※ 両腕のない鉄人キム・ファンテ
「無事完走できたこと本当に嬉しく思います」
キム・ファンテ選手が先月2日、パラトライアスロン男子PTS3で1時間24分01秒を記録し、総合ランキング10位を獲得した。キム選手が10年間夢見てきたパラリンピック完走の夢が叶った瞬間だった。
2000年8月、電線の架設作業中に発生した高圧線感電事故で彼は両腕を失った。最初はかなり絶望したという。しかし、普段から運動してきたキム選手は、マラソンやノルディックスキー、テコンドーに挑戦した。そして、韓国選手としては初めて2024年パリ・パラリンピック・トライアスロンの出場権を手に入れた。キム選手は「最後に挑戦したのがトライアスロンだった。 小さな火種が大きな決意になり、パラリンピックに参加することができた」とその日の感激について語った。
鉄人レースとも呼ばれるトライアスロンは、限界まで自身を追い込むストイックなスポーツ。パラリンピックのトライアスロンは、水泳750メートル、バイク20キロメートル、ランニング5キロを連続して行い、全ての種目の記録を合計してランキングを競う。
今回出場した選手の中で両腕がないのは、キム選手しかいなかった。水泳が一番大きな難関だったはずだ。キム選手は「セーヌ川の流速が速すぎて背泳ぎをしなければならなかった」とし、「背泳ぎには慣れていなかったので、全身がつってしまい大変だった」と話した。また「でも橋や船の上から応援してくれる人たちが見え、うれしかった。たくさんのエールを送ってくれた」と語った。
キム選手は、40代後半という年齢にもかかわらず、最後まで諦めなかった。そしてついにパラリンピックの完走を成し遂げたのだ。順位は重要ではなかった。たくさんの応援を受けながら、ゴールラインを通過するキム選手の姿は誰よりも輝いていた。キム選手は「スポーツ選手としての目標は果たしたが、パラリンピック国家代表選手として、これからも練習を続けていく」と話した。
障害を抱えて運動を始めてから人生が180度変わったというキム選手。パラリンピックが広く知られ、より多くのパラスポーツ選手が出てほしいと願うそうだ。インタビューの最後にキム選手は、次のようなメッセージを残した。「運動することで社会性を高めることができる。暮らしもより豊かになる。外に出て体をもっと動かしてみよう。人生が変わるだろう」
※ パラカヌー国家代表選手、チェ・ヨンボム
ヴェール・シュル・マルヌ・ノーティカル・スタジアムで行われた2024パリ・パラリンピックカヌー(KL3)男子カヤック200メートル決勝で、全力で漕いでいる障害者カヌー国家代表、チェ・ヨンボム選手=9月7日、フランス、大韓障害者体育会
「最も大事なのは、夢見るだけでなく、行動に移すことだ」
パラカヌー国家代表のチェ・ヨンボム選手が世界に伝えるメッセージだ。身体障害があっても、地道に挑戦し続ければ、努力が必ず報われるという意味だ。
健常者だったころもカヌー選手だった彼は、国際舞台に出場し成果を収めたいという夢を持っていた。しかし、2022年3月、突然の交通事故でチェ選手の人生は大きく変わってしまった。車椅子生活になったのだ。リハビリ病院でもとてもつらい時期を送ったという。その時、チュ・ジョングァンコーチと大韓障害者体育会のメン・チャンジュマネージャーにパラカヌーへの挑戦を進められた。最初は正直、自信がなくためらったが、カヌーへの愛と情熱で心を決めたという。
パラリンピックへ出場するための過程はとても大変だった。体力や精神力を限界状態まで追い込まなければならなかった。特に、夏場の屋外トレーニングと足の傷が彼をさらに苦しめた。しかし、チェ選手は最後まで諦めなかった。毎日、明け方から夕方まで、集中して練習を行った。
チェ選手は、ついに目標としていたパラリンピック出場権を手に入れた。メダル圏には入れなかったが、試合に参加できて、とてもうれしかったという。チェ選手は、「言葉にできないくらい胸がいっぱいになった」と当時の感動について語った。
チェ選手はパリパラリンピックで韓国選手団の旗手にも選ばれた。開幕式の日に、韓国の国旗である太極旗(テグッキ)を手に、韓国選手団を率いてメインスタジアムに入場した。
チェ選手は、「韓国の伝統衣装を着て、他の選手たちと行進しながら入場するとき、韓国人としての自負心を感じた」と話した。また、「とても誇らしく思えた。多くの外国人選手たちと交流でき、200人を超える人たちと写真を撮った。一生忘れられない特別な思い出になった」と付け加えた。
チェ選手は、今後の計画や目標について「2028LAパラリンピックに向けてトレーニングを続ける計画だ。毎年開催される世界選手権大会でも成果を上げ、最終的にはパラリンピックメダリストになる夢を叶えたい」と答えた。
キム・ファンテとチェ・ヨンボム選手の強い意志と不撓不屈の精神は、ひたすら挑戦し続ける多くの人々にインスピレーションを与えてくれる。
gilkyuyoung@korea.kr