「不正請託および金品授受禁止法」の施行を控えて韓国社会が激変している。レストランでは食事接待の上限となる3万ウォンに合わせた新メニューを開発し、企業らは接待行為のガイドラインを用意するなど、法律に合わせて慣行を変えている。写真は7月30日付けの京郷新聞トップ記事
新法により韓国社会が揺れ動いている。「不正請託および金品授受禁止法」、通称「金英蘭(キムヨンラン)法」の施行によりこれまでは慣行とされていた請託や接待文化が違法になるからだ。
韓国社会は強い家族主義が特徴といえる。親戚・学校・出身のつながりがある人に何かを頼むとき、贈り物や食べ物を贈るのはごく自然な風景だった。それは列車のチケットを取ってほしいという些細な頼みから仕事、昇進の請託に発展していき慢性的な不正腐敗を生み出してきた。
金英蘭法ではマスコミ関係者、私立学校教員を含む公職者が職務との関連の有無を問わず100万ウォンを超える金品を受け取ると刑事処罰を受ける。また公務員、私立学校、マスコミ関係者らが不正の請託を受けて職務を行ったり金品を受け取ると処罰の対象になる。目的を問わず食事3万ウォン、贈り物5万ウォン、慶弔費10万ウォンと接待費用の上限も定められている。同法は、金英蘭元国民権益委員長が2012年に提案したことからその名前が付けられ、2015年3月3日に国会本会議で可決した。
韓国日報は3日から掲載している「金英蘭法、成功の条件」と題した企画シリーズで不正請託および金品授受禁止法が不合理な慣行をかなり改善するものと予想した
これに対して大韓民国弁護士協会、韓国記者協会、私立幼稚園長・私立学校長などは平等権および基本権を侵害するとして憲法裁判所に違憲の審議を求めていた。何よりの争点は「マスコミと私立学校教員を含むべきか」についての判断だった。そして7月28日、憲法裁判所は7対2で合憲の判断を下した。憲法裁判所は「教育とマスコミは社会に与える影響が大きく、これらの分野における腐敗は波及効果が大きいため公職者と同等の廉潔さが求められる。国会が民間部門での腐敗を予防するための第1段階として教育とマスコミを選んだのは恣意的差別とはいえない」と発表した。
憲法裁判所は合憲決定文で「清廉度を高め、腐敗を減らすなかで一時的な困難を強いられる分野があり得ることを理由に、腐敗の原因となる不正請託および金品授受の慣行を放っておくことはできない。私学やマスコミの自由が萎縮される恐れがあるものの、これにより侵害される私益は金英蘭法が目指す公益より大きいとは考えられない」という意見を示した。
金英蘭法に対する憲法裁判所の合憲判断は「韓国社会に蔓延する腐敗のつながりを断ち切り、透明性を高めなければならないという国民の世論に応えた結論と考えられる」と書いた7月29日付の東亜日報の紙面
9月28日の施行を控えて国民生活にも大きな変化が起きると予想される。まず2次会、3次会まで続く飲み会やゴルフ、食事接待はできなくなりそうだ。祝日にも上司や先輩、親戚に高価なプレゼントを贈ることができなくなる。農業・漁業、商業従事者たちの不満も高まっている。5万ウォンの肉・果物・魚類のギフトセットを構成することが難しいため売り上げへの影響を恐れているのだ。3万ウォン以下の食事メニューを用意することができず営業を止めるレストランも相次いでいる。
それでも長期的には腐敗をなくす構造改革により経済の有効性を高める契機になるとの前向きな見方が優位を占めている。韓国では上下関係での接待が2次会、3次会に行くにつれその性格が変わってしまうことが多いため、金英蘭法の施行に合わせてすべてを一新すべきだという声も高い。
金英蘭法の施行により韓国社会がより透明な社会へと一段階飛躍し、不合理な慣行も改善されるとの期待も少なくない。短期的には民間消費が落ち込むなどの経済的な打撃があるだろうが、腐敗による取引費用は軽減できると見込まれる。接待と請託が当たり前のように蔓延する韓国社会は同法の施行により大きく変化を遂げるものと見られる。
コリアネット イ・ハナ記者
翻訳:イム・ユジン
hlee10@korea.kr