク・ウンソン氏=アート・オブ・ザ・ワールド・ギャラリー

彫刻家のパク・ウンソン氏=アート・オブ・ザ・ワールド・ギャラリー


[キル・ギュヨン]

イタリア・トスカナ州の人口2万5000人の小さな都市、ピエトラサンタ。市の中心にあるドゥオーモ広場の中央には、大理石で作られた高さ11メートルの柱がそびえ立っている。古代エジプトのオベリスクに似ている。グレーとホワイトの二色が交差する幾何学的なオブジェ。その真ん中を貫く亀裂が目立つ。重さはなんと20トンにも上るが、周りの風景と調和しており、静かな広場に活気を吹き込む。

イタリアを拠点に彫刻家として活動しているパク・ウンソン氏の代表作「無限柱」。ピエトラサンタ市と現地のギャラリー・コンティニーが、パク氏のイタリアでの作品活動30周年を記念して企画した展示だ。パク氏は2018年、同市が授与する最高の彫刻賞を受賞した。2021年には、韓国人としては初めて同市の「名誉市民」に選ばれた。

子どもの頃から画家になるのが夢だったパク氏。韓国で彫刻を専攻し、1993年に妻と一緒にイタリアに移住した。現実的な問題から脱し、ひたすら作品活動に専念するために決めたことだった。彫刻の本場とも呼ばれるピエトラサンタに定着してから30年。パク氏はイタリアを超えて世界から認められるアーティストになった。でも、相変わらず一日のほとんどの時間を自分の作業室で過ごしているという。

今年の下半期には、自身の名を掲げた美術館である「アトリエ パク・ウンソン」がオープンする。グラス工場を改造して建てられたもので、事務室と展示空間で構成される。パク氏は「美術館がオープンしても変わることはない」とし、「これまでのように着実に作業に取り組む」という。パク氏の言葉から、彼の底力が感じられた。

一問一答は以下の通り。

イタリア・ピエトラサンタのドゥオーモ広場に設置されているパク氏の作品「無限柱」=パク・ウンソン公式ウェブサイト

イタリア・ピエトラサンタのドゥオーモ広場に設置されているパク氏の作品「無限柱」=パク・ウンソン公式ウェブサイト


―本人にとってイタリア、特にピエトラサンタはどういう意味を持つか。

初めてイタリアに到着した時、言葉や経済的な問題、人種差別などで苦労した。しかし、彫刻に対する熱情だけを頼りに一日中、作業に没頭した。そのうち、私の努力を認めてくれる人が出てきた。ピエトラサンタは、曲折の多い私の人生において、たくさんのストーリーを作ってくれた場所だ。第2の故郷である。

―韓国人というアイデンティティが作品に与える影響は。

自分のアイデンティティを見つけるために迷っていた時期があった。他国で外国人として生きていると、自信がなくなるときもある。でも、ある瞬間、そうした悩みが無意味に感じられた。韓国人というアイデンティティを受け止めて作業に集中すると、欧州の人々が心を開き始めたのだ。飾らない、ありのままの私に共感してくれた。

―イタリアで韓国人としてプライドを感じた時は。

1990年代には韓国がどこにある国なのかすら知らない人が多かった。でも、今はK-POPや韓国ドラマの人気で、イタリアでも韓国の地位が昔と変わったことを実感する。しかし、現代美術の分野では、いまだに韓国は知られていない。これから韓国人アーティストとしての使命感を持って韓国の現代美術を広めることに取り組みたい。

―韓国とイタリアの間に存在する文化の違いとは。

過去のイタリアは、西欧文化の中心地だった。長年の歴史を経て、イタリアならではの文化が自然に定着した。イタリアは美術やデザイン、ファッションなど、様々な分野で芸術性が高い。韓国は変化に富んだ国だ。これからさらに発展できる、無限大の潜在力を持っている。

―今年下半期にオープンする美術館を通じて達成したい目標は。

美術館がオープンしても変わることはないと思う。これまでずっとやってきたのと同じように、着実に作業に取り組むだけだ。ただ、作家としての責任感と使命感をさらに高める力になるだろう。

―今後の計画や夢は何か。

私の展示会が開かれるのを、世界各国で待っていてくれる。彫刻家として、もっと自身を充実させたい。そして、これからもずっと楽しく作業していきたい。


―KOREA.netの読者に一言。

自分に素直になってほしい。私はいつも自分と対話する。心の中の思いを吐き出す。今の私が何をしなければならないのか、なぜこれをするのかなど、絶えず質問して答える。素直になることが何よりも大事だ。素直になることは、観客に対する礼儀だと思う。

gilkyuyoung@korea.kr