政策

2019.02.11

インタビューに応じるOECDのマーティン・デュラン統計局長

インタビューに応じるOECDのマーティン・デュラン統計局長



[パク・ギルジャ、イ・ギョンミ]
[写真=キム・シュンジュ]

今年で3年目を迎える文在寅(ムン・ジェイン)政権。新年から「革新的な包摂国家」の実現に力を入れている。コリアネットは、大統領直属政策企画委員会の丁海龜委員長、経済協力開発機構(OECD)のマーティン・デュラン統計局長から、包摂国家と包摂成長について聞いた。


文在寅政権は「人中心の経済」に向け、包摂成長を掲げ、拍車をかけている。包摂成長は、全国民が成長の恩恵を受け、差別を受ける人のない社会を目指すもの。富の二極化と経済的不平等を減らす包摂成長は、韓国だけでなく、国際社会の共通する悩みを解決できる価値でもある。経済協力開発機構(OECD)が今年3月から、韓国政府の掲げる「包摂成長」の共同研究に乗り出す理由である。

OECDは、社会構成員全員に経済成長の実を公平に分ける「包摂成長」を導入することにし、去年5月に政策を実行する枠組みを発表した。

OECDが包摂成長に注目した理由は、従来の成長モデルがグローバル経済危機を防ぐことができず、成長が環境に与える影響を考慮しなかったとの批判が後を絶たなかったからだ。所得の二極化や機会不平等が解決できず、上位所得者の1%が全世界の富に占める割合が19%ともなる集中化が激しくなり、成長と分配を同時に追求する包摂成長が、それに変わる経済モデルとして浮上した。

OECDのマーティン・デュラン(Martine Durand)統計局長は、コリアネットのインタビューで、「『もっと良い暮らしのためのもっと良い政策』がOECDの主要課題」とし、「OECDの専門家を投入し、韓国に特化した包摂成長に関する研究を進める予定」と述べた。

フランス出身で経済・統計専門家のデュラン局長は、OECDに37年間就き、統計政策の戦略を提案してきた。以下はデュラン局長との一問一答。

―韓国とOECDが共同で研究する「包摂成長」はどのように行われるか。

「OECDは、韓国の企画財政部や保健福祉部など政府の各関係者から民間の貿易会社の社員にまで会ってインタビューし、報告書を作る計画だ。国ごとに政策が異なるため、韓国に合うガイドラインを提示するよう研究を進める。包摂成長に関する初の事例分析であるため、意味が大きい」

―OECDが語る包摂成長とは。

「生産性向上や不平等の緩和、両方とも大事だ。まず、成長するため生産性を高めなければならない。特に、居住地域は経済成長の恩恵を受けるに大きな影響を与える。正しい地域政策が必要だ。また、革新的な企業や、雇用創出に寄与する小規模企業を発展させる必要がある。再度強調することになるが、人・企業・地域、この3つが主な要素である」

包摂成長について説明するOECDのマーティン・デュラン統計局長

包摂成長について説明するOECDのマーティン・デュラン統計局長



―OECDは国内総生産(GDP)を超え、ウェルビーイング(well-being)指標が必要だと強調する。その理由は。

「GDPは国の経済を測る最も大事な指標である。しかし、GDPで測れない部分もある。他の指標で補完する必要がある。国民の生活の質だけでなく、社会・経済・環境など様々な分野の指標が必要。また、多くの人々がGDPを増やす方法を重要視するが、ここでの成長は、包摂成長でなければならない。全国民が公平な機会と恩恵を受けるべきだとの意味だ。特に、包摂は、持続可能性とも意味が通じる。環境やいずれなくなるであろう天然資源に依存するより、もっと良い暮らしのため包摂と持続可能性に集中すべきだ。」

―包摂世界化は可能か。

「世界経済は、ますます一つになっている。この過程は秩序整然と進まなければいけない。しかし、世界化の流れに反発する人も多い。開放経済を追求する韓国ではあるが、世界化の中では国民全員が利益を得るにはいかない。十分な補償が必要だ」

―世界化の流れで疎外される人のため、国はどうすべきか。

「デジタル化への転換も、人々の日常に大きな影響を与える。高い技術力で恩恵を受ける人もいる。しかし、デジタル化に適応できない国民もいる。教育とサービスを提供しなければならない。デジタル化や高齢化など世界の経済を左右する流れの中で、疎外される人がいないよう各国の政府が取り組む必要がある。とりわけ、高齢社会の韓国でも老人が疎外感を感じないよう、社会の一員であると感じるよう努力すべきだ。」

krun@korea.kr